『虎に翼』仲野太賀「全てが正しい人間はいないから」 寅子が初めて優三に抱いた恋心

裁判に勝訴したものの、両国満智(岡本玲)が嘘をついていたことが明らかとなり、落ち込む日々を過ごしていた寅子(伊藤沙莉)。そんな寅子に優しく手を差し伸べてくれたのは優三(仲野太賀)だった。『虎に翼』(NHK総合)第37話では、ついに寅子に嬉しい知らせが届く。

太平洋戦争が勃発し、直言(岡部たかし)の工場では「兵は戦線我等は国債」「戦士の花は銃後で實る」といった言葉が掲げられていた。いわゆる軍需景気のおかげで、軍からの注文が絶えない状況で直言は大忙しだった。男は戦地へと赴き、女は工場で働く。太平洋戦争以前より、男女の棲み分けが明確になっており、ますます女性は自分の立場を考えて行動しなければならなかった。

その頃、はる(石田ゆり子)からおつかいを頼まれた寅子は、直言の工場へと向かう。落ち込んでいる寅子を見かねた優三(仲野太賀)は、寅子を川へと誘い、当時としては貴重だったチキンを2人で食べることにした。優三は「全てが正しい人間はいないから」と寅子を励まし、「みんないい面と悪い面があって、守りたいものがそれぞれ違う。だから法律があると思うだよね」と常に正しくあろうとする寅子を優しく肯定する。社会的信用を得るために優三と結婚した寅子だったが、優三の優しさは寅子に恋心を抱かせた。それにしても、顔を見合わせながら「美味しい」とチキンを頬張る2人を見ていると、戦時下であることを忘れさせてくれる。

その夜、「どんな弁護士になりたかったの?」という寅子の質問に、優三は弁護士になったらやりたかったこととして「法律の本を出したかった」と夢を語った。その話を聞いた寅子は「有名弁護士佐田寅子を育てた佐田優三の法律教本なんてどう?」と笑顔を見せる。これまでずっと難しい顔をしていた寅子が見せる笑顔。彼女にとって、優三は心を許せる唯一の存在となっていた。

しばらくして、寅子の妊娠が発覚。猪爪家は喜びに包まれるが、寅子は毎日体がだるくて仕事に身が入らない。そんな時、寅子は偶然居合わせた久保田(小林涼子)から、弁護士の仕事を辞めて夫の実家がある鳥取に家族と移り住むことになったと告げられる。女子部1期生のリーダー的存在で、毅然とした振る舞いで牽引してきた久保田からのまさかの宣言に驚きを隠せない寅子。さらに中山(安藤輪子)も弁護士を辞めることを検討しているという。女子部出身の仲間たちで残されたのはもう寅子しかいない。辞めていく2人を思いも背負って、より一層仕事へと打ち込む寅子は新たな依頼を引き受ける。

心配なのは寅子がすでに妊娠しているということだ。今までの寅子だったら責任を感じてこれまで以上に仕事を優先していただろうが、妊娠している体ではそうはいかない。寅子ならばいくぶん無理をしそうな気もするのだが、今は隣に優三がいるから少しは安心して見ることができる。

一方で、再び高等試験に不合格となってしまったよね(土居志央梨)も気になるところだ。余談ではあるが、『あさイチ』(NHK総合)のゲストに土居志央梨が登場すると、X(旧Twitter)では「よねさんの中の人」がトレンド入り。「確認ですけど『あさイチ』に来られたということは、そろそろ退場が近いみたいな、そういうのがあるんですけど……」という博多大吉に対して、「あくまでも都市伝説ということで」と笑顔を見せていた土居。あくまでも都市伝説ではあるものの、寅子とよねが2人揃って見られるのもあとわずかなのかもしれない。
(文=川崎龍也)

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