“無双状態”の阪神・石井が三振を取れる理由とは 奪三振率19.06 直球と変化球の相乗効果が生んだ飛躍的な増加

 9回を無失点に抑える石井=15日、バンテリンドーム

 阪神の石井大智投手(26)が“無双状態”に入っている。今季は5回2/3を投げて12奪三振。奪三振率は19.06(20日現在)と異次元の数字となっている。奪三振数が飛躍的に増えた理由を本人が語った。

 15日の中日戦で同点の九回に登板した石井は三好、石川昂を三振に仕留めると、最後は低めに制球されたフォークで山本のバットに空を切らせた。圧巻の3者連続三振。「最後のフォークは本当に投げたいところに投げられた」と会心の1球を振り返り、分厚い胸を張った。

 4日の1軍再昇格後は18日・ヤクルト戦(甲子園)の七回1死まで、奪った9個のアウト全てが三振だった。今季は計5回2/3を投げて12奪三振。奪三振率は19.06に達している。奪三振数の飛躍的な増加について「変化球を決めたいところに決められている。真っすぐも低めに強くいい球がいっているのでより変化球が生きたり、逆に(変化球がいいので)真っすぐが生きているという感覚はある」と、直球と変化球の相乗効果を強調した。

 昨季は44試合に登板して1勝1敗19ホールド、防御率1.35と大きく飛躍。今季も勝ちパターンの一角を担う存在として期待されたが、オープン戦では8試合で防御率7.00と苦しんだ。初登板となった3月30日の巨人戦(東京ド)でも1回2失点と乱れ、4月3日に登録を抹消された。

 「去年よりも少しバッターが嫌がるフォームを求めていた。フォームと(投げる)ボールのギャップを考え、少し足を上げる時に遅いところをつくってみたり」と春季キャンプから続けていた試行錯誤を明かし、「自分の得意じゃない動きをしていた。(体に)軸が通っていないみたいな、全部ふにゃふにゃに動いてる感じがあった」と不調の要因を分析した。

 復調の決定的な契機となったのは3日のウエスタン・くふうハヤテ戦だったという。「試合前に前鋸筋(ぜんきょきん=脇の下の筋肉)に収縮を入れるエクササイズをやった瞬間に『変わったな』というのが分かった」。体に軸が通り、求めていた動きを手に入れた。九回に登板して3者連続三振の快投を演じ「真っすぐが差し込めていた」と手応えを得た。前鋸筋に刺激を入れる作業は、今も試合前のブルペンで続けている。

 2軍では投球のメカニクスを見直しただけではなく、金言も授かった。現役時代に先発と中継ぎを経験した福原2軍投手コーチから「中継ぎだったら(登板時間の)一日5分頑張ればいい。長くても10分、15分くらい。一日そこだけの時間を頑張ればいいんだから」と中継ぎの心得を説かれた。「その言葉で少し楽になった」。生真面目な性格ゆえ、何事も考え過ぎだった石井の心を軽くしてくれた。

 久保田1軍投手コーチも石井の心理面の変化を感じ取った。1軍復帰初戦となった8日の広島戦(甲子園)で九回を3者連続三振。ボールの力強さが増したことを認めつつ「上がってきてすぐに抑えて気持ちが楽になっている部分もある。低めを見逃されても、もう一回(低めに)投げられる自信がついている」と語った。現役時代に「JFK」の一角を担った剛腕は「気持ち」の重要さが身に染みている。

 18日のヤクルト戦(甲子園)では1点リードの七回に登板し、クリーンアップ相手に1回無安打2奪三振。4番の村上からは三振こそ奪えなかったが、150キロ台の直球を連発し、最後は伸びのある152キロで二ゴロに。19日・同戦では2点差の七回を託されると、三振は一つも奪えなかったが無失点でゲラにつないだ。「(三振の数は)重要ではない」と結果にこだわり続ける。岡田監督の信頼を勝ち取り、石井が勝利の方程式に加わった。(デイリースポーツ・山本直弘)

 ◆驚異の奪三振率19.06 石井は今季ここまで6試合に登板している。投球イニングは5回2/3で12奪三振をマークしており、全17アウトのうち、約71%が三振によるアウト。奪三振率は三振数×9÷投球回で求められ、9.00を超えると1イニング1三振以上の計算。石井の19.06は1イニングに2三振以上を奪っていることとなる。奪三振の内訳は空振り=10、見逃し=1、スリーバント失敗=1。なお、ウイニングショットで目立つ球種はフォークで最も多い5奪三振。

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