「生産能力過剰論」は危険で誤った論理 新華社経済円卓会議

「生産能力過剰論」は危険で誤った論理 新華社経済円卓会議

北京国際モーターショーを見学する来場者。(4月25日撮影、北京=新華社記者/才揚)

 【新華社北京5月21日】中国で急成長を続ける新エネルギー車産業が、一部の西側諸国から過剰な生産能力として厳しい目にさらされている。

 新華社が20日配信したオムニメディア(全媒体)形式の討論番組「中国経済円卓会議」(第5期)には、業界の状況を世界の人々に伝えるため政府関係者3人と業界専門家1人が参加。西側の主張が根拠に欠ける理由を明確にし、世界が持続的に移行する可能性のある中での中国の新エネ車の重要性を語り、西側の封じ込め戦略と保護主義的措置の政治的根拠を明らかにした。

 ▽「過剰生産能力」は誤りの推論

 会議出席者は、需要と供給の関係や世界的な労働分業、将来の発展の軌道を詳しく検討すれば、「生産能力過剰論」のレトリックが事実的証拠を欠き、基本的な経済原則と矛盾しているのが分かると述べた。

 中国の2023年の新エネ車販売台数は949万台と生産台数の959万台をやや下回ったが、国家発展改革委員会の霍福鵬(かく・ふくほう)産業副司長は、わずかな生産余剰は生産能力の過剰ではなく、競争と技術の進歩の促進を意味すると述べた。

 霍氏は、革新的な企業が技術を高度化させて大きな市場シェアを獲得すれば、時代遅れの生産能力は段階的に自然淘汰され、動的な均衡につながると説明。新エネ車産業の状況を需給面だけで評価するのは経済の原則に合致しないと指摘した。

 一部の西側諸国は、中国の新エネ車輸出の拡大を過剰生産能力の証拠としているが、出席者はこの説に反論し、輸出に基づく推論に説得力はないと主張した。

 工業・情報化部の何海林(か・かいりん)運行監測協調局副局長は、一国の生産能力が内需を上回るのは比較優位と労働分業の結果であり、世界的に一般的な現象だと強調した。

 商務部の丁維順(てい・いじゅん)政策研究室副主任は「米国製チップは8割が輸出され、日本車の半分は海外に販売され、ドイツの自動車生産量の8割近くが海外へ出荷されている」と述べた。

 中国の新エネ車は主に国内市場に対応し、輸出は総生産のごく一部を占めるに過ぎない。23年には国内で約959万台が生産されたが、輸出はわずか約12%だった。

 将来的に見れば、持続可能性に向けた世界的な取り組みが進む中、中国の新エネルギー製品は大きな需要を持つ。霍氏は、世界的なグリーン・低炭素移行への積極的な対応として、中国の新エネ車や風力発電、太陽光発電などの成長分野がより注目を集めるようになると述べた。

 ▽世界的な利益

 会議では、世界が気候変動と経済停滞に向き合う中、世界第2位の経済国で急成長する新エネ産業が世界の発展に深い意義を持つとも指摘された。

 中国の新エネ車は22年、フランスやタイ、インドネシアなど180カ国・地域に輸出され、世界の消費者の好評を博した。

 丁氏は、将来の自動車所有者にとって中国の新エネ車は費用対効果の高い選択肢だとし、より多くの人々の個人的移動の利便性を広げ、世界で高まる環境に優しい移動ソリューションの需要に応えていると述べた。

 霍氏は、グリーン成長を追求するには質が高く、価格が手頃で、持続可能な製品と技術へのアクセスが世界規模で必要だとし、中国は新エネ車の開発を通じて貢献してきたと語った。

 中国の新エネ車産業がこの数年間で急成長を遂げたのは、中国が二酸化炭素(CO2)排出量の2030年までの減少転換、60年までの実質ゼロを目指す「双炭」目標を発表し、世界がグリーン経済を加速させたのと時期的に一致しているとも指摘した。

 中国マクロ経済研究院対外経済研究所の曲鳳傑(きょく・ほうけつ)研究員は、中国はこの過程で世界的な気候ガバナンスを強化する模範的な役割を果たしたと強調。理由として世界的な気候ガバナンスの促進と他国への実践的経験の提供を挙げた。

 出席者は、中国の新エネ車産業の成長が世界の自動車産業の高度化を促し、協力と競争の両方を取り入れたエコシステムを育む可能性があるとの見方を示した。

 霍氏は世界の大手自動車メーカーが中国に製造工場や研究施設を設立する選択をしていることについて、この戦略的な動きは新エネ車の技術革新と生産シフトに有益との見方を示した。

 曲氏は、中国の自動車メーカーが海外の同業他社との競争と協力を通じ、強力な競争環境を育んできたと指摘。健全な競争の例としてテスラを挙げた。

 新エネ産業の急速な拡大は、雇用創出を急増させ、産業の成長率を高めると予想される。曲氏は、新エネ車産業は戦略的新興産業として世界経済拡大の新たなエンジンになる態勢を整えていると語った。

 ▽真の危険:保護貿易主義

 グローバリゼーションと貿易多国間主義はここ数年、一部の国の経済の減速や政治的要因によって逆風に直面し、保護貿易主義が生まれている。

 保護貿易主義の亡霊は世界経済に影を落とし、一部の評論家も開かれた市場と国際協力の原則に反すると主張している。

 霍氏は、保護貿易主義は内部の産業問題を解決できず、世界の新エネ車産業チェーンの安定した運営を混乱させていると批判した。

 保護主義政策の影響は経済の混乱だけにとどまらない。霍氏はこうした措置について、世界の低炭素転換に寄与しないと警告。中国は世界の再生可能エネルギー容量に大きく貢献しているが、保護主義は世界的な持続可能な開発の進展を妨げる可能性があると指摘した。

 丁氏も保護主義がグリーントランスフォーメーション(GX)に影響を与え、気候変動対応に共同で取り組む世界の努力を損なうと懸念を表明。「片手でグリーン発展の旗を振りながら、もう片方の手で保護主義の鉄棒を振るようなものだ」とし「典型的な矛盾の例で『二重基準』といえる。最終的に世界のグリーン・低炭素発展と気候目標の実現に悪影響を及ぼす」と語った。

 曲氏は、米国の保護主義の背後にある政治的動機を批判。保護主義は中国の経済システムと発展モデルを批判するツールとして利用され、イデオロギー対立を生み出し、国際社会で中国の影響力と評判を低下させていると指摘した。

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