Xdinary Heroes、初のフルアルバムで新境地を披露“アイドルバンドと呼ばれることが苦ではない”

JYPエンターテインメントによるアーティストレーベルSTUDIO Jからデビューした6人組バンドXdinary Heroes(エクスディナリー・ヒーローズ)が、インタビューを通じて新譜リリースの感想を語った。

4月30日に各種音楽配信サイトを通じてリリースされた1stフルアルバム「Troubleshooting」は、昨年10月リリースの4thミニアルバム「Livelock」以降約6ヶ月ぶりとなる彼らの新譜で、デビュー後初のフルアルバム。それだけに、ファンの関心もひときわ高い。

Xdinary Heroesは今回のアルバムを通じて、これまでの新たな世界観を予告した。

タイトル曲「Little Things(幼くて恥ずかしくバカみたいな)」を筆頭に、「No Matter」「UNDEFINED」「Paint It」「Money On My Mind」「Dreaming Girl」「until the end of time」「Walking to the Moon」「MONEYBALL」「Night of Fireworks」の計10曲を収録。制作過程ではすべての収録曲にメンバー全員の手が加えられており、Xdinary Heroes独自の音楽カラーに触れることができる。

イ・ウミン(collapsedone)、シム・ウンジ、ホン・ジサン、VERSACHOIといった韓国のヒット曲メーカーらもアルバム制作に参加し、完成度を高めている。

メンバー自ら作曲を手掛けたタイトル曲「Little Things(幼くて恥ずかしくバカみたいな)」は、弾けるようなバンドサウンドと叙情的なメロディが調和するポップパンクナンバー。Xdinary Heroesの新たな一面が表現された楽曲で、歌詞には「完璧な私にはなれなくとも、完璧な“私たち”にはなれる」というメッセージが込められた。

Xdinary Heroesは2021年のデビュー以降、人気の勢いがとどまることを知らない。2022年の「MAMA AWARDS」では新人賞にあたる「BEST NEW MALE ARTIST」と、最も優れたバンドに授与される「BEST BAND PERFORMANCE」の2部門を受賞。今年の2月には「Hanteo Music Awards」でバンド部門特別賞を受賞し、Z世代のK-POP界を代表するロックバンドとして地位を固めた。

まさに“今最も熱いロックバンド”と呼ぶにふさわしい存在となったXdinary Heroes。最近、ソウル某所では彼らへのインタビューが行われ、メンバーそれぞれが一問一答を通じて新譜リリースの感想や独自の世界観について語った。

―― 初のフルアルバムとあって、感慨深いものがあったのではないでしょうか。

ジュヨン:フルアルバムとミニアルバムの大きな違いは収録曲の数ですが、今回は楽曲制作をするにあたって確かな負担を感じました。メンバーそれぞれが自分なりに楽曲作業をして、なるべく多くの曲を書きましたが、その中で“最高のクオリティを出さなければ”という緊張が少しありました。どの曲をタイトル曲にするかという点はそこまで重視せず、すべての楽曲をタイトル曲レベルにしようという思いがありました。最高のパフォーマンスを引き出す楽曲制作を心掛けました。

ガオン:計10曲なので、収録曲の順番もとても重要だと思いました。アルバムの起承転結がきちんとしていると、それだけ聴く側の興味をそそるので……順番については僕たちなりに満足しています。アルバムタイトルは前回リリースしたミニアルバム「Livelock」の活動中からすでに決まっていました。“問題の解決”という意味を持つ用語です。テーマに合う曲を入れながら、アルバムの構成を練りました。満足のいくものを作れたと思うので、気分がいいです。

O․de:メンバー全員が制作に参加した曲たちなので、僕たち自身が一番楽曲の理解を深めているという思いがありました。ジュヨンとジョンス兄さんはレコーディングの際にディレクティングをよくしてくれて、最初から最後まで手伝ってくれました。10曲を選定して、起承転結に合わせて収録の順番も決めました。

ゴニル:熱心に努力して完成したフルアルバムなので、自負心をたくさん持っています。今回のアルバムを多くの方々が愛してくれて、その大きなエネルギーを力にしたいと思います。

―― アルバムのタイトルである「Troubleshooting」は問題解決という意味ですが、制作作業を通して問題解決に取り組む場面はありましたか?

ガオン:僕たちのバンドの特徴に「♭form(フラットフォーム)」という仮想世界がありますが、今回のアルバムはその世界観を締めくくるアルバムです。「僕たちは、現実世界に出られず周囲の人々の大切さを忘れていたことに心を痛めていたのでは?」というアンサーを込めました。仮想世界から現実に出てきて、自分自身を愛する方法を探りながら、これまでのコンセプトで表現した不安な感情、私的な感情を解決する内容になっています。

―― タイトル曲の独特な曲名を考えたのは特定のメンバーですか?

ジュヨン:僕が書いたキーワードが軸になっています。最初にメンバーたちと一緒に楽曲の制作作業をして、あとから歌詞のほうに取り組みました。コーラス部分のどこにメインテーマが入るのが適切か、という点を考えながら作業しましたが、「僕たちのメインテーマはどうしても長くなってしまう」「文章として入っていてほしい」という考えに至り、このようなタイトルがつきました。

―― 前作と比較してジャンルやサウンド、雰囲気、メッセージ性に至るまで、はるかに多彩で豊かになりました。これは意図したものですか?

ジュヨン:既存の楽曲はいずれもロックでハードな印象だと思います。楽曲制作を重ねることで、ジャンルの幅は広がるだろうと思っていました。そういった点から、どのような曲を作ってもやり遂げられるはずだし、たくさんの方々が喜んでくれるだろうと自負していました。過去のアルバムと比較して、より豊かで叙情的な雰囲気の曲を盛り込もうという意識がありました。

ジョンス:初のフルアルバムなので、収録曲が増えたぶんだけより豊かなカラーを入れたいという気持ちがありました。とくに、「Money On My Mind」「until the end of time」などは作業をするときに楽曲ごとに特定の楽器が目立つ部分を考えて、さらに魅力的にしようと思いました。アルバム全体の起承転結という面では、最初のトラックで最も僕たちらしいサウンドを届けようと考えました。一方で、最後の収録曲では「花火が明るく輝いたときのように僕たちを記憶して」というメッセージを含んでいます。別れは悲しいだけのものではなく、離ればなれになっても共に過ごした時間は美しく記憶されてほしいという気持ちを込めました。

O․de:デビューから約2年半という期間、決して多いとは言えませんが……ライブの経験を積みました。今回のアルバムに関しても、ライブのときにどう具現化されるのか考えながら制作しました。

ガオン:タイトル曲の曲名が、まさに今回のアルバムのメインテーマです。内面にある自分自身を認めることから始めました。率直だけど外に出せない些細な感情をテーマにしています。

ジュヨン:フルアルバムであるだけに、タイトル曲には最も気を使いました。ギター、ベース、ドラムのサウンド的なエフェクトや質感、トーンについてもたくさん悩みました。叙情的な音楽ではそのトーンをどのように維持できるか、という点も熟考して、実際に楽曲に溶かし込むときにも気を使いました。2台のシンセサウンドの調和についても、強烈なだけじゃない感性的な部分に触れたくて試行錯誤しました。何度も何度も作業を繰り返して完成したのが、今回のタイトル曲です。

ゴニル:同じコード進行でも、どのモデルのギター、どのモデルの鍵盤、どのモデルのドラムで演奏するかによって印象が全然違います。タイトル曲だけでなく、すべての曲でそういった点は念頭に置いて作業しました。同じ進行でも温かく感じられたり冷たく感じられたりするので、それぞれの収録曲ごとにどのようなサウンドが最も適切か、どの楽器でレコーディングするかも悩みました。

ガオン:Xdinary Heroesのギタリストとしてレコーディングに臨むようになってから、これまでは深く考えていなかったピックの太さや材質などにも気を遣うようになりました。どうすればこのサウンドをキープできるのか、どうすれば僕たちのアルバムを違和感なくずっと聴いていられるのか、悩みながら試行錯誤を重ねました。

―― 以前までのダークなイメージからがらりと変わりましたが、これはメンバーの意見によるものですか?

O․de:Xdinary Heroesは終着点を決めて進むバンドではないので、僕たちの強烈な色と大衆性をどのようにうまく組み合わせるのかという点は常に課題としています。今回のアルバムで披露した新しいスタイルもまた、そのような試行錯誤を経て見出した結果のひとつだと思います。1曲で僕たちの色を判断するというよりも、楽曲の1つひとつが僕たちの過程と思っていただければ嬉しいです。

ゴニル:僕たちの始まりを知らせたデビューシングルは、とても骨太な音楽でした。実は、今回のアルバムで叙情的な曲が初めてというわけではありません。これまでも「Deadlock」「Good enough」「Livelock」「PLUTO」といった明るくライトな曲を披露してきましたが、これらの曲もファンの皆さんが本当に気に入ってくれました。僕たち自身も明るい曲だったり叙情的な曲を作るのは本当に好きなので、収録曲が多いというフルアルバムのスタイルを生かしてより多様なスタイルの音楽を作ることができました。

ジュヨン:前作より少し大人しいイメージと思われるかもしれませんが、実際にライブサウンドを聴いていただければ叙情的なメッセージとは異なるカラーや、強烈な表現に触れていただけると思います(笑)。

―― 今回のアルバムでも全曲の制作に参加していますが、音楽的なインスピレーションはどのような部分で得ていますか?

ジュンハン:タイトル曲の歌詞に集中して作業するとき、Onnine Ibalgwanさんの「最も普通の存在」という曲で、言葉の使いかたや比喩、人生観など、たくさんインスピレーションを受けました。

ゴニル:普段自分が野球を好んで見るほうではないのですが、「MONEYBALL」では野球をテーマにした感じが表現できればと思いました。「MONEYBALL」というキーワードが先に決まってから歌詞を考えたのですが、同じタイトルの映画や野球の試合のハイライト集を探して見ていました。「until the end of time」という曲ではジュヨンが最初に主題を投げてくれて……「幼い頃は父や母が『ずっとそばにいるから心配しないでね』と話してくれるけど、その言葉は彼らの優しい嘘だった」という気づき、これと共に覚える悲しみをテーマに書いてみるように提案してくれました。そこからインスピレーションを受けて、感情移入して小説を書くようにストーリーを考えました。実際に歌うメンバーたちもたくさん助けてくれて、おかげで良い歌詞になったと思います。

―― 収録曲全体を見るとサビ部分に高音が多い印象ですが、タイトル曲は前半部分に高音を用いてサビ部分で叙情性を強調しているように感じます。歌う上で難しくはなかったですか?

O․de:僕たちはよく冗談交じりに「強制アップグレードされる」という言葉を使います。自分たちで書いておいて、実際に歌うには難しい曲も多いです。しかしながら、とにかく良い曲でこれを上手に歌ってお披露目したいという気持ちがあるので、いつも一生懸命練習して覚悟を持って臨んでいます。

ジュヨン:今回のタイトル曲は、従来と違って前半部分に高音を、サビ部分に比較的低いオクターブを用いました。僕たちが活動を続けるうちに、ファンの皆さんから「サビを丸ごと一緒に歌える大衆的な曲になってほしい」という声を本当によく耳にするようになりました。そう考えたときに、既存の楽曲だと音程が高くて合唱が難しいという方も必ず出てくるだろうと思いました。試行錯誤を重ねて、このように大切なメロディーが誕生しました。僕たちが考える理想郷とファンの皆さんが考える理想郷には偏差があるのかもしれません。

―― 新譜のリリースに先立って、プロデューサーのJ.Y.Park氏からなにか応援やアドバイスはありましたか?

ジュヨン:パク・ジニョン(J.Y.Park)プロデューサーのアドバイスが、いちばん心に響きました。「焦らず少しずつ浮上していけば、いつか上に行っているだろう」とおっしゃってくれて、焦らなくていいという言葉が僕たちには一番響きました。いつかはもっとたくさんの方々が僕たちの音楽を好きになってくれるはずだ、という期待が湧きました。プロデューサーは「K-POPスター」の放送当時、とても気に入った参加者にだけ“父親のような微笑み”を向けるという話を聞いたことがあります。今回僕たちが完成した曲を披露したときも、特有の微笑みを浮かべながら聴いてくださって、後から「とてもいいと褒めてくださっていた」と人づてに聞きました。

ゴニル:今回のタイトル曲を作る過程で、フィックスされた歌詞が出来上がる前にプロデューサーと食事をする機会がありました。そのときプロデューサーは「今回の曲が本当に良いので、歌詞にも君たちのストーリーや真心がこもっていてほしい」とおっしゃいました。プロデューサーは僕たちについて「ステージの上で一番素敵に見えるチーム」と評価してくれました。ジュハンは一連の話を聞いて「幼くて恥ずかしくバカみたいな」という主題に合う歌詞を書いてさっそくプロデューサーに見せたのですが、そのときもとても喜んでくださいました。

―― JYPエンターテインメント所属のバンドということで、アイドルバンドという修飾語が付けられることもあるかと思います。Xdinary Heroes のアイデンティティとはどのようなものでしょうか。

ガオン:良い音楽はいつか支持されるものだと思います。僕たちが考えて追及すべきことは、アイドルとバンドの長所を生かすこと。それが究極の目標です。熱心に努力しても拒否感を持つ方はいらっしゃるかもしれません。ですが、そんな方にも認められる音楽を届けたいです。JYPという事務所にいるので、こういった部分はマーケティングの面でもとても役に立つと思います。スタイリングやプロダクションに助けられる部分も多いです。

ゴニル:前提として、僕たちはJYPというアイドル事務所から誕生したアイドルバンドです。しかし、「僕たちはアイドルだ」あるいは「僕たちはバンドだ」という風にどちらかに限定して考えたくはありません。僕たちのアイデンティティは、「自分たちがアイドルなのかバンドなのか」という点よりも、「自分たちが作った音楽」によるところが大きいと思います。大切なのは属性として認められることではなく、音楽を通じて人々に影響を与えられるかどうかです。幼い頃にたくさんの歌手が届ける音楽に感銘を受けたように、Xdinary Heroesもまたそのような存在でありたいという目標があります。

ジュンハン:根本的に考えると、アイドルという単語は誰かのワナビーや模範になる対象です。その言葉は、むしろすごくいいと思います。僕たちもバンドシーンで模範や尊敬の対象になれるよう、努力したいです。アイドルという単語は、決して否定的なものではないと思います。

O․de:アイドルとバンドの違いに集中するよりも、僕たちが音楽をやっていてそれを聴いてくれる人がいるということにありがたいという気持ちを抱いています。その感謝を伝えるため、これからも一生懸命音楽をやりたいです。

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