トヨタ自動車やJR東海 決算会見で特徴的な言葉は 「円安」 私たちの生活への影響は

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東海地方の上場企業の24年3月期決算がでそろいました。主要28社は3月期決算でどんな言葉を頻繁に使ったのでしょうか。決算発表会見で出た言葉に注目します。

決算の会見録から単語ごとに分けて分析した結果、1年前の決算に比べ、倍近く使われた言葉が浮きあがりました。それが「円安」です。中日BIZナビ編集部の大森準編集長に話を聞きました。

「円安」の言葉は決算会見で2倍近く使用

――2024年3月期の決算で特徴的な言葉は「円安」とのことですね。

中日BIZナビ編集部 大森準編集長:
「決算の会見で『円安』が使われた頻度は、2023年3月期の1万語当たり3.5回から2024年3月期は6.5回へ2倍近くに上昇しました。円相場を振り返ると、乱高下しながらも2023年3月末には1ドル=151円台の円安水準に。決算会見が開かれた4月下旬には一時160円台に到達し、記者からの質問も相次ぎました」

――東海地方の企業はこの円安で、どんな影響を受けたのでしょうか。

「トヨタ自動車の決算で宮崎洋一副社長は『為替変動の影響により6850億円の増益』と話し、円安の効果を説明しました。トヨタは1ドルが1円円安になると、営業利益が500億円程度押し上げられる効果があります」

トヨタ自動車の2024年3月期の連結決算は売上高が45兆953億円と前期比21.4%増加。営業利益は5兆3529億円と前期比96.4%も増えていて、過去最高に達しました。

2023年度の平均為替レートは、前年度よりも10円円安となる1ドル145円です。ドルだけで4700億円も営業利益が上振れ、ユーロでも1450億円の増益。自動車に代表される輸出産業にとっては円安の恩恵が大きかったといえます。

旅行・観光関連業界はプラスに 新幹線の外国集客が増加

――輸出産業以外でも、円安がプラスに働いた企業はありましたか。

「旅行・観光関連の業界はプラスに働きました。JR東海・丹羽俊介社長は『インバウンドの客が(2018年度比で)186%と大変伸びてきている。これはやはり円安が影響していると捉えている』と話します。

コロナ禍からの回復に加え、円安の追い風となって新幹線の外国集客が増えたことが増益に働いています」

――反対に円安がマイナスに働いた業界について教えてください。

「輸入業者にとって、円安はコストの増加に直結します。中部電力からは過度な円安を懸念する声が上がっているんです。中部電力の林欣吾社長は『これまで経験したことがないような円安水準。我々輸入業者、あるいはそれに基づいてお客さまの価格を決定している事業者にとっては、価格は上がっていく方向になる。コスト上昇の要因となっているので、もう少し先を注視していく必要がある』と話しています」

電気代は値上げが見込まれる

――円安は私たちの生活にはどんな影響を与えますか。

「物価変動を考慮した1人当たりの実質賃金は、5月発表された3月分まで24カ月連続でマイナスとなっています。私たちの生活はじわじわと厳しくなっていると言い換えてもいいかもしれません。2024年の春闘では大企業を中心に賃上げが相次ぎましたが、その結果が反映されるのはこれからです」

――企業からはどんな声が上がっていますか。

「スーパーやドラッグストアを展開するバローホールディングスの小池孝幸社長は『今期に入ってから、客の消費動向が変わってきている』と話しています。消費者の財布のひもが堅くなっているため、食品メーカーが値上げする中でも、価格を据え置いたり、割安なプライベートブランド、自社商品をアピールしたりして消費者をつなぎ留めるそうです」

日本と海外の金融政策の違いから、円安基調はしばらく続く見通しです。消費者にとっては商品が価格に見合っているのか、見極めることが重要になります。大森編集長は「しっかりとお金を使う場面と、節約する場面のメリハリをつけていくことも大事」と話しました。

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