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「リトルなでしこ」こと、サッカーU-17日本女子代表が、アジアでの戦いを終えた。惜しくも連覇はならなかったが、未来につながる輝きを放った。U-17女子アジアカップでの戦いぶりを、サッカージャーナリスト後藤健生が振り返る。
■アジアの女子サッカー「2強体制」が確立
インドネシアで開かれていたAFC U-17女子アジアカップ決勝で、U-17日本代表は北朝鮮に完敗を喫し、2019年の前回大会に続く連覇を逃がした。
今や、アジアの女子サッカーは、日本と北朝鮮の2強体制が確立されているようだ。
この大会でも日本はグループリーグでタイ、オーストラリア、中国と対戦して3戦全勝。3試合とも4得点し、失点はオーストラリア戦後半アディショナルタイムのPKのみ。そして、準決勝でも韓国相手に3対0という成績で決勝に進出した。
一方の北朝鮮も初戦で韓国に7対0という衝撃的なスコアで勝利すると、フィリピンには6対0、インドネシアには9対0と圧勝。得点22、失点0という成績で準決勝に進出。準決勝で中国を1対0で下し、無失点のまま決勝進出を決めた。
日本と北朝鮮の女子代表は、今年に入って3度目(4試合目)の対決となった。まず、2月のパリ・オリンピック予選ではフル代表同士が対戦し、北朝鮮ホームの試合が中立地(サウジアラビア)開催となったが、1勝1分で日本が勝利。続いて、3月にはAFC U-20アジアカップ決勝で対戦し、北朝鮮が2対1で勝利していた。
それだけに、U-17アジアカップではぜひとも勝っておきたいところだったが、試合運びのつたなさなどもあって、日本は完敗を喫してしまった。
■試合開始直後「予想通り」の北朝鮮の猛攻
北朝鮮との決勝戦。試合開始直後から、日本は北朝鮮の猛攻を受けた。
これはある程度、予想できたことだ。
パワーやロングボールを武器とする北朝鮮。開始直後のフレッシュな状態では、フィジカル勝負で日本を上回ることができるからだ。
昔から、韓国や北朝鮮と対戦すると、開始直後に押し込まれることは何度もあった。これは、男子も女子も、あらゆるカテゴリーで起こる現象だ。
従って、最初の15分間ほどは日本チームにとって我慢の時間となる。ここをしのぎ切って、相手の動きが落ちてからは、日本チームのテクニックや戦術的な動きが効果を発揮してパスがつながるようになる。
今回のU-17女子代表の試合も、まさにその通りの流れとなった。
序盤戦、ロングボールを蹴り込まれ、セカンドボールを拾われて押し込まれ続けた日本だったが、GKとして起用された坂田湖琳の好守もあって無失点で耐えることに成功。
13分には右サイドから形を作って、最後はエースの眞城美春がチーム初シュート。シュート自体は力のないものだったが、これが転機となり、次第に日本のパスがつながるようになってくる。
日本が相手陣内にボールを運べるようになれば、そこで奪われてロングボールを蹴り込まれても、相手のキックの精度はそれほど高くないのでピンチにはつながらないし、相手陣内でプレスをかけられれば、北朝鮮は簡単にタッチに蹴り出してくれる。
ただ、32分にトップ下の平川陽菜のシュートがDFに当たってポストを直撃するチャンスもあったが、日本には決定機と呼べるほどのチャンスは生まれず、終盤には北朝鮮のカウンターで何度か危ない場面も作られて前半を終了した。
スタッツを見ても、ボールポゼッションやパス本数、CKの数などは日本が上回ったが、シュート数では3本対11本(枠内1本対5本)と圧倒された前半だった。
■後半開始直後「危険な時間帯」の致命的なミス
後半も開始直後は危険な時間帯だ。ハーフタイムでフレッシュさを取り戻した北朝鮮が、再びパワーで押し込んでくることが予想されるからだ。警戒しなくてはいけなかった。
ところが、この大事な立ち上がりに致命的な守備のミスが出てしまったのだ。
なんでもない縦パスがトップのチェ・イルソンに入ったところで2人のセンターバック(太田美月と牧口優花)が見合ってしまい、さらにGKの坂田の飛び出しが遅れてしまう。そして、こぼれ球が転がったのが北朝鮮の左サイドで得点ランキングトップにいたチョン・イルチョンの前。チョン・イルチョンはこのボールを難なく日本の無人のゴールに蹴り込んだ。後半開始から50秒での失点だった。
ただ、反撃する時間はたっぷりあるので、前半と同様に時間の経過とともに日本が反撃に移るかと思われた。
しかし、後半は最後まで北朝鮮がゲームをコントロールしたまま、0対1で終了することになる。