パリ世代のレフティ山田楓喜が求める“プラスワン”「『いつでも前に行くよ』という姿勢をもっと見せないと」

成す術がなかった。

5月19日に行なわれたJ1第15節の町田戦。東京Vが0-5という大差で完膚なきまでに打ちのめされた一戦は、チームだけではなく、MF山田楓喜にとっても現実を突きつけられる場となった。

先のU-23アジアカップから戻ってきてしばらくは、“代表のサッカー”から“ヴェルディのサッカー”に頭を切り替える作業に腐心していたが、「全くサッカーが違うので、もちろん難しいけど、今日は特にそんなに感じていなかった」(山田)。

だからこそ、もっとできるという自信を持ってピッチに入ったが――。

4-4-2の右サイドハーフで先発した背番号18は、立ち上がりから相手の守備に苦戦。ハイプレスにてこずり、前にボールが入ってくる機会が限られたなか、局面の勝負でほとんど競り負けた。球際で勝てず、ボールを受けても潰されるシーン。得意の左足も封じられ、ミドルシュートやクロスはほとんどなかった。

「ゴールエリア付近で自分がもっと持てれば、チャンスになったんかな...」

京都弁混じりの言葉には力がなく、前半45分の出場に留まった自分の不甲斐なさを、試合後はこれでもかと噛み締めた。

自分の形を持っており、ツボにハマった時の破壊力は凄まじい。代表でもクラブでも、その力は誰もが認めるところだ。その一方で、相手に対策されると、存在感が一気に希薄になる試合も珍しくない。ある意味、浮き沈みが激しいタイプとも言える。

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課題は山田も認識済み。封じられた際の対処法を講じなければならないと感じている。

「もっと自分主導でやっていいのかもしれない」

その真意はこうだ。

「動き回るのは味方が混乱してしまうからあれかもしれないけど、もうちょっと自分がボールを引き出したり、もっと要求していいような気がしている」

積極的にボールを受けて、リズムを作ってもいいかもしれない。だが、それだけでは局面の打開が難しいのも事実。町田戦のように対策されれば、簡単に相手のブロックは割れない。そこで山田がさらに挙げたポイントは“縦”への意識だ。

「町田戦は1本縦に行くシーンがあった。ちょっと縦を見せられたとは思うけど、もう少しボールを持った時に『いつでも前に行くよ』という姿勢をもっと見せないといけない。1本縦を見せたことで、中に行けるシーンもあったと思うので、そういうところは見逃さずに仕掛けていかないと上にいけない」

これまで以上に縦突破ができるようになれば、相手は警戒して外を切ってくる。そうすれば、今度は中で勝負しやすい環境が整う。そもそも、縦突破の成功体験はある。第7節の柏戦(1-1)で挙げたゴールは、縦をぶち抜き、利き足ではない右足でニアサイドを撃ち抜いている。

トライ&エラーを繰り返しながら、突破力に磨きをかけていく。その繰り返しが自信につながり、パリ五輪行きにも近づく。新たな自分に出会うべく、縦突破という“プラスワン”を求めて山田は戦い続ける。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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