医療用ディスポーザブル製品汎用品市場の調査を実施(2024年)~コロナ禍で抑えられていた手術・検査・処理等が回復傾向にあり、2022年度の医療用ディスポーザブル製品汎用品市場は前年度比1.2%増の2,503億4,280万円~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の医療用ディスポーザブル製品汎用品市場を調査し、市場規模推移、セグメント別動向、参入企業別動向、将来展望を明らかにした。

1.市場概況

医療用ディスポーザブル製品とは、病院、クリニック、検査センター、在宅療養等で使用される単回使用の医療機器を指し、薬剤注入関連や輸液ライン、手術関連製品である。
2022年度は、海外生産製品を中心に生産・輸送の遅れ等から供給不足となっている製品も多数あり、一部製品ではコロナ禍の影響による症例減から完全に回復していない市場もある。一方、医療施設では、DPC(製品群分類包括評価)やSPD(院内物流管理システム)導入により、ディスポーザブル製品の在庫管理が適切に行われて浸透しており、2022年度の医療用ディスポーザブル製品汎用品市場(国内メーカー及び輸入製品の総販売元[製造業・製造販売業]ベース、大人用紙おむつを除く)は前年度比1.2%増の2,503億4,280万円で、52製品中25製品が前年度実績を上回る結果となった。新型コロナウイルス感染拡大により抑えられていた各種検査等が回復しつつあることも要因である。

2.注目トピック~医療用ディスポーザブル製品のHome Use市場

日本国内での高齢者の急増が予想される中、厚生労働省は終末期医療の在り方を見直し、長期にわたる医療・介護の体制を確保するために、病院中心の療養医療から在宅療養への転換を進めている。
現在、医療用ディスポーザブル製品を使用する主な在宅患者は、「在宅自己注射指導管理料」や「在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料」等が算定されている患者が中心となっている。コロナ禍の影響を受けた2020年度以降、病院への通院が困難になった側面もあり、一部の患者は在宅医療へと流れているものと推測する。

2022年度の医療用ディスポーザブル製品汎用品市場のうちHome Useでの市場規模は前年度比1.4%増の262億8,000万円、高齢者の尿失禁向け等の大人用紙おむつ市場1,974億9,500万円を加算すると同2.3%増の2,237億7,500万円と推計した。
Home Use市場の内訳をみると、自己導尿カテーテルなどのウロロジー(泌尿器科)関連をはじめ、輸液フィルター、透析用留置針、呼吸・麻酔回路、人工鼻などの在宅人工呼吸療法分野の製品についても堅調な推移が期待できる。また、尿失禁については実際に治療を行う比率はまだまだ低く、潜在患者数が多いと言われており、大人用紙おむつ市場はプラス推移が続いている。

3.将来展望

今後、医療用ディスポーザブル製品では、感染を防止するSafety製品※1や、排液処理システムなどの各種吸引製品、ディスポーザブル化の進展が期待できる呼吸・麻酔回路、酸素マスク・カニューラ、あるいは事務方を含む医療従事者の作業効率を向上させるキット・セット化製品※2などの導入や使用量の増加が続いていく可能性が高い。
また、国の政策として地域包括ケアシステムの構築が推進されており、家庭内における介護体制、医療施設と介護家庭とのインフラ整備、診療報酬以外の補助制度の充実などの支援体制が整うことで、医療用ディスポーザブル製品汎用品のHome Use市場は増加傾向で推移する見通しである。

※1 Safety(安全機構付き)製品・・・針刺し事故や血液飛散、誤接続(閉鎖回路)などを防止する感染対策製品
※2 キット・セット化製品・・・一般的な手術・検査・処理等を行うために必要な被覆保護材及び医薬品の全てを含む単回使用製品をプレパッケージしたもの

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