マイナンバー提出後の確定申告 会社に副業がバレるケース

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確定申告期のサラリーマンやOLの関心事は、マイナンバーの導入で「副業はバレるのか?」ということ。副業先からはマイナンバーの提出を求められ、もし提出してしまうと、自動的に本業の会社にも連絡が行ってしまうのではないかという懸念があるようだ。さて、マイナンバーと副業税務は一体どうなっているのか。

今夜は、久しぶりに銀座のクラブで一杯。
「こんばんは、楓です。よろしくお願いします」。
「あれ、最近入店したの。始めて見る顔だね」。
「入店して半年以上経ちますよ。OLなんで、仕事が忙しいときはなかなか入れないですよ。年末は忙しかったし・・・」。
ネオン街での挨拶としては、よくありがちな会話だ。
「どんなお仕事されているんですか?」。
「税金関係のマスコミ。インターネットで税金などに関係するニュースとか配信しているだ」
「えー、難しそうなお仕事ですね。そうそう、お店からマイナンバーを提出してくださいと言われているですが、提出したら会社にバレませんかねぇ。この仕事が会社にバレるとまずいんですよ」。

先日、飲みながら、こんな会話のやり取りがあった。確定申告前のこの時期、副業とマイナンバー問題で不安になっているOLやサラリーマンは多いようだ。この話題になったら、他のホステスさんも興味津々。かなり場が盛り上がった。皆、マイナンバーを提出すると、自動的に会社の経理にも連絡が入ってしまうのではないかと懸念していた。

2カ所以上から給与所得があると注意

さて、この問題の回答だが、簡単なようで意外に厄介だ。というのも、就業形態で違ってくるからだ。副業先が会社のケースで、本業の会社以外からも給与所得をもらっているとほぼバレルだろう。つまり、2カ所以上で給与所得があるかないかが大きなカギを握っている。これが、雑所得か事業所得ならバレにくい。
雑所得とは、たとえば、著述家や作家以外の人が受ける原稿料や印税、講演料、放送謝金などがそれに当たる。また、最近では、アフィリエイトの収入やインターネットオークションの売金(生活用動産は非課税)だったり、先物取引の所得、外国為替証拠金取引(FX)、金地金などを営利目的で継続的に売買しているケースもそうだ。年金なども雑所得になる。つまり、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも該当しない所得が雑所得となる(所得税法35条)。
雑所得は総合課税となっており、他の所得と合算されて総所得金額へ集約される。ただし、先物取引および外国為替証拠金取引(FX)の取引所取引の場合は、所得税15.315%、住民税5%の申告分離課税である。 平成24年度所得分からは、店頭取引のFXでも「先物取引に係る雑所得等」として、所得税15.315%、住民税5%の税率で課税されることとなった(申告分離課税)。
事業所得は、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得。ただし、不動産の貸付けや山林の譲渡による所得は事業所得ではなく、原則として不動産所得や山林所得になる。
事業所得の考え方は、その年の事業所得に係る収入から経費を控除した金額であり、青色申告者の場合は、さらに青色申告特別控除額を控除した金額となる。


住民税を自分で納付することがポイント

さて、副業収入が、なぜ会社にバレる可能性があるかというと、地方税の一つである住民税がポイントなのだ。会社は、毎月社員の住民税を給与から天引きし、その社員が居住している住所地の自治体に納めている。副業については、給与所得としての支払いであれば、原則、本業の住民税とあわせて特別徴収となることから、会社に副業分も含めた住民税の額が報告される。つまり、それをきっかけに副業がバレる可能性があるのだ。副業の金額が少なければ、会社の経理も気づかないかもしれないが、翌年の住民税が前年より極端に大きく膨らめば、まず目を付けられることは間違いない。就業規則で「副業禁止」という会社なら、それ相当の覚悟が必要となる。

給与取得でない場合であるなら、事業所得か雑所得なので、会社にバレない可能性が高い。ポイントは、確定申告の際の住民税の徴収の仕方だ。確定申告書には、住民税の徴収の仕方として、「特別徴収」か「普通徴収」の選択欄が用意されている。会社に任せず、副業の部分は自分で納税するという意思表示の「普通徴収」にサインすれば、会社にバレずに住民税を納税することができる。これを「特別徴収」にサインしてしまったら、本業の会社に副業の会社の住民税情報が伝達されてしまうので注意が必要だ。筆者の知人でも、確定申告時に誤って「特別徴収」を選択してしまったことから、上司に副業がバレてきつく絞られた者もいる。彼曰く「会社からではなく自分個人から特別に住民税を徴収してくれるのが『特別徴収』と思ってサインした。本業以上の稼ぎがあったから、上司位以上の住民税が発覚し会社にバレた」と言う。
さて、ネオン街の蝶であるホステスさん達だが、これも給与所得か否かでバレるかどうかのリスクが違ってくる。銀座のホステスのケースでは、ほとんどが個人事業主のケースが多く、確定申告しているのでバレることがない。

理解しておく必要があるのが、基本的にマイナンバー自体は直接的に副業をばらす制度ではないということ。総所得や税情報を把握するために設けられた制度と言うことだ。そのため、これまで確定申告義務がるのに無申告ならば、今後は確定申告せざるお得ないようになり、副業分の住民税の徴収方法がどうなるかによってはバレるケースがあるということだ。

KaikeiZine 2017.01.23公開より転載

宮口貴志

税金の専門紙「納税通信」、税理士業界紙「税理士新聞」の元編集長。現在はKaikeiZine編集長として活動する傍ら、KaikeiZineの運営組織である「租税調査研究会」の事務局長も兼任。税務・会計ニュースを独自の切り口でわかりやすく伝えている。

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