お隣のご主人が最近、大手企業の「現業職」を定年退職したようです。退職金は多いのでしょうか?

現業職とは

現業職とは、管理職・事務職・研究職以外の職種を指し、現場作業を遂行する職種です。主に生産、販売、セールス、運輸・通信、保守、サービスなどの業務に直接従事する職種を指します。

また国や地方自治体の現業職としては、公営バスや電車の運転手、学校の用務員や給食調理員、守衛・警備員、清掃員、ごみ収集作業員などが挙げられます。

職業別・勤続年数別の定年退職者の一人あたりの退職金平均支給額

厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」によると、が「管理職・事務職・技術職」と「現業職」の2つの業種に大きく分けて、勤続20年以上かつ45歳以上の定年退職者の1人当たりの平均退職給付金は以下の通りです。

表1

※厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」を基に筆者作成

表1にある令和5年調査計を見ると、最終学歴が高校卒の「管理・事務・技術職」の1人あたりの平均退職給付金は1682万円で、「現業職」の1人あたりの平均退職給付金は1183万円でした。「現業職」は、「管理・事務・技術職」と比較すると、勤続年数は関係なく1人あたりの平均退職給付金が少ないことが分かります。

また勤続35年以上の定年退職者で最終学歴が高校卒の「現業職」の1人あたりの平均退職給付金は、1471万円です。勤続年数20~24年と比較すると、3.6倍も高いことが分かります。そのため、勤続年数が長いほど多くの退職金が得られるでしょう。

現業職における退職者の企業規模間格差

独立行政法人の「ユースフル労働統計2023」が集計した勤続年数35年以上の定年退職者における退職金の企業規模間格差を、学歴・職種別に表2にまとめました。

表2

※独立行政法人 労働政策研究・研究機構「ユースフル労働統計2023‐労働統計加工指標集‐」を基に筆者作成

従業員1000人以上の企業を基準にし、基準値を100.0としています。どの学歴も職種も企業規模が小さくなるほど退職金の格差が大きくなっていることが分かります。

高校卒の現業職の1000人以上の企業と33~99人の企業を比べると、半分程度の格差が見られます。企業規模が大きいほど退職金が多く配られることが見て取れます。

また高校卒の現業職は、大学卒の管理・事務・技術職と比べると、退職金の企業間格差が大きいです。そのため、学歴によっても退職金の支給額が変わるといえるでしょう。

退職金の額より今後の生活費に目を向けよう

高校卒の「現業職」における退職者の平均支給額は、「管理・事務・技術職」よりは少ないですが、1183万円となっています。平均より高ければ、退職金も期待できるでしょう。

また勤続年数が長く企業規模が大きいほど、退職金は多くなります。反対に、勤続年数が短く企業規模が小さいと退職金は少なくなるため、今後の生活に困ることがないように退職金と年金受給額、預貯金などを計算して、毎月どれくらい使えるかを早い段階で確認してみましょう。

出典

厚生労働省 令和5年就労条件総合調査の概況(18ページ)
独立行政法人 労働政策研究・研究機構 ユースフル労働統計2023(249ページ)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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