バキバキと樹木が折れる音…南島原で大規模地滑り 3年前にも同じ場所で、1年前には異変に気付くも住民は知らず

長崎県南島原市で5月14日、大規模な地滑りが発生した。市は2世帯5人を対象に「高齢者等避難」を呼びかけている。このエリアでは3年前にも地滑りが発生。県と市の職員は1年前にも地割れの「異変」に気付いていたが、住民には知らされていなかった。

3年前も同じエリアで大規模地滑り

地滑りは南島原市で、山林で幅およそ100メートル、長さ200メートルにわたり発生した。

市によると地滑りが発生したのは14日午前8時ごろ。地域住民からの通報で事態が発覚し、市の職員が現場を確認したところ、午後3時ごろまで周辺では樹木が折れる音が聞こえた。

視聴者映像でも樹木がバキバキと音を立てながら折れ、撮影した住民も思わず恐怖の声をあげていた。

付近の住民も「滑りだしてから木の根や竹の根などが折れる音がした」と話す。

気象庁によると、南島原市口之津では12日から13日にかけて80ミリを超える雨が降った。15日に市はドローンを飛ばして上空からも現場の状況を確認したほか、技術職員が地質調査を行い、原因を調べている。

この場所では3年前にも地滑りが起きている。斜面の補強工事を終え、2024年度からは道路の修復工事を予定していた。しかし今回の地滑りによりさらに50メートル下まで土砂が流れ、工事は延期となった。繰り返される地滑りに近くの住民からは「3年前の地滑り後に整備をしていたから、また発生するとは思っていなかった。今からまた心配」と不安を隠せない。

南島原市 総務部防災課・永川賢一課長:
前回よりも土砂の量は多いかなと思う。これから梅雨に入るので雨が降ると前回より大きな被害が出るかもしれないので心配

市は2世帯5人に対して「高齢者等避難」を呼びかけていて、今後、避難指示などに切り替える可能性もあるという。

1年前にも地割れの「異変」

発生場所の周辺では2023年5月から地割れなど「異変」が起きていたことがわかった。県などが把握していたものの住民には知らされていなかった。

県は2021年の地すべりで、ひずみなどを観測する機器を設置していた。2023年5月以降、周辺で地割れなどの「異変」を確認したため小規模の斜面崩壊を予想し、対策をとる予定だったという。ただ近くの複数の住民は「何も連絡はなかった」と話している。

また、今回の地滑りが発生する前日に現場近くを訪れた県の職員は、再び「地割れ」を確認していたという。しかし市が把握したのは、翌日の地滑りを知った後だった。

度重なる地滑りの共通点

地盤防災工学の専門家は今回と、3年前に地滑りが発生したエリアの共通点を指摘している。

長崎大学大学院 総合生産科学研究科・蒋宇静教授:
堆積岩、いわゆる泥岩、砂岩その上に強度の弱い崩積土を被っている状況。その地層に対して雨が降って雨水が浸透していくと、地盤自体の強度は急激に低下しやすくなる特徴がある。今回は雨が降った後に雨水の浸透によって強度の低下、地盤が動き出した結果今回の災害につながったのではないか

今回、地滑りが確認されたエリアの周辺では1年前にも同じ時期に不安定となった場所があることがわかっている。蒋宇静教授は3年前の地滑りとの関連についても「今後の調査で明らかにしていく」とした上で、注意を呼びかける。

長崎大学大学院総合生産科学研究科・蒋宇静教授:
南島原には広範囲にわたって色々な小さな地滑りブロックがたくさんある。地滑りの場合は雨が降った後、1日2日開けて滑りだす、災害につながるケースはよくある。最初は小雨や雨の量は多くなくても異常に気付けばいち早く行政側に連絡を取ったり、的確な避難行動につなげてほしい

県などによると、これまでに他の場所での「異変」は確認されていない。17日までに専門家が調査を行なったところ、「3年前に発生した災害と今回の地滑りは関係はない」との見方を示した。調査の結果や結論などが出るまでにはもうしばらく時間がかかるとしている。

(テレビ長崎)

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