設定は「弱」より「自動」?「室外機に濡れタオル」は逆効果?今改めて知りたい“エアコン節電術”をダイキンに聞いた

今や生活にかかせないエアコン。

そんな中、6月請求分の電気料金は、国が負担軽減策として支給している補助金が半減するため、5月分と比べて大手電力10社すべてで値上がりすることがわかっている。

物価高も続き、少しでも節電になることは実践したいと考えている人も多いだろう。中には、SNSで話題となったこともある「室外機に濡れタオルをかけて冷やすと節電になる」という“ライフハック”を実践する人もいるのではないだろうか。

そんな中、ダイキン工業株式会社が「エアコンの節電方法」に関する調査結果を発表。

ダイキンが検証したのは、エアコンの

(1)風量設定の違い(「弱」・「自動」) (2)風向設定の違い(ななめ下・水平) (3)温度を下げるか、風量を上げるか(温度マイナス1℃・風量「強」) (4)室外機に濡れタオルをかけるか、かけないか

という設定による、節電効果の違いだ。

それぞれどのくらいの節電効果がある?

(1)風量設定の違い(「弱」・「自動」)の実験では、風量設定「弱」と「自動」それぞれで、日中11時間(8:00~19:00)つけっぱなしにした結果、風量「弱」の方は1日の消費電力が3.85kWh、「自動」が2.79kWhだった。

「自動」の方が消費電力量が約3割少なく、「弱」に設定したときと比べて1カ月の電気代が約990円少なくなることがわかった。

(2)風向設定の違い(ななめ下・水平)では、冷房の風向設定は「水平」にした方が節電になると判明。同様に日中11時間、エアコンをつけっぱなしにした時、1日の消費電力量が風向「ななめ下」は3.76kWh、「水平」は2.77kWh。

「水平」の方が、「ななめ下」よりも1カ月の電気代が約930円少なくなるという。

(3)温度を下げるか、風量を上げるか(温度マイナス1℃・風量「強」)では、風量を「強」にする方が、設定温度を「1℃下げる」場合と比べて消費電力量が約半分になることが判明。

消費電力は「設定温度を1℃下げる」時が1.13kWh、風量「強」が0.52kWhとなり、風量を「強」にした方が約19円の節電になることがわかった。

(4)室外機に濡れタオルをかけるか、かけないかでは、濡れタオルを「かけない」方が、節電になるという結果に。

濡れタオルをかけた方が消費電力量が上がり、濡れタオル「なし」は「あり」と比べて1カ月の電気代が約1020円少なくなるという結果が出ている。

実験結果をまとめると、
(1)風量は「弱」より「自動」 (2)風向は「ななめ下」より「水平」 (3)温度を下げるより、風量を強める (4)室外機に濡れタオルは「かけない」
のが、節電効果アリと判明した。

風量を「自動」にした場合は「弱」にした場合よりも、室外機にあるエアコンの“心臓部”となる圧縮機にかかる負担が減る事で、電力の節約に。

また、冷たい空気は重く、床付近にたまる性質があるため、風向を「水平」にすると、冷たい風が天井付近から床方向に自然に下りていくので、余計な電力消費を抑えつつ部屋全体を涼しくすることができるのだという。

エアコンは、設定温度を下げるときにも圧縮機の運転が強まるため、電力を多く使うことになる。しかし、人の体感温度は室温だけでなく湿度や気流によっても変化するため、室温を下げる代わりに風量を「強」にすることで体感温度が下がり、電力を抑えつつ涼しく感じられるのだという。

そんな中、「濡れタオルをかけない方が節電になる」というのは、「濡れタオルが室外機側面の吸込口や吹出口の一部に垂れ下がり、空気の通り道をふさいでしまったため、余計に電力を使ってしまう」からだそう。

ごく自然に使っている機能が節電に役立つという嬉しい情報もあるが、濡れタオルを適切に使う事ができれば、さらに簡単に節電ができる?ダイキンに、調査結果についてと、これからの季節に使える“節電術”を聞いた。

室外機には「日陰を作る」「打ち水」を推奨

――これから必須になるエアコンの“節電”について教えて

政府による電気料金の負担軽減措置は5月使用分で終了することもあり、電気代を気にしてエアコンの使用を控えてしまう方も増えるかもしれません。

夏場の熱中症リスクを抑える取り組みのひとつとして、エアコンの適切な使用は欠かせなくなってきています。また、節電は、電気代を抑えることだけでなく、CO2排出量の抑制にもつながります。こうした観点から、家電の中でも多くの電力を消費するエアコンの節電には、ぜひ取り組んでいただきたいと考えています。

――様々な機能を比べた“節電術”、この調査結果の受け止めは?

エアコンの仕組み上、風量や風向を調整したり、室外機周辺の空気の流れを妨げないようにしたりすることが節電につながることは把握しておりました。

今回の検証では、実際の暮らしの中で、どの程度の電気代の節約につながる可能性があるかについて確認することができました。お住まいの環境やその日の天気、お使いのエアコンによっても変化しますが、今回検証した節電の工夫によって、場合によっては消費電力量が約3割抑えられ、それに伴って月に1000円近くも電気代が抑えられる場合があるということが分かりました。改めて、節電の工夫の大切さを感じる結果となりました。

――「濡れタオルが室外機をふさいでしまう」と節電には逆効果に…。では、小さめのタオルを使ったり、室外機の邪魔をしない濡れタオルの使い方をすれば、節電効果は望めるの?

エアコンは冷房時、室外機周辺の空気(室外機が吸い込む空気)の温度を下げることで運転効率が高まります。

濡れタオルを室外機に載せると、気化熱により天板の温度は多少下がります。このとき、室外機周辺の空気の温度を下げてくれるほどに天板の温度が低下すれば、エアコンの運転効率を高める可能性はあります。

ただ、今回の検証では、天板に載せた濡れタオルが運転効率を高めるほどの効果があったかどうかの確認はできず、むしろ運転効率が下がる結果となりました。なお、今回、タオルの置き方を変えると結果がどのように変化するかは検証していません。

――では、濡れタオルを使う以外に、室外機に工夫して節電効果が望めるのは?

「室外機に日陰を作る」「室外機周辺に打ち水をする」などの工夫をしていただくのが良いのではないかと思います。

――エアコンの使用が本格化する前にしておくべきことは、何かある?

政府は、熱中症予防の取り組みのひとつとして、エアコンの適切な使用を啓発しています。熱中症リスクを抑えるため、夏場にはエアコンをお使いいただきたいと思います。

夏場に安心してエアコンが使えることを確認いただくため、6月前半頃までには「エアコンの試運転」を実施いただきたいと考えています。

正しいエアコンの試運転で節電に

ダイキンによると、室外機の上に物を載せたりすることは推奨しておらず、こうしたことからも、「濡れタオルを室外機に載せる」方法よりも、「室外機に日陰を作る」「室外機の周囲に打ち水をする」といった方法が推奨されるとのことだった。

また、これからの季節に推奨される「試運転」は、エアコンが効率よく稼働できているか確かめて快適な夏を過ごすための準備だけでなく、節電にもつながってくる。
ダイキンが推奨している、試運転の方法は、以下の手順だ。

【エアコンの試運転の手順】 (1)冷房の設定温度を最低(16~18℃)に設定し、10分ほど運転 (2)冷風が出ているか・異常を示すランプが点灯していないか確認 (3)さらに30分ほど冷房運転し、室内機から水漏れがないか確認 (4)不快なにおいや聞き慣れない音がしないか確認

ぜひ正しいエアコンの使い方をチェックして、体にも懐にも優しい、快適な夏を迎えてほしい。

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