シニアの人生経験は投資にもプラスの効果!長期投資なら投資信託よりも「株式投資」を推す理由【経済誌元編集長が助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

個別株式、投資信託、ETF、外国為替など、資産を増やす方法はさまざまです。巷では「投資をするなら投資信託を選ぶのがベスト」だとする意見も多いですが、『一生、月5万円以上の配当を手に入れる!シニアが無理なく儲ける株投資の本』(日本実業出版社)の著者である川島睦保氏は、同書の中で「個人の資産運用で中心に据えるべきは個別の株式」だと提言しています。さらに、株式投資においては〈シニアであること〉が強みを発揮するとも言っています。それはなぜなのか、書籍から一部抜粋してご紹介します。

相場センスは「個別の株式」で磨かれる

私は個人の資産運用で中心に据えるべきは、投資信託や上場投資信託(ETF)、外国為替などではなく、個別の株式だと考えている。

投資信託は組み入れた銘柄の〝平均的な〟値上がり益や配当金しか得られないのに対し、個別の株式は銘柄の選択や購入するタイミングさえ誤らなければ、〝高い〟リターンを手にすることができる。

それに株式投資には、配当金や値上がり益以外にいくつかの有利な点がある。まずビジネスパーソン、社会人、生活人として経験豊富な個人投資家は、自分の経験や肌感覚で、成長性の豊かな企業(社会に貢献することで収益を上げる企業)を見つけ出すことができる。そして、直接その企業の成長を応援しながら、自らの資産を形成することができる。

アクティブ型の投資信託の場合は、プロの運用者が投資目的に従って有望銘柄の束(ポートフォリオ)をつくり、日経平均などのベンチマーク(比較対象)を上回る高いリターンを目指してくれる。

しかし、それはあくまで他人任せだ。それでは個人として企業を見る目や、売買タイミングに対する皮膚感覚(相場観)などがいつまでたっても身につかない。磨かれない。長期投資のスタイルも身につかない。

人間が幸せを感じるのは学習、成長、達成感、感動などの瞬間だ。シニア世代にとって、株式投資はそうした機会を提供してくれるはずだ。

長期投資では素人の勘が生きる

少し自慢話になるかもしれないが、私はロシアのプーチン大統領が2022年2月にウクライナ侵攻を始める数年前、原油価格がまだ1バレル50ドル台で低迷していたときに商社株を購入した。

その当時は知らなかったが、「投資の神様」といわれるウォーレン・バフェットも同じ時期に三菱商事や三井物産、伊藤忠商事などの大手商社株を秘かに取得し、買い増しを続けていた。それによって大手商社株が軒並み暴騰したことは有名な話だ。

私の経験からすると、原油や石炭など化石燃料の需要は地球温暖化対策の強化で長期的な減少傾向にあるが、当時の原油相場の下落はその傾向線から外れた異常な安値の水準にあった。これはかならず揺り戻しがくると確信したのが、購入の動機だった。

株式、債券、原油などの相場では、売られ過ぎたり、買われ過ぎたりすれば、その後に必ず大きな反動がくる。相場には上下いずれの方向にせよ、一時的にオーバーシュート(理屈では説明のつかない動き)が付き物だ。

そのオーバーラン(行き過ぎ)こそが、儲けのチャンスなのである。私はそこで自分の相場観を信じて、高配当利回りで、原油や非鉄、原料石炭などの取り扱いが多く資源株の異名をとる商社株を購入した。

同じく高配当利回りのトヨタ自動車株も購入した。将来、自動車は従来のガソリン・エンジン車から電動車(EV車)に置き換わり、自動車自体がコモディティ化する(機能や品質の面で差がなくなってしまう)。自動車業界はいずれ電機業界のように中国など新興国の追い上げで衰退が避けられない、とする特集や記事が新聞や週刊誌に氾濫していた。

その結果、トヨタを含む自動車組み立てメーカーや自動車部品メーカーの株価は大きく売り込まれていた。しかし冷静に考えると、ガソリン・エンジンから電気モーターへ自動車の動力源が瞬時にすべて置き換わるわけではない。世の中の車がすべてEV車になるには、かなりの時間が必要だ。

当時の自動車関連企業の株価は、トヨタやホンダの業績がいまにも大幅な減益に陥りそうなときの水準であり、あまりに売られ過ぎだと思ったのだ。

案の定、トヨタやホンダの業績はその後も順調に拡大を続け、自動車関連株は再び息を吹き返した。株価は時代を先見すると言われるが、それは1~2年の長い時間で見た場合であって、私の経験では数週間、数カ月の短期では時代を読み間違えることが多い。

それは短期で株を売買する人が、数年先の企業の業績がどうなるかなどを考えて売買しているとは限らないからだ。

また黒田東彦前日銀総裁が2023年に任期満了になる前から異常な超低金利時代はまもなく終わると予想して、私は高配当利回りの銀行株もこつこつ買い集め始めた。

銀行は金利の上昇局面では、貸出金利が預金金利よりも先に上昇に転じることから、利益が急速に拡大する。銀行にとって貸出金利は売上サービスの価格であり、預金金利は原材料の仕入れ価格に当たる。銀行の株価もそれを予想して、実際に異常な低金利が是正される前から上昇に転じた。

私がここで言いたいのは、自分のこれまでの投資成果を自慢することではない。ビジネスや人生のさまざまな経験を持っているシニアは、株式投資においても健全な常識や知恵をいっぱい持っており、成功する確率が高いということだ。

健全な常識や知恵は、短期の相場には通用しないが、長期の相場では大きな強みを発揮する。株価は長期的には健全な常識や知恵の方向に沿って動くからである。

川島 睦保

フリージャーナリスト、翻訳家

※本記事は『一生、月5万円以上の配当を手に入れる! シニアが無理なく儲ける株投資の本』(日本実業出版社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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