精巧さに思わず息をのむ戦国時代の文化財「曾侯乙尊盤」―中国

「曾侯乙尊盤」を目にした多くの人は、その精巧さを極めた作りに思わず息をのんでしまうことだろう。

「曾侯乙尊盤」を目にした多くの人は、その精巧さを極めた作りに思わず息をのんでしまうことだろう。あまりにも緻密な作りであるため、3Dスキャンを使ってモデリングすることもできないこの文化財は、約2400年前の戦国時代の職人の手によって作り出された。

尊盤は盛酒器の「尊」と水を注ぐための器「盤」を組み合わせた文化財だ。冬に「盤」に熱湯を注ぐと、「尊」の中の酒を温めることができる。一方、夏には「盤」に氷を入れて、「尊」の中の酒を冷やすことができる。このように冬にも夏にも使える大きな魔法瓶のような用途で使用される。

「盤」の裏には、戦国曾の君主「曾侯乙」が最後まで使っていたことを意味する「曾侯乙作持用終」という銘文が刻まれている。研究により、この銘文は、曾侯乙がこの「尊盤」を最初に使った人ではなく、曾侯が3代にわたって使ったことを示していることが分かっている。「尊盤」は、曾侯乙のお気に入りの一品で、先代が使っていたものを受け継ぎ、自分の名前を刻み直して、死後も副葬品として埋葬されたとみられている。

「尊」の口周りの装飾は、遠くから見ると雲の形にも見えるが、実際には絡み合っているたくさんの竜と蛇からなる「鏤空(透かし彫り)」状の装飾となっている。「尊」の首の部分には、こちら側を向いて舌を出し、上に向かって這い上がるヒョウ4頭がデザインされている。ヒョウの体にも透かし彫りで竜や蛇がデザインされている。「尊」の胴の部分や腰の部分には竜が絡み合って唐草状になったものを文様化した「蟠螭文」や竜のレリーフがデザインされている。「尊」全体になんと竜が28頭、蟠螭が32頭もデザインされている。「盤」も複雑な作りで、四つの取っ手にも無数の竜や蛇の透かし彫りの装飾があり、その下には透かし彫りの夔竜が8頭デザインされている。「盤」の足は4頭の双身竜の立体彫刻からなり、「盤」の竜は計56頭、蟠螭は48頭にもなる。そして「尊」の口から「盤」の足に至るまで、蟠虺(縮こまった小さな蛇、青銅紋飾の一種)が1000匹以上もデザインされており、細部まで丁寧に装飾が施され、思わず息をのむほどの素晴らしい作品となっている。

「曾侯乙尊盤」は非常に複雑な上、精巧な作りで、特に透かし彫りの装飾が至るところに施されている。そして、表面は全て独立していて、互いに連結しておらず、銅の棒だけで支えられている。科学的鑑定により、「曾侯乙尊盤」は渾鋳や分鋳、溶接、失蝋法といった数多くの技術が駆使されており、尊には34のパーツ、盤には38のパーツがあることが分かっている。また、56カ所と44カ所を鋳造、溶接して一体にしており、パーツがこれほど多く、これほど多くの部分が溶接されている文化財は非常に珍しい。蝋原型を溶かして鋳型を製作する「失蝋法」は、「尊」と「盤」の口の透かし彫りの装飾に採用されており、2000年以上前に中国ではすでにこの技術を採用して青銅器が鋳造されていたことを裏付けている。そして、非常に高い鋳造技術を駆使して、造形美が素晴らしい作品が作られていたことが分かる。(提供/人民網日本語版・編集/KN)

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