「中長期的な戦力」企業が高卒採用に熱視線 背景に労働人口の減少も課題は高い離職率

労働力不足を背景に高校生にとって「超売り手市場」が続いています。この春卒業した福岡県内の高校生の有効求人倍率は「3.70倍」で1987年の統計開始以来、過去最高となりました。

社会人のマナーや挨拶学ぶ

5月17日、福岡市博多区で開かれた合同研修会。

参加したのは、この春に高校を卒業して企業に就職した新入社員です。

1年前は何をしていたのか聞きました。

物流系企業に就職「私農業高校だったんですけど、実習でブドウを育てたりしてました」

IT系企業に就職「情報処理部に入部していまして、タイピングとかをしてました。ロボットのプログラミングとかを部活でしていました。」

飲料系企業に就職「高校生の頃は3年間ほとんどバイト尽くしで。自分に合う職業は何かなとか考えながらバイトを色々していました。」

研修会を主催したのは、高卒採用に特化した求人サイトを運営する企業です。

この日は、ITや建設業など15の企業から26人が参加し社会人の基本的なマナーや挨拶の仕方などを学びました。

研修を担当する講師「目線ですね。相手の顔をきちんと見ながら、笑顔で名乗って、両手で渡してください。」

高校卒業後に入社した人の中には高校生活と社会人生活のギャップに悩み、辞める人も少なくありません。

そのため、企業側もこのような研修会に積極的に参加させているといいます。

参加した新社会人「社会人としての勉強がたくさんできるなと思います」

参加した新社会人「自分の会社に同僚、同じ年がいないので、ここには同級生がいっぱいいるので楽しいです」

高卒求人サイト 登録企業が増加

人手不足を背景に近年、高卒採用を希望する企業が急増しています。高卒求人サイト「ジンジブ」の今年の採用で登録している企業は1871社で、求人サイトを開設した8年前に比べて13倍以上に増えています。

高卒求人サイト「ジンジブ」HRコンサルティング事業部 野村翔平 部長

「近年、中途採用や大卒採用、外国人の技能実習生の採用がだんだん難しくなってきているので、新たに高校新卒採用を始めようという企業が増えてきています。18歳で世に出てくるものですから、やっぱり素直で真っ白で社内の理念の浸透だったりとか、そんなのがすごくしやすいので中長期的な戦力化できるような人材だと、企業側は思われることが多いですね。」

「超売り手市場」とも呼ばれる高校生の就職活動。

その一方で、大学生とは違う独自のルールもあります。

高卒求人サイト「ジンジブ」HRコンサルティング事業部 野村翔平 部長

「高校生は1人1社ずつしか面接を受けることができないとか、企業と高校生が直接接点を持つことが禁止されていたりとか、こういうルールが根付いているので、なかなか(就職先が)限定されてしまうところに課題を持たれていますね。」

高校生に熱い視線を送る物流業界

全国の物流業の高卒求人数は、2015年には1万4千件余りでしたが2024年には3万2千件余りと、この10年で倍増しています。

福岡市東区に本社を置く運送会社も高卒採用に力を入れています。

西久大運輸倉庫 中村幸喜 人事部長「2024年問題の中、やはり人材の奪い合いというのが全国的に非常に激しくなっております。1人を雇うのにもコストが非常に上がっている状況です。ですから経験者が一番いいわけですけど、それと平行して若い力高卒採用に力を入れていくことが重要だと考えています。」

高校卒業後にこの会社で働き始めた小濵遥斗さんは、研修を受けながら、会社の補助を受けて準中型免許を取得。

去年の7月にトラック運転手としてデビューしました。

高卒2年目ドライバー 小濵遥斗さん「周りも進学している子たちが多かったので、やっぱり自分だけ社会人というプレッシャーがありましたね。小学生の時から大きいトラックを運転するのにあこがれて自分も運転が好きなので、大型トラックドライバーを目指して今、頑張っています」

一緒に働く上司との年の差は20歳。

それでも、優しく指導してくれる先輩に支えられ、高卒で働いてよかったと言います。

そして今年は、高卒の社員2人が入社しました。

高卒2年目ドライバー 小濵遥斗さん「最初はやっぱり大変なことや苦しいこともあると思いますけど、達成感とかやっててよかったなってことが必ずあると思うので、後輩たちも頑張ってほしいなと思います。」

西久大運輸倉庫 中村幸喜 人事部長「高卒採用を途切れさせずに、毎年毎年少しの人数でも構いませんので、繋げていきたいなと考えております。高卒の社員が、自分の5年後10年後の姿をイメージできるようにしていくことが、私たち企業にとって必要だと思っています。」

高い離職率が課題

就職を望む声が大きくなる一方、高校卒業後に就職した人の3年以内の離職率は37.0%と、大学生に比べて高い傾向があります。

新入社員にいかにして仕事のやりがいを感じてもらい職場に定着してもらうかが企業にとって大きな課題となっています。

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