『Destiny』目まぐるしく変わる石原さとみの表情に魅了される 意外な黒幕の存在も明らかに

野木浩一郎(仲村トオル)の自宅放火事件の真相に近づく事実が描かれ、意外な黒幕の存在も明かされた『Destiny』(テレビ朝日系)第7話。

今話は「奏、逃げない? 逃げない? 2人で」という病床の真樹(亀梨和也)からの提案に乗っかり、人生で2度目の罪を犯す奏役を演じる石原さとみの目まぐるしく変わる表情に特に惹きつけられた。

病室を抜け出し長野行きのバスに乗った真樹に遅れて合流する奏の、静かな覚悟が滲む表情。バスで真樹の隣に移動し、彼の体調を気遣い肩を貸しながらも、全面的に彼がやろうとしていることを受け入れているわけでも、賛同しているわけでもない、頑なさも残る表情。

学生時代と同じく車内からふたりして夜空を見上げるシーンは、何だか懐かしいような思いを抱いてしまった人も少なくないのではないだろうか。外的要因は何もかもが当時と同じだからこそ、自分と今隣り合っている相手の気持ちや置かれている状況だけが変わってしまったことがより際立ち、虚しさにも襲われる。今からどんなにあの頃をなぞり直したって、もう元通りにはなれない関係性や巻き戻せない時間に途方もない気持ちになる。

それでも静かにその“変わってしまったもの”を受け入れ、もう取り戻せないあの頃が一番幸せだったと漏らす奏はとても綺麗だった。それを聞くことができた真樹もどこか許された気がしただろうし、少し肩の荷が降りた気持ちになったのではないだろうか。

当時は無邪気に言った「死ぬ時は一緒。奏と一緒なら死んでもいいな」という言葉を今の真樹がなぞる。そうやって真樹も、なぜかいつもおかしな方へおかしな方へ転がっていってしまう自身の運命を、静かに受け入れているようにも思えた。

そんなやりとりを経た翌朝、「真樹、何か隠してることあるよね?」と真っ直ぐ彼を見据え核心に迫る奏は、全てをひっくるめた上でそれでも検事の表情を見せた。「真実を突き止めるのが私の仕事だから」と断言する奏は、「自分の正義を貫くのがお父さんの仕事」と言っていた生前の父・辻英介(佐々木蔵之介)の姿と重なる。

奏が放火犯について真相に迫ろうとしてもしらばっくれて、最後までふざけようとする真樹に、呆れたような表情を一瞬見せた後、いきなりいつになく真剣に向き合って言う。「真樹、死なないで。もういなくならないで」、そして「駄目、絶対」と念押しする奏の切羽詰まった表情に、もう12年前の二の舞にはなるまいとする強い決意が見えた。手を離すとどこまでも転がり落ちていく真樹を、今度こそ絶対に引き揚げてみせるという奏の意志も垣間見えた。

しかし、この逃避行の末に、また奏を取り巻く様々な状況が一転する。奏の婚約者で真樹の主治医・貴志(安藤政信)は、横浜地検支部長の大畑(高畑淳子)からの電話にも咄嗟に奏のアリバイを作る機転の良さや配慮を見せたが、ついに奏に三行半を突きつけた。貴志も時に真樹のように、自身の想いを少し強引にでも相手に伝えられたらまた違ったのだろう。だが、物わかりが良く反射的に自身が引き下がることを選ぶ貴志には、今の奏と一緒にいることは非常に酷なことだったのだろう。

意識不明の浩一郎が目を覚まし、彼の病室を見張る謎の男に秘密裏に捜査の進捗を伝える奏の事務官・加地(曽田陵介)の姿が描かれる。

そして、野木邸放火事件の直後、近隣を走って逃げる姿をドライブレコーダーで捉えられていたのは、スーツ姿の祐希(矢本悠馬)だった。祐希を庇って真樹は自身が放火犯だと名乗りを上げていたようだが、実際には祐希以外に放火犯がいるのだろう。

「なぁ、奏。真実って何?」とは真樹の言葉だが、全てを真樹が背負い込もうとしているこの放火事件、そして浩一郎と英介の因縁の事件となった環境エネルギー汚職事件の“真実”は一体どこにあるのだろうか。
(文=佳香(かこ))

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