全仏オープン予選開幕!望月慎太郎はフルセットで、齋藤咲良はストレートで初戦突破<SMASH>

5月26日に開幕するテニス四大大会「全仏オープン」(5月26日~6月9日/フランス・パリ/クレーコート)に先駆け、20日よりシングルスの予選がスタート。男女各126選手が参戦し、3試合を勝ち抜いた各16名が本戦への切符を手にする。

日本勢では、男子3選手、女子4選手が予選に参戦。初日に登場した男女各2選手のうち、望月慎太郎(世界ランキング163位)と齋藤咲良(同251位)が初戦を突破した(男子の島袋将はストレートで女子の坂詰姫野はフルセットで敗退)。

“これぞ望月慎太郎”とでもいうべき、スリルに満ちた一戦だった。

立ち上がり早々から、7度のデュースを重ねる超ロングゲーム。いかにもクレー育ちといったニック・ハート(ドミニカ/同195位)の重く跳ねる打球を、望月はコート縦横に駆けて食らいつき、どんな体勢からでもねじ込むように相手コートへと打ち返す。

相手に二度のブレークを許すも、時に一発必中のリターンエースを叩き込み、時にネットに詰め得意のボレーを沈めてみせる。第1セットは4-6で落とすものの、望月のテニスがジワジワと相手に絡みついた。
第2セットは、互いにブレークを奪う一進一退の攻防。その息詰まる展開から抜け出た望月がセットを6-4で奪取すると、そのままファイナルセットでも流れを掌握した。試合が進むにつれ相手の手札を封じてみせて6-2。策士の本領発揮の勝利だった。

昨秋から望月のコーチに就く伊藤竜馬は、コートサイドで顔中に安堵の笑みを広げていた。

「ここ2大会は初戦負けが続いていたので、リズムを崩しかけていた。その時は自分で崩れてしまったので、今日は思い切りの良いプレーを最後まで続けようと、試合前にも話していました」と伊藤。

その「思い切り」を発揮する上でも、グランドスラム予選のような大舞台が、望月の性に合っている模様。持ち味を取り戻した勝負師が、上々のスタートを切った。

かつてのジュニア世界1位の望月に続いたのが、昨年ジュニア世界2位につけた齋藤だ。
今から2週間前、齋藤は全仏予選出場ラインの、15番アウトだった。その後、ワイルドカードで複数の選手たちが繰り上がったため、一気に5番アウトへ上昇。それでも日本を経つ17日の時点で、出場ラインには届かぬまま。

「会場で練習し、ローランギャロスの雰囲気を感じてから翌週の大会に行こう」と、半ば諦め単身パリ行きの飛行機に乗った。

そんな齋藤の下に予選出場の報が舞い込んで来たのは、パリに着いた翌日の夕方。「やった!」と喜んだものの、赤土のコートに立つのは約1年ぶり。わずか2日間の練習で、初のグランドスラム予選へと望むことになった。

「久しぶりのクレーだし、理想的な準備ができた訳でなかった」と、齋藤は恥ずかしそうに明かす。それでもいざコートに立つと、「思っていた以上にちゃんとプレーができた」と続ける。
試合前には対戦相手のフランシスカ・ジョルジ(ポルトガル/同198位)の動画を見ながら、「あまりフットワークは良くない。ドロップショットやアングルショットを混ぜていこう」と作戦立案。その上で、「ループなどもスパイスとして使いながら、基本はベースラインから下がらない自分のテニス」を心掛けた。

果たして戦前に描いたそのイメージを、17歳はコート上で体現する。相手の強打を跳ね返し、浮いたボールは迷わずスイングボレーで打ちぬいた。

第1セットを6-4で競り勝つと、第2セットは齋藤の安定のプレーの前に、相手のミスが増えていく。第4ゲームで迎えた唯一の窮状も、この一年ほど集中的に強化してきたサービスで切り抜けた。終わってみれば、6-4、6-1。完勝ともいえるデビュー戦だった。

もっとも当の齋藤は、「快勝」と呼ぶことを躊躇する。

「快勝かはわからないけれど、良い形では終われた。予選に入れたことに感謝しながら、一つひとつ戦っていきたいです」と真摯に言葉を紡ぐ17歳は、瑞々しい感性で大人への階段を上っていく。

現地取材・文●内田暁

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