両手はズタズタ、骨盤を骨折…手術で一命をとりとめ 両手がなくなった猫を同居猫が助け合うように

メンバー宅にも慣れたあっちゃん=NPO法人ねこけん提供

半身不随だった猫

亀さんにご挨拶=NPO法人ねこけん提供

あっちゃんは保護時には両手の先がズタズタになっていて、下半身不随で自力排泄不可能と言われていた。後に、骨盤骨折していたことが原因と分かった。あっちゃんは猫の愛護団体NPO法人ねこけんのメンバーの自宅で手厚いケアを受けながら目覚ましい回復を遂げた。後ろ脚で歩きはじめ、自力排泄ができるようになったという。

「みんながあっちゃんの回復力、順応力の高さに驚きました。高い所にも登れるようになり、カメさんとも仲良くなり、『天才猫』とねこけん内で認定されました。」

両腕を切断

尻尾の先と手の先を切断==NPO法人ねこけん提供

あっちゃんは去勢手術を受けたのだが、その時に、壊死していた尻尾の先を切る手術も受けることになった。

「あっちゃんの両手には、フォークや熊手のような物で繰り返した叩かれたような傷がいっぱいありました。尻尾の先の壊死以外にも複数の傷痕ががあり、虐待も疑われましたが真相は闇の中です。」

メンバーのペット、コロナちゃんと仲良しに=NPO法人ねこけん提供

あっちゃんは手術を受けて両手の先を失った。

遊びたいな・・・=NPO法人ねこけん提供

無事去勢手術を終えたあっちゃん。メンバー宅に戻るともりもりごはんを食べて、うとうと眠り始めた。その横では、メンバーの愛犬コロナちゃんが添い寝。どうやらコロナちゃんはあっちゃんが傷を舐めないように見守ってくれていたようだ。

砂をかけたいがかけられない=NPO法人ねこけん提供

その後、高いところからジャンプできるようになり、順調に回復したように見えたあっちゃん。やはり激しい運動には耐えられないようで、患部がただれてきた。

「患部を布で覆ってみたり、綿で包んでみたり、色々と試してみましたが決定的な改善は望めず。あっちゃんも痛むようでした。獣医師とも相談の結果、負担がかかっている患部の上から切断することになりました。」

2018年5月、あっちゃんは先住猫のいる家庭に迎えられた。ただ、他の子がトイレで砂をかけてもあっちゃんは砂をかくことができない。他の子が顔を洗ってもあっちゃんは顔を洗うことができない。他の子が両手でボールをつかんで転げ回っても、あっちゃんにはボールをつかむ腕がない。他の子勢いよく走り回って遊んでもあっちゃんは追いつけない。

あっちゃんのママさんは言う。

「あっちゃんが無い両腕で砂をかけている姿。みんなと遊びたいけど追いつけない時の表情。それを見て、あっちゃんの両腕を奪った人間はなんて思うんでしょうか?でも、猫や弱い者を痛めつけて快楽に浸ったり憂さ晴らしをするような人間には何も響かないでしょうね。」

一緒に暮らす猫たちは、あっちゃんがトイレをした後に砂をかけてくれる。猫達は、両腕が無いとか片脚が無いとか障害があるとか自分と色が違うとか、考え方ややり方が違うとか、そんなことで仲間外れにしない。お互いに助け合い、一緒に平和に過ごそうとする。

あっちゃんママさんは、あっちゃんが後ろ脚だけで身体を支えているので、将来腰を痛めるのではないかと心配している。東洋医学で負担を和らげることができないか考えてくれているという。将来のことまで考えてくれる家庭に迎えられたあっちゃん。もう不安も何もない。これからは快進撃を続けるだけだ。

(まいどなニュース特約・渡辺 陽)

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