最新研究「痩せ」は危ない(1)痩せ形女性に肥満者と同様の特徴

先進国において日本は女性の痩せの割合が突出している(C)日刊ゲンダイ

繁華街を数分歩いただけでもダイエット広告が幾つも目に入る。夏を目前とした今、一層増えている感があるが、日本の若い女性の「痩せたい願望」に警鐘を鳴らす専門家は少なくない。その一人が、糖尿病専門医である順天堂大学大学院スポーツ医学・スポートロジーの田村好史教授だ。

「1980年ごろから10年間で痩せた女性の割合が急増。20代女性においては、5人に1人が将来の健康リスクがある『痩せ』状態で、先進国において女性の痩せの割合は突出しています」(田村教授=以下同)

近年の研究で、痩せていても肥満と同様、糖尿病のリスクが高いということが明らかになっている。しかしそれはあくまでも中年以降のデータで、痩せた若年女性については不明だった。

そこで田村教授ら順天堂大学の研究グループは、痩せた若年女性に関する研究を実施。2021年、痩せた若年女性が肥満者と同様、糖尿病を発症しやすい状態になっている可能性があることを世界初の研究論文として発表した。

対象は、若年女性のうちBMIで「痩せ」に該当する18.5未満の98人、「標準」のBMI18.5~23.0の56人。耐糖能異常(簡単に言うと、糖尿病のなりやすさ)を判定する検査と、食事内容や身体活動量などに関するアンケートを実施した。

「結果、痩せ形では耐糖能異常が13.3%と標準体重より7倍多かった」

「痩せ」には、しっかり食べてしっかり運動している人もいる。しかし本研究では、痩せ形の若年女性では、エネルギー摂取量・身体活動量・筋肉量が少ない、つまり食べない・動かない「エネルギー低回転型」が多数を占めた。

次に、田村教授らは痩せ形の耐糖能異常の特徴を詳しく解析。するとこれまで肥満者の特徴とされてきた「インスリン抵抗性」が見られた。インスリンの感受性が低下し、効きにくくなる状態のことだ。痩せ形の場合、インスリンの分泌が低下して耐糖能異常になると考えられていたが、それだけではなく肥満中年と同様のインスリン抵抗性も起こっていたのだ。

もうひとつ、やはり肥満者の特徴である「脂肪組織の異常」も見られた。

「太ると脂肪細胞に脂肪がためられます。肥満者では脂肪細胞が容量オーバーとなり脂肪があふれ出て、肝臓や骨格筋に達し、毒性を発してインスリン抵抗性を引き起こす。それが痩せた若年女性でも認められました」

これは、全くの予想外の結果だったという。(つづく)

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