最先端放射線治療装置の国内初導入から1年 栃木県立がんセンター、患者への負担より少なく

導入から1年が経過した「エレクタ・ハーモニー」

 栃木県立がんセンター放射線治療科が昨年4月に、最先端放射線治療装置「エレクタ・ハーモニー」を国内で初めて導入し、1年が経過した。人為的なミス(ヒューマンエラー)の防止技術として自動化に特化するなど安全性が高く、210人の治療を実施。昨年11月には「即時適応放射線治療(オンラインART)」が始まり、患者の当日の体調に合わせ短時間で治療計画を見直し、これまで以上に負荷が少ない治療ができるようになった。

 「ハーモニー」は治療室に入る前に自動で患者の顔を照合し、オーダーメードの治療計画を反映したビームの照射を準備する。誤って別の患者への治療を適用することがない。治療中は体の表面をセンサーで常にスキャンし、患者の体が動いた時には自動でビームを停止する。

 オンラインARTは、県内在住の70代女性の子宮頸(けい)がんに対して行われた。治療当日、直腸内のガスの有無により、放射線を照射する部位に変動があったことから選択された。

 治療直前にコンピューター断層撮影(CT)ができ、自動支援技術を生かし、従来は数日かかった治療計画を最短15分程度で作成。この女性も計画を見直し、腫瘍を確実に照射した。

 同科の井上浩一(いのうえこういち)科長は「臓器移動がいつも以上に大きく、オンラインARTが妥当だと判断した」と話す。これまでは治療中の患者が痩せたり、日々の蓄尿量にばらつきがあったりすると、必要以上に放射線が当たり、副作用につながることがあったという。

 「ハーモニー」導入について、診療放射線技師で医学物理士の伊藤憲一(いとうけんいち)主査は「早さと正確性が向上し、医療スタッフの負担減にもつながった。治療時の枕の取り違えなど、小さなミスすら見逃さない」と話す。

 本年度には技術を活用した情報の電子化を試行する。医師や看護師、技師など、各部門の担当者がリアルタイムで状況を共有し、治療中の悩みなどを横断的に把握できるようにする。

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