能登の自慢の味を再び…「酒蔵支援プロジェクト」で復興目指す 日本の「SAKE」海外展開での成長に期待

5月17日から19日の3日間にわたり行われた日本酒イベント「SAKE PARK」に、能登半島地震で被災した酒蔵の復興を支援する「酒蔵支援プロジェクト」のブースが登場し、多くの人々が能登の味を楽しんだ。専門家は、日本酒の国内消費の伸びが期待できない中、成長のカギは海外にあると指摘する。

日本酒イベントに“能登の味”も登場

「石川県の能登町、松波酒造の若女将の金七聖子といいます」
「輪島市で『奥能登の白菊』という酒を造る、内藤喜一と申します」

東京・渋谷で行われた日本酒イベント「SAKE PARK」に登場したのは、石川・能登半島地震で被害を受けた酒蔵の蔵元。今回のイベントでは、被災した酒蔵と全国の酒蔵が協力して能登ブランドの再建を目指す「酒蔵支援プロジェクト」のブースも登場した。

SAKE PARK発起人 山本典正代表:
日本の若い人・海外の人がたくさん来ているが、能登の震災の話を聞いて、応援したいという方が多くて反響はすごい。

イベントで今湊キャスターが再会したのが、能登町で「鶴野酒造店」を営む鶴野晋太郎さんだ。

2024年1月、今湊キャスターが鶴野さんの元を訪れると、酒蔵や店舗は倒壊し、避難所生活を送りながら「酒蔵支援プロジェクト」に参加していた。

あれから4カ月、鶴野さんは、長崎県・平戸市にある「福田酒造」のもとで、自慢の味の“復興”を目指してきた。今湊キャスターが、再び造られた自慢の味を試飲した。

今湊キャスター:
いただきます。爽やか、飲みやすいですね。フレッシュさ、果実味。すっと喉に入ってきます。

イベント参加者は「金沢の酒マルシェってあるんですよ。そこでいつもおいしく頂戴していて。ここまでやってきた。うまいっす」と笑顔を見せた。

再び、多くの人が酔いしれた能登の味。応援してくれた人たちとの交流は、震災以降初めてだという。

鶴野酒造店 鶴野晋太郎さん:
町自体は、地震直後からほとんど変わっていない状況で、解体も全く進んでいないし、そういう意味では不安もたくさんありますけど、たくさんの人に支援してもらえたおかげで、僕らもイベントに笑顔で参加できるようになったので、あれから比べるとかなりの進歩だと思う。

吉田酒造店プロジェクトリーダー 吉田泰優之さん:
能登の酒蔵が復活するまでには、長いところで5年・10年近くかかるので、(震災当初は)辛そうな状態だったけど、今はみなさん前を向いて、明るい表情になって良かったなと思う。

能登の酒蔵を笑顔にする酒蔵支援プロジェクトは、6月7日から応援購入サイト「マクアケ」で、第2弾がスタートする予定だ。

日本酒人気のタイミングを生かす

「Live News α」では、エコノミストの崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。

堤礼実キャスター:
今回の取り組み、どうご覧になりますか。

エコノミスト・崔真淑さん:
能登の復興はまだ道半ば、そうした厳しい環境で、頑張っている地元の取り組みはそこで暮らす方はもちろん、私を含め多くの人が勇気づけられると思います。

各地にある日本酒の酒蔵は、それぞれの風土が育んだ自慢の味であり、文化でもあります。震災の被害を乗り越えて、ここが元気になると、地域の振興にもいい影響を与えると思います。

ただ、日本酒の国内消費の伸びが期待できない中、成長を海外に求めていく必要もあります。日本食の世界的な人気と相まって、日本酒もまた海外で注目されているこのタイミングをしっかり生かして欲しいと感じています。

堤キャスター:
海外でも「SAKE」という呼び方で、日本酒を楽しむ方が広がっているようですね。

エコノミスト・崔真淑さん:
実は、日本酒の輸出額は2022年度まで13年連続で過去最高を更新しています。とりわけ、アメリカと中国向けの輸出が飛び抜けて多いです。

2023年度は中国向けの輸出が減ったことで、いったんブレーキがかかった形にはなっていますが、今後の成長は新たな市場の開拓にかかっていると感じています。なかでも有望視されている国の一つにインドがあるんです。

成長期に富裕層から浸透する食文化

堤キャスター:
どうしてインドなんでしょうか。

堤キャスター:
急激な成長とともに、株価も好調とあって、とにかく世界からも注目されているインド。経済成長によって、当然、富裕層のボリュームが増えるため、新しい海外の食品、アルコールもまた、消費量は増えることになります。

日本が高度経済成長期にウイスキーやワインが普及したことを思い出してほしいんです。いまインドも同じように、消費者のアルコールの選択肢が広がっています。インドでは、日本食レストランの浸透だけでなく、地元の料理にも合うと日本酒に注目する動きが出ているんですね。

ジェトロやインドにある日本大使館も、日本食や日本酒の普及に力を入れています。今後は、日本酒だけでなく、麹に関する日本食なども注目されていくことを期待したいです。

堤キャスター:
日本酒はその名の通り日本の文化でもあり、作り手の想いが詰まった逸品でもあります。日本酒をきっかけに、多くの方が笑顔になれるような試みに今後も期待したいです。
(「Live News α」5月20日放送分より)

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