育む「小高ナマズ」 移住の地域協力隊員、養殖実証に奮闘中

養殖設備を前に「ニホンナマズが食卓に並ぶようになれば」と話す岩本さん

 南相馬市起業型地域おこし協力隊に今月着任した岩本一帆(かずほ)さん(55)が、同市小高区でニホンナマズの養殖を目指して奮闘している。県によると、県内でのナマズの養殖は珍しい取り組みで、岩本さんは「ニホンナマズが地域の特産品として広まり、食卓に並ぶようになればうれしい」とナマズを活用した6次産業化に向け意気込む。

 北海道出身の岩本さんは大学卒業後、工業化学メーカーなどに務めた後、農業関連設備の販売会社に就職した。3年ほど前から小高区で養殖設備の管理とナマズの飼育を行う中、豊かな自然環境に魅了され、移住を決意。ナマズのおいしさに気付き、独立してナマズを養殖すると決めた。

 岩本さんによると、ニホンナマズは、「アメリカナマズ」や「ヒレナマズ」などと比べて成長が遅いことなどから、あまり養殖されていない。

 味は淡泊で、さまざまな料理にも合い、高たんぱくで低カロリーという。食感はハモやアナゴに似ており「食べてみるとおいしい」と岩本さんも驚く。

 岩本さんは現在、地下水を循環させて約10匹のナマズ養殖の実証実験に取り組む。再生可能エネルギーや、多様な機器を通信でつなぐモノのインターネット(IoT)を活用しながら、ナマズの成長に適した餌や水質などを調べている。

 餌にはワインに使用した地元産のブドウの搾りかすや、蚕のさなぎなどを使い、環境に優しい資源の循環にも取り組む計画だ。協力隊の任期3年間で法人化を目指し、5、6年後には年間千~2千匹の出荷を目標とする。将来的にはトウガラシなど地元の特産品と組み合わせたナマズ関連商品の製造も目指している。

 起業型地域おこし協力隊は、地域に根差した魅力ある仕事づくりに取り組む。今月上旬に行われた委嘱状交付式で門馬和夫市長は「農業は市の復興の一つの柱。安心して思い切り活躍し、チャレンジを頑張ってほしい」とエールを送った。

 養殖の水を利用したパクチーなどの西洋野菜の栽培や、スッポンの飼育など岩本さんの夢は尽きない。「最終目標は小高の活性化。地域に役立つ活動をしていきたい」。岩本さんの挑戦は始まったばかりだ。(佐藤健太)

© 福島民友新聞株式会社