デミ・ムーアが衝撃の怪演!美と若さに取りつかれた女性描くゴアホラー【第77回カンヌ国際映画祭】

映画『ザ・サブスタンス(原題)』よりデミ・ムーア

第77回カンヌ国際映画祭でコンペティション部門出品作『ザ・サブスタンス(原題) / The Substance』がお披露目された。血みどろの残虐描写で話題を呼んだ『REVENGE リベンジ』のコラリー・ファルジャ監督作で、デミ・ムーアが美と若さに取りつかれた主人公役で衝撃的な怪演を見せている。

デミが演じたのは、一世を風靡したスター、エリザベス・スパークル。エアロビ番組のホストとして長年人気を博していたが、年齢を理由に番組をクビになってしまう。そんな時、細胞分裂を利用して“若く、より良いもう一人の自分”を生み出すことができる怪しげな注射薬「サブスタンス」を手に入れたエリザベスは早速使用し、自分の中から若く美しいスー(マーガレット・クアリー)を生み出す。“エリザベスとスーは1週間ごとに入れ替わらないといけない”など「サブスタンス」の継続的な使用にはルールがあるが、若く美しくいることの中毒性はそれを狂わせ、彼女を破滅へと導いていくことになる。

エリザベスの背中を破って出てくるスーの誕生シーンをはじめ、スーの体を維持するためにエリザベスが経験しなければならないプロセスはグロテスクで痛々しい。そして、完璧なスーでいればいるほどエリザベスに戻った時の老いた自分の欠点が目につき、人目を恐れてディナーへも出掛けられなくなってしまうさまはリアルでやるせない。ファルジャ監督は「わたしがやりたかったのは、わたしたちの体を強調すること。女性として、わたしたちは社会からどう見られているかで定義されている。つまり、わたしたちが自分自身に向ける暴力は、わたしたちを取り巻く暴力でもあるということ」とこのテーマを描くのにボディホラーはうってつけだったと公式会見で明かす。

現在61歳の裸体を恐れることなくさらけ出し、老いへの恐怖を具現化したかのような衝撃的な姿も披露したデミは、「快適なゾーンからわたしを押し出してくれるような作品を探している。それはより良い人間、より良い俳優になれる機会だから。そしてこの映画は、わたしたちが直面している多くのテーマに触れている。この映画への出演を通して、自分自身をより受け入れられるようになったと思う」と振り返っていた。

コンペ部門では異色のジャンル映画だが、デミの怪演と吹き出し続ける血にプレス試写は異様な盛り上がりを見せており、グレタ・ガーウィグ監督率いる今年の審査員団が本作にどのような評価を下すのかも注目される。(編集部・市川遥)

© 株式会社シネマトゥデイ