イスラエルとハマスの指導者の逮捕状、ICCが請求 ネタニヤフ氏は「虚偽」と強く非難

国際刑事裁判所(ICC)のカリム・カーン主任検察官は20日、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘をめぐる戦争犯罪容疑で、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相らとイスラム組織ハマスの複数指導者らの逮捕状を請求したと発表した。ネタニヤフ氏はこの動きを激しく非難している。

逮捕状が請求されたのは、イスラエルのネタニヤフ首相とヨアヴ・ガラント国防相、ハマスの政治指導者イスマイル・ハニヤ氏と軍事部門トップのモハメド・デイフ氏、ガザ地区における指導者ヤヒヤ・シンワル氏。

ネタニヤフ首相は、自身が「大量殺人者」と呼ぶハマスと「民主的なイスラエル」が比較されることを、嫌悪感をもって拒否すると述べた。

アメリカのジョー・バイデン大統領もこれに同調し、イスラエルとハマスとの間に等価性はないと述べた。

ICCのカーン主任検察官は、イスラエルのネタニヤフ首相とガラント国防相について、ガザ地区での戦争犯罪と人道に対する罪で刑事責任を負うと信じるに足る合理的な根拠があるとしている。

ICCはガザ地区のハマスのトップ、シンワル氏についても、戦争犯罪容疑で逮捕状を請求している。

ICCの設置法「ローマ規程」は、国際犯罪の責任を負う者に対して自国の刑事裁判権を行使することが、すべての国の義務だと定めている。

イスラエルとその重要な友好国アメリカは、「ローマ規程」に批准していない。

ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を襲撃し、イスラエル側で約1200人を殺害、252人を人質としてガザへ連れ去った。イスラエルは直後にガザへの報復攻撃を開始。ハマス運営のガザ保健省は、ガザでこれまでに少なくとも3万5500人が殺害されたとしている。

バイデン米大統領は20日、「イスラエルとハマスの間に等価性はない、まったくない」と述べた。

アントニー・ブリンケン米国務長官は、米政府は今回の動きを「根本的に拒否する」と述べ、バイデン氏に同調。「これは恥ずべきことだ」、「ICCにはこの件に関する管轄権はない」とした。

また、逮捕状の請求は、停戦合意にむけた現在進行中の努力を危険にさらすものだと示唆した。

ICCのカーン主任検察官は、ネタニヤフ氏とガラント氏には戦争の手段として民間人を飢餓に陥らせたり、殺人、民間人に対する意図的な攻撃指示、絶滅といった犯罪を犯したりした疑いがあると述べた。

ハマス指導者たちについてはイスラエルへの攻撃を開始した「少なくとも2023年10月7日から」、イスラエル指導者たちについては「少なくとも2023年10月8日から」、それぞれこうした犯罪が始まったとしている。

ICCは20日、「多大な努力」にもかかわらず、「犯罪疑惑や調査を受けている個人に対処するための、(イスラエルの)国内レベルでの真の行動を示すいかなる情報」も受け取っていないとし、ICCの立場を擁護した。

ICCの判事らが今後、逮捕状を発行するかどうかを検討する。逮捕状が発行されれば、「ローマ規程」批准国には逮捕状が出された人物を逮捕する義務が生じる。

イスラエル首相としての在任期間が歴代最長のネタニヤフ氏は、自身の逮捕を求めるICCの請求を「不条理で虚偽の命令」だと非難した。

ネタニヤフ氏はヘブライ語の声明の中で、ICCは「どんな厚かましさで」ハマスとイスラエルを「比較しようなどと」するのかと問いかけた。

そして、両者を比較するのは「現実の歪曲(わいきょく)」だと述べた。

さらに、カーン氏が「世界中で猛威を振るっている反ユダヤ主義の火に、無情にもガソリンを注いでいる」と非難した。

イスラエルのイスラエル・カッツ外相は、カーン氏の動きについて、昨年10月7日の攻撃の犠牲者に対する「抑制のない正面攻撃」であり、「永遠に記憶されるであろう歴史的恥辱」だとした。

ハマスもまた、「パレスチナのレジスタンス指導者に対するすべての逮捕状の取り消し」を要求している。

「国際刑事裁判所の検察官による、被害者と死刑執行人を同一視しようとする試みを、ハマスは強く非難する」

ハマスはネタニヤフ氏とガラント氏に対する逮捕状の請求が「7カ月も遅れた」ことや、イスラエルのほかの政治・軍事指導者の名前が挙げられていないことに不満を表明した。

ICCのカーン氏はハマス指導者たちについて、壊滅、殺人、人質、レイプ、性的暴力、拷問といった犯罪を犯したと非難した。

(英語記事 Netanyahu denounces bid to arrest him over Gaza war

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