ル・マンでドルゴヴィッチを起用するAXR、正規の“助っ人”トム・ブロンクビストの欠場理由を説明

 アクション・エクスプレス・レーシング(AXR)で第3ドライバーを務めるトム・ブロンクビストは、今季2024年のル・マン24時間レースへの出場を断念した。これは、彼がNTTインディカー・シリーズのテストに参加するためである、と同チームのレース・オペレーション・ディレクターであるクリス・ミッチャムは語った。

 ウェーレン・エンジニアリング・キャデラック・レーシングのバナーの下、2023年シーズンのIMSAウエザーテック・スポーツカー選手権でIMSA GTPクラスのチャンピオンに輝いたAXRは、自動招待枠によって出場権を得たル・マン24時間レースで2022年のFIA F2チャンピオンであるフェリペ・ドルゴヴィッチをサードドライバーとして迎え、23歳のブラジル人がフルタイムドライバーのピポ・デラーニ、ジャック・エイトケンとともに、キャデラックVシリーズ.Rをドライブすると発表した。

 アクション・エクスプレスのサードドライバーとして、デイトナ24時間やセブリング12時間、プチ・ル・マンなど計5レースから成る“ミシュラン・エンデュランス・カップ”の大半に参戦しているブロンクビストも当初は候補に挙がっていたが、生憎2022年のIMSA DPiチャンピオンドライバーはインディカーの仕事とスケジュールが重なっていた。

 ミッチャムはSportscar365に対し「我々はサードドライバーが必要だったが、トム(・ブロンクビスト)は明らかに忙しい」と語った。

「トムのフルタイムの仕事はインディカーだ。だから、彼を我々が引っ張るたびに、何かを奪っているんだ。何よりも、お互いの合意だったと思う」

 2024年のル・マンのテストデーはロード・アメリカでのインディカーのレースと衝突している。これに加えて、Sportscar365はブロンクビストが他のインディカードライバーたちとともにミルウォーキーでのハイブリッドのテストを確約しており、それがサルト・サーキットでの時間をさらに削ることになると理解している。

「彼らはかなり重要なテストを控えている」とミッチャム。

「ル・マンにはインディカーのドライバーも来るだろうが、そのテストから充分な周回数を稼ぐためのロジスティクスが……」と彼は説明する。

「テストのタイミングが問題だ。多くのドライバーはル・マンのテスト前の木曜日か金曜日にテストに参加するだろうが、そのテストを受けるのであれば、(ル・マンの)テストデーが終わるまで(フランスに)入れない」

「もし何かがうまくいかず、マシンで周回を重ねることができなかったとしたら、それは必要以上のストレスだ」

「トムがやりたがっていたのは知っているし、彼を起用したかったよ。でも、フェリペ(・ドルゴヴィッチ)にもとても満足している」

 ブロンクビスト本人はさらにこう付け加えた。

「チームが僕にやらせたかったのは明らかだ。僕はデイトナとセブリングを走ったけど、僕にとって正しいのはインディカーのシーズンに集中することだ。シーズン中は激しい日程だから、まずはこのインディカーに集中するんだ」

 ミッチャムは、先月ウェザーテック・レースウェイ・ラグナ・セカでチームとキャデラックVシリーズ.Rのテストに臨んだドルゴヴィッチを高く評価している。

「素晴らしいものになるだろう。彼はアメリカで少しだけマシンに乗ったんだ。ラグナ・セカで我々と一緒にテストをした」

 ル・マンを欠場することになるブロンクビストは、シーズン終盤にインディアナポリス・モーター・スピードウェイとミシュラン・レースウェイ・ロード・アトランタで行われる2024年シーズン最後のエンデュランス・カップの2レースでチームに復帰する予定だ。

インディカーのテストを優先し、ル・マンへの出場を見送ったトム・ブロンクビスト
アストンマーティンF1チームのテスト兼リザーブドライバーを務めているフェリペ・ドルゴヴィッチ

■二度目のル・マンに向け、準備は万端

 ノースカロライナを拠点を置くアクション・エクスプレスは前述のとおり、昨年IMSA GTPクラスチャンピオンに輝き“世界三大レース”のひとつであるフランスの耐久クラシックイベントへの招待権を獲得した。

「ル・マンに向けては本当に良い状態だ。チーム全体のコンフォートレベルも高いしね」とミッチャムは語る。

「以前は観客の立場からル・マンを見ることができたし、それもとても良かった。だが、復帰組の多くが自分たちがこれから何をしようとしているのかを知っていることは大きなメリットだ」

「もちろん、準備のレベルは高い。昨年は最初の1周がうまくいかなかった(マシンのフロントを大きく壊すクラッシュを喫した)けど、挽回してフィニッシュすることができた」

「私たちの準備はさらに細部にまで渡り、より高いレベルになっている。すべてのボルト、ナット、ワッシャー、必要な部品、私たちに欠けていると考えられるものは何もない。IMSAのレースと変わらないよ。いつもトライして改善を繰り返している」

「準備の面では全体的に強くなっているけど、去年だってかなり良い状態だったんだ。ただ、もう一度やれば、もう少しうまくできるようになるんだ」

 ミッチャムによると、先月ラグナ・セカでシェイクダウンを終えたル・マン用のシャシーは5月20日にフランスへ空輸される予定だという。

 このシャシーは第2戦セブリング12時間でのデラーニのクラッシュによって損傷したあと、同レースでチームのIMSA用スペアシャシーに回されたものだ。ミッチャムによればこのマシンは修復され、ル・マン後はデトロイトとワトキンス・グレンで開催されるウエザーテック選手権でバックアップシャシーとして使用される予定だという。

1周目にクラッシュを喫してピットへと戻るアクション・エクスプレス・レーシングの311号車キャデラックVシリーズ.R
IMSA第2戦セブリング12時間で、トム・ブロンクビストがドライブした31号車キャデラックVシリーズ.R(ウェーレン・エンジニアリング・キャデラック・レーシング)

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