緊張してお腹が痛くなるのはなぜ? 予防法と注意点 内科医に聞いた

慣れない環境にストレスを感じ、お腹が痛くなることも(写真はイメージ)【写真:写真AC】

新年度を迎えてから1か月半以上が経ちました。新社会人や新しい部署への異動など、環境の変化があった人も少しずつ職場に慣れ始める頃でしょう。ただ、緊張からストレスを感じて、お腹が痛くなることがありますよね。体質的な問題もありますが、緊張からくる腹痛を改善するにはどうすれば良いでしょうか。内科医の佐藤留美医師に、緊張と腹痛の関係や症状、日常生活で気をつけることなどについて伺いました。

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自律神経のバランスも影響 主な原因とは

初対面の人との顔合わせや、大勢の前でのプレゼンなどは、何度経験しても緊張して落ち着かない人もいるでしょう。トイレに行く回数が増え、お腹が痛くなるなどの症状が出る人も。そのような不安や緊張、焦りといった不快な感情は、自律神経の働きに影響を与えます。

自律神経には、活動しているときに優位に働く「交感神経」と、リラックスしているときに優位に働く「副交感神経」の2つがあります。胃腸の活動には副交感神経が密接に関わっていて、ストレスにより自律神経のバランスが崩れると、お腹の不調が生じるようになるのです。

ストレスと腹痛との関連は非常に複雑なもので、個人差があります。ストレスからくる腹痛を訴えやすい人には、他人の評価が気になる、落ち込みやすいなど、何事にも敏感に反応しすぎてストレスを溜め込みやすい傾向が。

もちろん、同じようにストレスを感じても、腹痛などの症状が出ない人もいます。そのような人の場合、ストレスを溜め込んでも、適度な発散法を自身で理解しているため、お腹の不調を訴えることが少ないでしょう。

症状が長く続く場合はストレス以外が原因の場合も

ストレスからくる腹痛を改善するには、まずはストレスを溜め込まないこと。お腹の不調を感じたときは、深呼吸をして、お腹を温めると良いでしょう。日頃から休養や睡眠をしっかり取って、規則正しい生活を心がけることが大切です。

また、冷えも腹痛の原因になります。冷房が効いたオフィスで、体が冷えないように対策することも大切です。これからの季節、冷たい飲み物や食べ物に手が伸びがちですが、できるだけ控えるように。暑い日でも、常温や温かいものを摂取すると良いでしょう。

アルコールや喫煙なども原因のひとつとして考えられます。刺激物は避けて、胃腸の負担を減らすことを心がけてください。

胃腸にとくに異常がなくても、緊張やストレスが原因で腹痛などを繰り返す症状を「過敏性腸症候群」といいます。これまで述べた生活改善などで症状が収まることもありますが、慢性的に繰り返す場合は、薬物療法などもありますので、自己判断ではなく医師に相談してください。

また下痢や便秘、お腹の不快感などの症状が2週間~1か月以上も続く場合は、過敏性腸症候群ではない別の病気の可能性があります。早めに医療機関を受診するようにしましょう。

佐藤 留美(さとう・るみ)
久留米大学医学部卒業後、同大学病院や市中病院にて臨床医として研鑽を積む。大学院では感染症学の研究に励み、医学博士号を取得。臨床面では内科・呼吸器・感染症・アレルギーなどの専門医及び指導医となり、同大学関連の急性期病院にてCOVID-19の診療など第一線で活躍中。花粉症や喘息などのアレルギー疾患の診療経験も豊富。その傍ら、現在は藤崎メディカルクリニックの副院長として地域医療にも取り組んでいる。

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