定年後も働くつもりですが「再雇用」「再就職」どちらを選んでも、収入が大きく減ります。その分「給付金」を受け取れると聞いたのですが、どのくらい給付されますか?

定年後に継続雇用・再就職したらどんなお金がもらえる?

定年退職した後も働く場合、大きく分けて継続雇用と再就職の2通りの選択肢があり、どちらを選ぶかによって収入減を補う制度が変わってきます。

<継続雇用を選んだ場合>

・高年齢雇用継続給付:継続雇用を選び、給与月額が60歳定年前の収入と比べて75%以下に下がり一定の条件を満たす場合に給付金が雇用保険から給付される制度です。

60歳時点の給与の61%以下に減少した場合は、給与月額の15%相当額(非課税)が65歳になる月まで支給されます。

もらえる人の条件は、60歳時点で5年以上雇用保険に加入しており、継続雇用後も雇用保険に加入している人のうち、60歳時点での給与月額からの75%以上減少している(給与月額が上限金額48万6300円以上だと対象外)・継続雇用後の給与月額(支給限度額)が37万452円未満であることです(上限金額と支給限度額は毎年8月に改定され、令和5年8月時点での金額です)。

<再就職を選んだ場合>

・失業給付(基本手当):再就職のために求職活動した場合に雇用保険から給付される制度で、定年退職で雇用保険に加入していた期間が20年以上ある人は150日間受け取れます。

・高年齢再就職給付金:60歳以上65歳未満の人で、失業給付の給付期間が100日以上残っており、再就職先での給与が失業手当日額30日分の75%未満の場合だと原則2ヶ月ごとに支給されます。

・再就職手当:失業給付の期間が3分の1以上残っていて、1年を超えて雇用される安定した職業に就いた場合に給付日数の3分の2以上が残っていると70%、3分の1以上残っていると60%が支給対象になります。

高年齢再就職給付金と再就職手当は両方受け取ることはできず、どちらかを選ぶ必要があります。

高年齢雇用継続給付は、いくらもらえる?

それでは、60歳定年退職後に継続雇用されて給与が大きく減った場合に高年齢雇用継続給付はいくらもらえる見込みになるのかシミュレーションします。

・60歳定年時の給与月額45万円で、継続雇用で給与月額26万円に減少したAさん(配偶者あり・賞与などは含まず)のケース

60歳時点での給与月額45万円-(厚生年金保険料4万260円+健康保険料2万6004円+雇用保険2700円+所得税1万350円+住民税1万9308円)=手取り月額約35万1378円

雇用継続後での給与月額26万円-(厚生年金保険料2万3790円+健康保険料1万5366円+雇用保険1560円+所得税3208円+住民税7125円)=手取り月額約20万8951円

Aさんは雇用継続によって給与が定年前と比べて約57%に減少したため、高年齢雇用継続給付金の要件である「75%未満への低下」を満たし、そして「61%以下」にも該当するので、再雇用後の給与月額の15%相当額(月額約3万9000円)が受け取れます。

再就職するといくらもらえる?

それでは、定年前の給与と再就職後の給与が前記のAさんと同じ場合では、再就職するといくらもらえるのでしょうか。

__60歳時点の給与月額45万円÷30日=日額約1万5000円

再就職での給与月額26万円÷30日=日額約8666円(定年前の約57%へ減少)

再就職での給与月額26万万円×15%=月額約3万9000円__

再就職した日の前日において失業手当の残日数が100日以上のときは最大1年間支払われます。

__60歳時点の給与月額45万円÷30日=日額1万5000円

日額1万5000円×45%=失業手当日額6750円__

支給期間150日のうち、再就職して残日数が120日ある場合は失業手当日額6750円×残日数120日×70%=約56万7000円が一括支給され、残日数が60日ある場合は失業手当日額6750円×残日数60日×60%=約24万3000円が一括支給されます。

まとめ

定年後の継続雇用・再就職のどちらかを選ぶときに、収入減少が一定割合以上だと公的な給付金を受け取れます。それぞれの支給方法なども異なるので、メリットが大きいのはどの制度か検討してから選ぶことが望ましいでしょう。

出典

厚生労働省 Q&A~高年齢雇用継続給付~
厚生労働省 高年齢雇用継続給付・介護休業給付・育児休業給付の受給者の皆さまへ 令和5年8月1日から支給限度額が変更になります。
厚生労働省 雇用保険の基本手当(失業給付)を受給される皆さまへ 雇用保険の基本手当日額が変更になります

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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