飼い主に棄てられて長期の放浪? 人を信じなくなった保護犬 心の傷を治すためスタッフとの日々が始まった

今年、人間が意図的に捨てたとおぼしき溝の中にいた柴犬の子犬が保護されました

2024年始め、静岡県内を放浪しているオスのワンコがいました。本来ならまだまだ遊びたい盛りの2歳ほどのワンコで、長期間の放浪がうかがえました。保護時は人間に噛み付く素ぶりを見せ、強い警戒感と不信感を抱いているようでした。

野犬ではなくもともとは飼い犬のようです。飼い主から意図的に捨てられたのであれば、人間に不信感を抱くのも当然のことだと思います。

「この人たちは悪い人じゃないかも」

このワンコを引き出すことにしたのが保護団体、ピースワンコ・ジャパン(以下、ピースワンコ)。静岡県動物管理指導センターまで広島から6時間かけて行きました。スタッフが対面したワンコはやや緊張の表情を浮かべながらも、事前に聞いていたような噛み付く素ぶりは見せませんでした。「この人たちは悪い人じゃないかもしれない」といった表情を浮かべ、ケージの中に入れてもおとなしくしていました。

スタッフを前にしても噛み付くことはありませんでした

スタッフはこのワンコに「うなぽん」という名前をつけました。静岡・浜松の名物うなぎにちなんだ名前です。

ぎこちないものの穏やかな表情を浮かべてくれた

スタッフはすぐに動物病院に連れていきました。ここでも、うなぽんは噛み付く素ぶりは見せず、おとなしく診療をを受けてくれました。皮膚の状態が悪そうでしたが、重篤なものではなく一安心。「良かったねー」とスタッフがなでてあげると、少々ぎこちないものの穏やかな表情を浮かべてくれました。

「自分のことを大切に思ってくれる人たちなんだ」と理解してくれたのか、スタッフの手から直接エサを食べてくれました。

うなぽんに圧をかけないようにと、面と向かわず後ろ向きでご飯をあげるスタッフ

深い心の傷が癒えるまでは里親募集には出さない

後にうなぽんは浜松譲渡センターで過ごすことになりました。

かなり長期間ひとりぼっちで放浪していたことから、今も人間を完全に信じているわけではない様子です。飼い主がうなぽんを意図的に捨てたのだとしたら、うなぽんの気持ちはよくわかります。

「飼い主さんが大好き。飼い主さんとずっと一緒にいたい」と何の不安もない生活をしていたのに、ある日突然その飼い主さんに捨てられて…。こんな経験をしていれば、目の前にいる人間が優しかったとしても、「また捨てられるかもしれない……」という不安がよぎることは容易に想像できます。

スタッフはうなぽんが負った深い心の傷を理解し、日々笑顔で接し過去の辛い思いを忘れてくれることを目指して世話を続けています。そして、その心の傷が治るまではトレーニングを続け、里親募集の準備をしていると言います。

もう一度人間を信頼してくれることが最優先。うなぽんと人間の関係を再構築するための生活は始まったばかりです。

__ピースワンコ・ジャパン
__[https://wanko\.peace\-winds\.org/](https://wanko.peace-winds.org/)

(まいどなニュース特約・松田 義人)

© まいどなニュース