【漫画】名前も覚えてもらえない“陰キャ”がザリガニ姿で登校してみたら……気鋭の学園ギャグ漫画がヤバい

陰キャ高校生がザリガニに――。そんな現実離れした導入から、巻き起こる教室でのドラマをギャグに仕立て上げたSNS漫画が『陰キャ過ぎてザリガニになった話』だ。

こちらは現在「月刊コミックビーム」で連載中の『助けてヘルプミー』の第3話「お悩みその3 影が薄い」を転載したものとなっている。作者は野火けーたろ(@nobi_yasashii)さん。彼が生み出すシュールで、どこかリアルな作品の秘密に迫る。(小池直也)

――今作を投稿した経緯について教えてください。

野火けーたろ(以下、野火):漫画『助けてヘルプミー』の3話です。毎回舞台は同じなんですけど、毎回ゲストがひと騒動起こすというオムニバス作品で、個人的には一番自信のあるエピソードでした。

作品を象徴するような回なので、単純に単行本の宣伝になればと投稿しましたね。反応を全部は追い切れていませんが、普段届かない方にも届いたのかなと。

――『助けてヘルプミー』というタイトルも興味深いです。

野火:とある高校の生徒会に変わった悩みが舞い込んできて、これまた変わった解決方法で解決していくというストーリーですね。お悩み解決が一貫したテーマになっています。

――なぜザリガニを題材にしたのですか?

野火:よく教室の水槽でザリガニを飼ったりするじゃないですか。だから置いてもおかしくないし、デカいザリガニがいたら絵としてフックになると思ったんです。

最初は映画『ブタがいた教室』みたいなアイデアから始まったんですよ。それが打ち合わせを経て、この形になりました。あとは目立ってなかった人が友達ができたり、教室内で立場を得られるようなゴールにしたかったですね。

――タイトルにもある陰キャにシンパシーを覚えたり?

野火:ありますね。本作は冴えない人ばかりが登場しますが、僕自身も学生時代はそういうタイプでしたし、そういう人の方が好きです。美男美女の恋愛もいいけど、もっとしょうもない青春がある。そこにフォーカスしました。

あとは死ぬほど悩んでいる問題でも、客観的に見たらしょうもないという構図が好きなんですよ。僕もコンプレックスが多い人間でしたが、杞憂なことを面白おかしく描いてもいいし、そうであってほしい。

――ユニークな物語は、どう構想されるのでしょう。

野火:最初に大きな嘘を付くことは大事にしています。本作でいうとザリガニが教室にいるという嘘を付いて、あとは「なぜザリガニになったのか?」「ザリガニが実際いたらどうか?」などをリアルに描いていくんです。それによって虚構なのに本当みたいなことが起き始めるので。

――どういったものに影響を受けてきたのでしょう?

野火:増田こうすけさんの『ギャグマンガ日和』には強い影響を受けています。描き始めた頃から似た漫画を描きすぎて、そういう要素を意図して消すようにしてきたほどでしたね(笑)。近年だと和山やま先生の作品に注目しています。おかしいことが起きても、会話がリアルなので本当だと思わせる凄みがある。

――漫画家としての展望などがあったら教えてください。

野火:本当にいい作品は日常のふとした瞬間に「あのキャラって今何してるんだろう?」とか「あの漫画は今から何が起こるんだろう?」と思い出してもらえるものだと思うんです。そういう生活の一部に溶け込める漫画が描ければと思っています。

また色々な作品を増やしながら、個人的に好きな「月刊コミックビーム」という雑誌を盛り上げていきたいですね。

(小池直也)

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