IMF、英国の総選挙前減税に警鐘 成長予想は引き上げ

William Schomberg Andy Bruce

[ロンドン 21日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は21日、英経済に関する年次報告書を公表した。政府は債務目標を達成できないとの見方を示し、今年の総選挙前に減税すべきではないと訴えた。将来的に増税が必要になる可能性が高いとしている。

2024年の経済成長率は0.7%とし、4月時点の0.5%から引き上げた。今年初めの好調な成長を反映した。

イングランド銀行(英中央銀行)は今年2回か3回、0.25%ポイントずつ金利を引き下げるべきとした。ただインフレ率が持続的に目標に戻るのは25年初頭と予想した。

英国は23年後半に短期間の浅いリセッション(景気後退)に陥った後、「ソフトランディング(軟着陸)」に向かうとの見通しを示した。

ハント財務相は経済見通しが上方修正されたことを受けて、英経済が好転したとの見方にIMFも同意したと述べた。「将来に関する不当な悲観論を払拭すべき時だ」と表明した。

しかしIMFは英国の経済成長は引き続き弱いままで、債務は増加傾向にあると指摘。英中銀の債券購入プログラムを除いた公的部門の純債務は、2028/29年度に国内総生産(GDP)の97%に達すると予想した。

10年後までに債務を安定させるために、増税や歳出削減を通じてGDPの平均約1%ポイント、年間約300億ポンド(380億ドル)規模の緊縮財政が求められるとした。

炭素税や道路使用税への課税強化、付加価値税や相続税の課税ベースの拡大、キャピタルゲインや不動産課税の改革など、新たな歳入増加策を検討するよう求めた。

過去の不十分な投資が現在の経済成長を圧迫しているほか、移民を抑制する政府の取り組みも成長への逆風になっていると分析。「こうした課題を背景に、確実な成長促進効果があり、質の高い財政赤字削減策によって相殺されない限り、追加減税には原則的に反対する」とした。

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