64歳の会社員です。年金は「200万円」が見込み額ですが、受け取りを70歳まで遅らせると、どれだけ「お得」になりますか? まだしばらく働く予定です

年金の受け取り開始を繰り下げている人の割合は?

厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業年報」において、令和4年度末での老齢厚生年金繰下げ受給者は年金受給者全体(2804万5102人)の1.3%(37万4481人)で、繰上げ受給者率は0.7%(20万6757人)でした。

平成30年度での繰下げ受給者は0.7%、繰上げ受給者率は0.3%で、繰上げと繰下げ受給者ともに毎年少しずつ増加している傾向です。

年金の受け取り開始を早める・遅らせることで年金額はどれだけ変わる?

公的年金の受給開始年齢は原則65歳からで、受給開始を早める繰上げ受給は最大60ヶ月前の60歳まで繰上げ可能ですが、1ヶ月あたり0.4%ずつ年金が減額されて支給されます。

受給開始を66歳以降に遅らせる繰下げ受給は、最大120ヶ月先の75歳まで繰下げ可能で、1ヶ月あたり0.7%ずつ年金額が増額されて支給されます。

なお、現在の年金額増減率は令和4年度の年金制度改正で決定されました。

繰上げの減額率は0.5%から0.4%へ引き下げられ、繰下げ可能期間が70歳から75歳まで引き上げられたため、年金受け取りを先延ばしするほうが年金額を多く受け取れるようになったのです。

70歳で年金を受け取り開始したほうが良い?

それでは、65歳で年金受け取りを開始せずに70歳で年金受け取りできるように繰下げ申請を行ったほうが良いのでしょうか。

会社員など厚生年金に加入している人は、65歳時点で老齢基礎年金と老齢厚生年金の2つを受け取れ、老齢基礎年金・老齢厚生年金のどちらか、または両方を繰り下げることが可能です。

それでは、年金受給を70歳まで繰り下げた場合での増額見込み金額をシミュレーションします。

<試算>

65歳時点で老齢基礎年金を令和6年度の満額81万6000円(月6万8000円)+老齢厚生年金(報酬比例部分)を120万円(月10万円)=合計約201万円もらえる予定のAさんのケース

(1)老齢基礎年金だけ70歳まで繰り下げた場合

満額81万6000円×(増額率0.7%×60月)=増額見込み年額34万2720円

(2)厚生年金だけ70歳まで繰り下げた場合

老齢厚生年金120万円×(増額率0.7%×60月)=増額見込み年額50万4000円

(3)両方を70歳まで繰り下げた場合

老齢基礎年金増額見込み年額34万2720円+老齢厚生年金増額見込み年額50万4000円=約84万6720円(月あたり7万560円)

このように65歳で年金を受け取り始めるよりも、5年間で約84万6720円(42%)の増額となる試算になりました。

注意しておくべきポイントは?

年金の繰下げ受給を希望するときに注意しておくべきポイントは「老齢年金の請求を先に行うと、繰下げ受給ができなくなる」ことです。

年金繰下げ増額の計算は65歳から始まりますが、66歳になる前に繰下げ請求ではなく年金受け取り請求をすると「65歳時点での請求が遅れていた」とみなされて、増額されない本来の年金額での年金支給が始まってしまいます。

そして、65歳以降も働き厚生年金に加入し続けて年金額と月給の合計が50万円を超えると老齢厚生年金が減額される「在職老齢年金」で減額された部分は繰下げ増額の対象外なので、繰り下げることでもらえる年金額よりも少なくなるケースもあります。

まとめ

65歳からの年金は、老齢基礎年金・老齢厚生年金どちらか、または両方を繰り下げることが可能です。70歳まで繰り下げた場合には本来の年金額よりも42%の増額となります。

年金受給を先に請求すると繰下げ請求ができなくなることと、65歳以降も働いて一定金額以上の収入を得ていると繰下げ請求での年金額よりも少なくなるケースもあるため、繰下げ請求を希望する場合は早めに年金事務所や専門家に相談することが望ましいでしょう。

出典

厚生労働省 厚生年金保険・国民年金事業年報 令和4年度
厚生労働省 令和4年度の年金制度改正
日本年金機構 令和6年4月分からの年金額等について
日本年金機構 年金の繰下げ請求
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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