毎月「年金14万円」と、仕事で「24万円」の収入があります。24年度から“年金が削られない給与額の範囲”が上がったって本当ですか?

60歳以降も働いている人はどの位いる?

60歳になっても、生活費を稼ぐためや社会とのつながりを保ち続けるためなどさまざまな理由から、再雇用やアルバイトなどで働き続ける人が増えています。

総務省統計局「労働力調査(基本集計)2023年平均結果の概要」によると、就業率(人口に占める就業者の割合)において、60歳から64歳の男女計で2013年の58.9%が2023年には74.0%と大きく上昇し、65歳から69歳の男女計では、2013年38.7%に対して2023年で52.0%と増加しています。

年金が削られない給与額の範囲はいくら?

働いて厚生年金に加入しながら給与をもらっている人が受け取る老齢厚生年金を「在職老齢年金」といいます。老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額と、総報酬月額相当額の合計が一定金額を超えると、厚生年金の月額が減額または支給停止されますが、これを「支給停止調整額」といいます。

支給停止調整額は、23年度は48万円だったのが、24年度には24年6月支給の年金から50万円に引き上げられました。それでは、今回のケースの人が厚生年金を満額受け取れるのか試算してみましょう。

__毎月の賃金(標準報酬月額)24万円\+ (1年間の賞与額)72万円÷12=総報酬月額相当30万円
老齢厚生年金(基本月額)14万円+総報酬月額相当額30万円=44万円__

支給停止調整額50万円を下回るため、老齢厚生年金は減額されずに受け取れます。

給与が高い会社役員の場合は?

会社役員などで働いており給与が高いケースでは、老齢厚生年金が削られる可能性があります。支給停止調整額50万円を超えている場合、厚生年金支給額がどのくらい削られてしまうのか試算してみましょう。

__・老齢厚生年金(基本月額)18万円+総報酬月額相当額40万円=58万円
・支給停止調整額50万円を超えているため、以下の計算式を使って年金が減額されます。
(58万円-支給停止調整額50万円)÷2=4万円
・老齢厚生年金(基本月額)18万円-減額4万円=老齢厚生年金支給見込み月額14万円__

老齢厚生年金(基本月額)18万円が14万円に減額されるため、年間では48万円を受け取れない見込みになりました(老齢基礎年金は減額されません)。

厚生年金に加入可能なのは70歳までで、70歳になると厚生年金保険料の負担はなくなりますが、働き続けると年金の支給調整だけは引き続き行われるので注意が必要です。

この減額は生涯続くわけではなく、総報酬月額相当額が変わった月または退職日の翌月から支給停止額が変更されます。

まとめ

60歳以上で働いて厚生年金に加入し給与をもらっている人が受け取る老齢厚生年金を「在職老齢年金」といい、年金額と給与額の合計によっては年金の一部または全額が支給停止となります。その支給調整対象となる金額が24年6月支給の年金から50万円に引き上げられました。

減額や支給停止を避けたければ、現在受け取っている年金月額と総報酬月額相当額の合計を確認して、仕事を調整する必要があります。

出典

総務省統計局 労働力調査(基本集計)2023年平均結果の概要
日本年金機構 在職老齢年金の計算方法

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

© 株式会社ブレイク・フィールド社