「ギャンブル依存症」の回復施設 岩手・矢巾町に開設 過去を語り合い社会復帰へ歩む

大谷翔平選手の元通訳をめぐる事件でクローズアップされた「ギャンブル依存症」。
ギャンブルにのめりこみ、やめようとしてもやめられなくなる精神疾患のことを指している。
そのギャンブル依存症の回復を促すための施設が、5月に岩手県矢巾町に開設された。
入所者は自分を見つめなおし、社会復帰に向けて日々を歩んでいる。

入所者
「人様のお金でギャンブルなんてありえないのに、どうしてもギャンブルのことしか考えられなくなってしまって」
「本当の自分の姿を見せたくなくて、偽りの姿をずっと見せていました」

自分の思いを率直に吐き出す彼らは、ギャンブル依存症の当事者だ。

矢巾町の「グレイス・ロード 岩手サポートセンター」は、山梨県の団体が基となって5月1日に開設されたギャンブル依存症の回復を促す施設だ。

回復のために大切なのが、自身の過去や思いを入所者同士で話すグループワークだ。

入所する35歳の男性は18歳からギャンブルを始め、これまでの損失は3000万円以上にのぼるという。
それを取り返そうと、家族や友人に嘘をつき借金を重ねてきた。

35歳の入所者
「家族も仲が良くて、母と4人きょうだいで仲良くしてきたけれど、うそをついて、だましてきた」

時折声を詰まらせながら話すその内容に、周囲は黙って耳を傾ける。

35歳の入所者
「施設に入る前は(依存症のことを)話すこともできなかった。話すことで気持ちがとても楽になるし、仲間の話を聞くことで自分を振り返る機会になっている」

施設では現在16人が共同生活を送っている。
ギャンブルはもちろんスマートフォンやパソコンも禁止で、1年半から2年ほど誘惑を断って生活する。

施設を管理する田村仁さんもかつてギャンブル依存症に苦しみ、こうした施設で克服した経験を持っている。

岩手サポートセンター 田村仁管理者
「自分も入所した時、職員から最初に『大変だったな』と言ってもらえた。それがほっとしたので自分も当事者と意識して職員をしている」

施設ではボランティア活動やスポーツなどにも取り組んでいて、ギャンブル以外に人生の楽しみを見つけることも回復プログラムの一つと位置付けている。

入所する25歳の男性は、ここで過ごす中で再び夢を持てるようになったと語る。

25歳の入所者
「施設に入る前は自分でラーメン屋をやっていたので、飲食店をもう一度やりたいという思いがある。自分の好きなことで、しっかりとした生き方をしていくのが目標」

岩手サポートセンター 田村仁管理者
「入所者は人生に絶望してここに来ているが、やり直して幸せに生きている人はうちの卒業生でもたくさんいるので、新しい入所者の希望になってほしい」

成人の約2%が該当するとされる「ギャンブル依存症」、そこから立ち直るための取り組みが進められている。

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