「火の玉どころか火だるま」岸田首相、森元首相の再聴取「考えていない」に「国民を馬鹿にしすぎ」集まる怒り

5月20日、衆院予算委員会で立憲民主党の野田佳彦元首相(左下)の質問に答弁する岸田文雄首相(写真・時事通信)

5月20日、衆院予算委員会で岸田文雄首相は、自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件への関与が指摘されている森喜朗元首相への再聴取はしないと明言した。立憲民主党の野田佳彦元首相への答弁。

岸田首相は4月上旬、森氏に直接、電話で聴取したが、「直接、関与した証言は得られなかった」と述べていた。

だが、森氏は4月26日配信の月刊誌「文芸春秋」電子版のインタビューで、「体調はいかがですか」などと声をかけられたとしたものの、首相から政治資金問題について具体的な質問はなかったと証言していた。

野田氏は「これじゃ調査ではなく、ご機嫌うかがいだ」と指摘。「現首相と元首相のやり取りの受け止めが違えば、政治への不信感をあおる」とし、岸田首相に再聴取するよう迫った。だが、岸田首相はこう答弁した。

「国民の議論を踏まえて、不記載の慣行がいつから始まったかなどを私自身が森元首相に直接、うかがった。そのうえで、森元首相の具体的な関与は確認できなかった。政倫審の弁明等でもおこなわれてきたが、推測の域を超えて具体的な関与の確認はできていない。再聴取などは考えていない、と思っている」

これに対し野田氏は、「(再聴取を)やらないというなら、しょうがない」として、森氏の国会への参考人招致を求めた。

森氏は1998~2000年、2001~2006年の間、清和政策研究会(安倍派)の会長をつとめた。安倍派幹部の一部が「キックバック再開の判断に森元首相が関与していた」と証言したとも報じられており、裏金事件のキーパーソンとされる。

岸田首相はこれまで、森氏の聴取について「最大限の協力を得る観点から、やりとりの内容等を明らかにすることはしないという前提でおこなった」、「私の責任で聞き取り調査をおこなった。記録はない」などと答弁。だが、岸田首相の聴取以降も、森氏の関与をうかがわせる証言が相次いでいる。

5月15日には、下村博文元文部科学相が国会内で講演。安倍派の政治資金パーティー裏金事件について、「2005年、森派のときにあったことは明らかだ」と指摘。「国民が納得できるような聴取をし、真相究明をする必要がある」と、岸田首相に森氏への再聴取を訴えた。

5月18日には、自民の片山さつき政調会長代理が、札幌市内で開いた支持者との会合で、裏金問題について「森喜朗元総理から『政界には前からあった慣行だ』と言われた。(安倍派が)やめなかったのは問題だが、それまでにやめていた派閥は全部、セーフですから」と述べたと、共同通信が報じている。

岸田首相が森氏への聴取について、あいまいな答弁を繰り返したうえ、「再聴取などは考えていない、と思っている」と答弁したことに、Xでは批判的な声が殺到している。

《これが、岸田首相が啖呵を切った、「私が前線に立って」「火の玉になって」といった発言の実態。「火の玉」どころか、「火だるま」じゃないか!》

《国民を馬鹿にし過ぎだろ》

《何の努力もせず、とぼけた顔で白々しい答弁を繰り返す岸田首相、潔く身を引くこともなく権力にしがみつき醜態を晒し続ける、もう潮時ではないのだろうか…》

岸田首相は、2023年12月の記者会見で「国民の信頼回復のため、火の玉となって党の先頭に立ち、取り組む」と強調していた。だが、宣言どおり「火の玉となって」森氏の再聴取をするつもりはさらさらなさそうだ。

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