河合優実、大ブレイクにも「自分自身満足することはない」 表現のルーツや今後の展望を語る

『由宇子の天秤』『サマーフィルムにのって』『PLAN75』などの演技で数々の映画賞を受賞し、2024年1月期に放送された『不適切にもほどがある!』(TBS系)の小川純子役で一気に知名度を上げた河合優実。現在放送中の『RoOT / ルート』では地上波ドラマ初主演を務めている。そんな河合に、『不適切にもほどがある!』の反響や『RoOT / ルート』でW主演を務めた事務所の先輩でもある坂東龍汰について、さらには自身の表現のルーツや今後の展望などを語ってもらった。

ーー『RoOT / ルート』は昨年のうちに全て撮り終えられているそうですね。撮影を振り返っていかがですか?

河合優実(以下、河合):すごく楽しかったです。監督の人柄だったり、現場の雰囲気がよくて、みんなで楽しみながら『オッドタクシー』や『RoOT / ルート』の都会的な世界観を現場に持ち込んでいる感じがしました。

ーー河合さんにとっては地上波ドラマ初主演作でもあります。

河合:W主演でもあったので、主演だからといって意気込みすぎて空回りすることはしたくなかったので、できることを等身大でやろうと思っていました。なので、そこまでプレッシャーには感じていませんでした。

ーーW主演の坂東龍汰さんの存在は大きかったですか?

河合:大きかったですね。撮影のときももちろん思いましたが、完成した作品を観てさらにそう思いました。同じ事務所ということもあり、撮影前は関係が近すぎて、「この2人でバディをやっていいのかな?」という感覚もあったんです。でも、はじめましての人とは全然違う形になったと思うし、信頼している部分があったからこそ、お互い躊躇し合わないで、より面白い方向へ手探りでやっていけた感じがすごくあったと思います。

ーー坂東さんとは普段から交流はあるんですか?

河合:この作品でご一緒するまでは最近全然会っていなくて。坂東くんは、自分が入った1年前くらいに事務所に入っていて、一番近い先輩後輩という間柄ではあるので、事務所に入ったばかりの頃はすごくお世話になっていました。坂東くんは人間として本当に面白い方ですね。そういう部分での信頼感がありました。

ーー俳優としての坂東さんはどうですか?

河合:適当に見えるんですけど、実はすごくいろいろ考えている。その上で、ジャンプできる幅がすごく大きいというか、ポンって出すときに出せる人ですね。自分が見てきた坂東くんのお芝居でも感じていましたが、感覚で「ここに行きたい」と思ったところにすぐジャンプできる感じがあって。カメラが回っていないときでも、天性の力があるというか、現場の雰囲気を作っていける人なので、唯一無二だなと思います。

ーー坂東さんは撮影の時点で自分が主演だという認識がなかったそうですね。

河合:そうなんですよ。私としては、W主演だから主演としての役割がちょっと分散されるところがあるのかなと思っていたんです。坂東くんは先輩ですし。そういう意味でほっとしていた部分もあったんですけど、自分が主演だと思っていなかったらしく……(笑)。それでも気持ち的には楽になったからいいかなと思っています。聞いたときはすごくビックリしましたけど。

ーー現場では坂東さんが主演だと認識していないと感じることはなかったんですか?

河合:思い返したら感じたときがあったんです。現場で話しているときに、「まあでも今回は優実ちゃんが現場を作っていくからね」って言われて、「あれ?」と思ったんですよね。「2人じゃないのかな?」って(笑)。今思えば「そういうことだったんだ」と。私だけが主演だと思っていたんだ、という答え合わせになりました。

ーー河合さんが今回演じられている玲奈は、愛嬌ゼロの先輩探偵という役どころです。今まであまり演じたことのないような役柄ですよね。

河合:撮影が去年だったので、その後自分が出ている他の作品を観たり、他の作品に取り組んだりする中で、この『RoOT / ルート』を観たときに、無理をせずにすごく自然な喋り方だったり身体だったりで表現しているなと思いました。外見的な部分や表面的な部分でキャラクターっぽくすることはせず、現実の地続きとかいうか。作品全体としてリアルなトーンがあるので、本当に話しているような話し方を自分がしているなと思いました。そのチューニングはものによっていろいろあるんですけど、この作品に関してはすごくのびのびやっていたと思います。

ーー『不適切にもほどがある!』の純子とはまた違うアプローチだった?

河合:そうですね。演じるときは、作り込もうとか作らないようにしようという視点から意識することはあまりないんですけど、結果として全然違うものになっているというか。時代も年齢もキャラクターも違うというのはありますが、玲奈よりも純子の方が、自分よりも遠い部分がたくさんあったので。あとはドラマのトーンですよね。そういうところで出し方が違ってきます。

ーーここ数年、ドラマや映画での露出が一気に増えましたが、そもそも河合さんがお芝居に興味を持ったきっかけはなんだったんですか?

河合:もともとダンスが好きで、お芝居を始める前はずっとダンスをやっていたんです。ただ、ダンサーになりたかったみたいなことではなくて。大きい括りとして表現することは好きだったけど、どちらかと言うと、自分がステージに立つというより、全員でどういうものにしたいかを考えて練習して、それをお客さんに披露する。それに対して反応が返ってくるのがすごく楽しくて。ものづくりというか、表現を仕事にしたいなとじわじわ思い始めて、気づいたらお芝居に興味がいっていました。

ーーお芝居を始めてから、キャリア的にはまだ5年なんですね。

河合:『不適切にもほどがある!』でたくさんの方に知っていただいたこともあって、自分自身で振り返る機会がすごく多いんですけど、目の前のことをいつも一生懸命やっていて、それが幸運にも次のことに繋がってきた感覚で。しかもすべて自分がちゃんと興味を持てるものだったので、それがすごくラッキーだったなと思います。でも、どういう作品に出たいとか、どういう作品が好きとか、普段から自分で口に出したりすることで、引き寄せている部分もあるのかなと思いますね。

ーー今後の展望はあったりするんですか?

河合:いつもあまり決めないようにはしているんですけど、自分自身満足することはないというか、いつも「もっといいものにしたい」とか「もっとできたことがあったんじゃないか」みたいなことは思っているので、常に次やることはある状態ですね。これまでと同じように、自分が愛情を持てる作品に取り組むのがすごく大事だと思いますし、自分自身そうありたいなと思います。

ーー現時点で、キャリアのターニングポイントとなった作品はなんですか?

河合:たくさんの人に知ってもらえたという意味で、『不適切にもほどがある!』はすごく大きかったです。やっていることとしては、いつも一生懸命やっているし、自分としては人を笑わせることや面白いことが好きだし、ミュージカルも好きだし、変わらないつもりではあるけれど、みんなが面白がってくれたり感動してくれたのはすごく嬉しかったですし、自分の人生にとって大きな作品になりました。

ーー阿部サダヲさんから学んだこともたくさんあったのではないでしょうか。

河合:阿部さんが座長だから安心できるという感覚がみなさんあると思いますし、それは阿部さんが今までやってこられたことだったり、阿部さんご本人の人柄も大きいのではないかなと。そういう人を見るとカッコいいなと思いますね。自分が主演をやるときも、他の方が主演をやっているときもそうですが、監督にしても俳優にしても、一生懸命な人がいるとそれが伝染していくので、私自身もそういうパワーを発する人でいたいなと思います。

(取材・文=宮川翔)

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