世界初の冷感ウェア「氷撃α」発表。服が温度をコントロールして“湿布みたいなスースー感”がずっと続く。6月下旬発売

by 編集部:白江ちなみ

2024年5月21日 発表

3社合同「世界の酷暑に日本発の冷感技術で挑む!」記者発表会を実施

リベルタ、住友化学、ユタックスは5月21日、夏の深刻な“酷暑”問題を打開すべく3社共同で開発した新素材「氷撃α(アルファ)」を発表した。

氷撃αは“衣服自体が温度を自動コントロール”する世界初の冷感素材。住友化学による温調樹脂「コンフォーマ」を用いた繊維と、女性用下着などを製造するユタックス独自の「冷感プリント」を生地に用いるという、日本生まれの2つの冷感技術を組み合わせることで、“人が心地よいと感じる衣服内の快適域を生地自体が調節してくれる”、これまでにないクーリングウェアを実現した。

この氷撃αを衣類や寝具に応用すれば、ただひんやり涼しく感じるだけでなく、体が真に求める快適さを提供できるという。また近年、高機能ウェア・冷感ウェアとして販売されているキシリトール加工などを活用した“接触冷感”のように、着用した最初だけひんやりと感じる(体温ですぐにぬるくなってしまう)のではなく、汗をかけばかくほど“湿布を貼ったときのようなスースー感が長時間持続する”のも特長。洗濯耐久性もテスト済みで、その機能が低下する心配も少ない。

「氷撃α」を用いたクルーネックシャツとポロシャツ
「氷撃α」を用いたアームカバー
モデルが試着すると「着用するだけで肌がスース―する!」「軽い」との感想

一般的に「暑い・寒いなどの温冷感や、蒸れる・サラッとするなどの湿潤感は、衣服内の温度・湿度・気流との関係が深い」とされる。また、人の感覚器官に働く刺激値は温度と湿度であり、その快適域は衣服内が「温度:32±1℃」「湿度:50±10%RH」「気流:25±10cm/sec」の条件で満たされた場合と言われている。

リベルタらはこの“衣服内の快適域”に着目。住友化学のコンフォーマから作られた温調糸を生地に使用することで、従来難しいとされていた糸そのものへの温度調節機能の付与に成功し、より高い温調効果を得た。さらに、ユタックスの冷感プリント(生地の裏側・肌に触れる部分に施す冷感技術)が人の皮膚から発生する汗などの水分を吸収し、その吸熱特性により生地温度を下げ、冷感性を付与・持続させる。これにより、酷暑でも衣服内の快適温度を保てるという仕組みを確立した。

2023年、日本では各地で記録的猛暑を更新し、世界的にも熱波による被害が多くみられ、WMO(世界気象機関)では2023年の世界の平均気温が観測史上最も高かったとする発表がなされるなど、酷暑への対策が必須の課題となっている。これを踏まえリベルタらは、今後も注目されるであろうクーリングウェア市場に、日本発の冷感技術を集結した「氷撃α」で挑戦していく姿勢。

世界初の冷感ウェア「氷撃α(アルファ)」の特長

この日、東京・日本橋にある住友化学 東京本社内で行なわれた3社合同記者発表会では、本格的な夏本番を前に新素材「氷撃α」の冷感持続性、温調機能、耐久性をモデル着用による体温のサーモグラフィ・デモンストレーションなどで紹介。

また、リベルタ 代表取締役 佐藤透氏、住友化学 取締役 兼 副社長 執行役員 上田博氏、ユタックス 代表取締役社長 宇髙大介氏の3名が登壇し、今回用いられた各社の技術などについて解説した。

株式会社リベルタ 代表取締役 佐藤透氏
住友化学株式会社 取締役 兼 副社長執行役員 上田博氏
株式会社ユタックス 代表取締役社長 宇髙大介氏
新素材「氷撃α」の冷感持続性、温調機能、耐久性をモデル着用による体温のサーモグラフィ・デモンストレーションなどで紹介
一般的な「接触冷感」などのクーリングウェアと「氷撃α」の違い

併せて、氷撃αを用いた新商品となる「氷撃α クルーネックシャツ」(7800円)、「氷撃α ポロシャツ」(9800円)、「氷撃α アームカバー」(3800円)、指先までガードする「氷撃α アームカバーサムホール」(4800円)、帽子の下で着用することで頭部が涼しくなる「氷撃α インナーキャップ」(2800円)を発表。

インナーアイテムは、地肌に直接触れるように下着として身につけることで、汗などの水分が反応してスース―とした清涼感が持続する。シャツアイテムも同様に、動きやすい軽量設計に加え、吸水速乾・UVカット・遮熱・消臭などの機能も備わる。

さらに、汗に反応するだけでなく、腕を振ったり風を受けたりするとより冷感が得られるので、市販のハンディファンやファン内蔵のジャケットなどと併用してもお勧めという。

いずれも6月下旬に発売となり、公式サイトや公式販路(Amazon/楽天市場)などで予約を受け付けている。

なお今回発表した氷撃αは、リベルタが約7年前から展開している「氷撃 フリーズテック」シリーズ(汗と風で冷感効果が持続するクーリングウェアシリーズ)の進化版として位置づけられるが、今後アパレルブランド化していくことは重視していない。

酷暑のなかで働き、生活する人たちに一人でも多く活用してもらうべく、さまざまな企業やブランドに対し別注から素材提供まで積極的に対応していきたいとのこと。

一般向けにも「氷撃α」を用いたアイテムを氷撃 フリーズテックシリーズのラインアップとして販売する

もともとオートバイ用品店からスタートしたリベルタ。佐藤氏によると「オートバイに乗る人は、身体をプロテクトするためにレザージャンパーやパンツを着用するが、真夏でも革の上下を着ることになるため灼熱のなかでさらに灼熱の服を着ている状態となる。バイクに乗っているとクラクラしてしまうというのが実は多くのライダーの悩みであった」。そこで、何とか彼らを涼しくさせようと開発したのが氷撃 フリーズテックシリーズ。

電気や窒素など、冷やす試みはさまざまはあったがどれも運転やレースでは危険性を伴うもので、もっと画期的なアイデアはないかと模索していたところにユタックスの冷感プリント技術と出会った。今でこそ各メーカーが接触冷感などのクーリングウェアを展開しているが、他製品との根本的な違いは「暑ければ汗をかく、汗をかくとプリントが冷やしてくれる、汗をかく限りその効果がずっと続く」こと。これが、フリーズテックシリーズ立ち上げのきっかけと話す。

もともとはオートバイ用品店だったリベルタ。佐藤氏が「氷撃 フリーズテック」シリーズ開発の経緯を語った

当時リベルタが“氷撃”というネーミングで発表したのち他社も追随するなか、「自社ならではの洗濯耐久性や冷感の持続性といった品質の部分で勝負してきた」が、灼熱の環境では暑すぎてプリントによる冷感が感じられなくなるという課題もあった。

そんななか今回、住友化学とのコラボがかない、温調樹脂“コンフォーマ”技術によって「衣服自体が温度をコントロールする」という要素が加わった。衣服内自体の温度を下げられることで、冷感プリントの効果もより発揮できるようになったという。

「今年も他社がさまざまな冷感素材製品を出してくると思われるが、灼熱のなかで衣服内を快適に保って極めて涼しい効果が得られるのは、おそらくフリーズテックがトップクラスでは」との自信を示した佐藤氏。

今後について、国内外を問わず灼熱の環境下にいるワーカーの作業服として、あるいはプロアスリートのユニフォームをはじめ、ゴルフやスポーツ、アウトドア向けのウェア、教育現場、災害時などに役立てられることが狙いであると話し、「今回我々3社がコラボレーションしたように、企業規模に関係なくさまざまなメーカーや研究者が技術を持ち寄り、少しでも安全で過ごしやすい生活が送れるように努力しあうことが重要」との想いを語った。

© 株式会社インプレス