中川晃教「当時は僕も舞台人として苦しい思いをしていた」上演中止が相次いだ時期に励まされた俳優

中川晃教 撮影/三浦龍司

中川晃教は2001年、自身が作詞作曲をした「I WILL GET YOUR KISS」でシンガーソングライターとしてデビューし、同年の日本有線大賞では新人賞を獲得した。また’02年に『モーツァルト!』でミュージカルに初主演すると、文化庁芸術祭賞・演劇部門新人賞や読売演劇大賞・優秀男優賞など様々な賞で受賞を重ね、その後も数々のミュージカル作品に出演し、トップランナーとなった。彼にとって、その生き方が影響を与えることとなった変化「THE CHANGE」とは、いったいなんだったのだろうか。【第2回/全5回】

最近では、ミュージカルで活躍している俳優が、テレビ番組やドラマなど他のジャンルでも活躍することは珍しくない。自身の周りにいるそうした仲間たちについて、中川さんは嬉しそうに語った。

「マルチな才能を発揮しながら、ミュージカルでも活躍している方たちがたくさんいるんですよね。例えば山崎育三郎さんは『おしゃれクリップ』というテレビ番組でMCを務められています。ゲストの方の魅力を伝えていくようなお仕事もされながら、ご自身もまたステージで輝いてらっしゃいますよね。

また井上芳雄さんは、歯に衣着せぬトークが有名で、それを楽しみにしていらっしゃるファンの方も多いんですよね。そうやってお客様に喜んでいただきながら、ミュージカルでも華麗にステージをこなしていらっしゃいます」

そんななか、中川さんがいま最も注目している若手ミュージカル俳優が森崎ウィンさんだ。中川さんと森崎さんはステージでも度々共演しており、息の合ったコンビネーションを見せている。中川さんは森崎さんと普段どのようなやり取りをしているのか、気になって聞いてみた。

「森崎さんは『レディ・プレイヤー1』というスティーブン・スピルバーグ監督の映画で華々しいハリウッドデビューを飾ったんですが、その作品の撮影時の話なんかも楽しく聞かせてもらったりしています。

彼はミュージカルを始める前に僕のステージを観て、とても感動してくれたみたいなんです。“今まで見てきたミュージカルとは全然違いました”というようなことをおっしゃってくれたことを覚えています。今では色々なところで彼の名前を見るようになって、すごく頑張っているな、と嬉しく思っています」

上演中止が余儀なくされた時期を乗り越えた戦友

そんな森崎さんとは共に苦しい時期を乗り越えた戦友としての意識もあるようだ。新型コロナウィルスの流行で、数々のステージが上演中止を余儀なくされた時期を振り返り、中川さんは噛みしめるように話してくれた。

「森崎さんが主人公のトニー役で出演していた『ブロードウェイ・ミュージカル「ウエスト・サイド・ストーリー」Season2』が、感染拡大を防ぐために残り13ステージを残して全て上演中止になってしまったんです。

当時は僕も舞台人として苦しい思いをしていたんですが、自身の舞台が無くなってしまった森崎さんがそれでも腐らずに頑張っている姿を見て、すごく励みになったことを覚えています。彼にはまだまだ新しい魅力がたくさんあるはずですし、僕もそれをもっと見てみたいです」

森崎さんの活躍についてそう語った中川さんには、他にも注目しているミュージカル仲間がいる。それが男性ボーカルグループのLE VELVETS(ル・ヴェルヴェッツ)だ。中川さんに彼らの魅力についても聞いてみた。

「メンバー1人1人がそれぞれにミュージカルで活躍されていますが、皆さん声楽科を卒業されていますし、身長も高くて、なにか日本人離れしたような感覚がありますよね。

音楽性に関してもクラシックから、歌謡曲までなんでもこなされるイメージですし、ミュージカルへの出演もこれからますます増えていくでしょうから、ご一緒できることをとても楽しみにしています」

中川さんが考える、これからのミュージカル俳優に必要なこと

また、『ミュージカルは最強です!2024』にゲストとして出演する城田優さん、唯月ふうかさんとの思い出についても話が及んだ。

「城田優さんとは、ジャンポール・ゴルチエの『ファッション・フリーク・ショー』の客席で久しぶりに再会しました。優くんは近年では演出家としても作品をつくっていることを、素晴らしいなと思い、話したりしました。

唯月さんとは昨年Brand New Musical Concertで『モーツァルト!』から『愛していれば分かり合える』をご一緒しましたが、リハーサル時にとても緊張されていて、オケとのリハーサルは不思議な緊張感が漂うものなので、なるだけ緊張しないように接したりしました。でも、リハーサルから、さすが圧巻の歌声でした」

中川晃教 撮影/三浦龍司

さらに話を伺っていくと、ミュージカル俳優について想うあるヴィジョンについて語ってくれた。

「クラシックやミュージカルのスタンダードナンバーだけでなく、ポップスもちゃんと歌っていけるということが、これからのミュージカル俳優には必要かなと思っています。だからそういう人たちがどんどんと出てくるような道を、僕が作っていきたいとも思っているんですよね。

そういう考えもあって、『ジャージー・ボーイズ』というミュージカルで共演したメンバーと一緒にJBBというボーカルグループを作り、ポップスを歌っていくコンサート活動も始めました。これをきっかけにして、音楽というメインストリームにミュージカルがしっかりと杭を打っていけるようにしていきたいですね」

自身が歩み続けてきたミュージカルの世界に自分が何をできるのか考えてきた中川さんにとって、ポップスへの取り組みはその答えを生み出す変化「THE CHANGE」になっていくのかもしれない。

なかがわ・あきのり
1982年11月5日生まれ、宮城県仙台市出身。’01年「I WILL GET YOUR KISS」でシンガーソングライターとしてデビューすると、同年の日本有線大賞で新人賞を獲得。また’02年に『モーツァルト!』でミュージカルに初主演すると大反響を呼び、以後はミュージカルを中心に様々な舞台で活躍。7月15日に開催される公演『ミュージカルは最強です!2024』では、昨年に引き続きコントにも挑戦する。

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