能登の被災古民家守る 県、支援者拠点に再生 

  ●修繕費を補助、景観維持一役

  ●住まなくなっても将来の活用視野

  ●県6月補正予算案

 奥能登の古民家が、復旧・復興拠点に生まれ変わる。石川県は21日発表した6月補正予算案に、地震で被災した古い家屋を復旧作業に携わる人向けの宿泊施設に再生するプランを盛り込んだ。公費解体の本格化に伴って現地の宿不足が懸念される中、人が住まなくなった建物を修理し、受け皿として活用する。古民家は広い間取りが多く、大人数を受け入れるのにうってつけで、景観維持にもつながる一石二鳥の試みとしたい考えだ。

 宿泊施設として活用するのは奥能登4市町の古民家で、修理すれば生活が可能で、かつ家人に住む意思がない場合が対象となる。宿泊運営事業者が建物を借り受け、修繕して宿泊拠点として提供する。

 県は8~10人程度が宿泊できる古民家を想定しており、将来的には民泊施設への転用も検討する。補正予算案に、1棟当たり最大100万円の修繕費を補助する経費を計上した。

 地震を受けて県が策定した災害廃棄物処理実行計画では、来年度末までに244万トンの災害ごみの処理を終えるスケジュールとなっている。足元では、大量のごみが発生する建物の公費解体が徐々に本格化しており、ピーク時には2千~3千人の工事業者が能登に入るとみられる。

 ただ、現状、復旧工事に携わる業者や県内外から応援に入っている自治体職員らの宿泊場所は、奥能登4市町で1600人分にとどまる。県が宿不足への対応を検討する中で、収容人数の多い古民家を再利用するアイデアが浮上した。

 2018年に総務省が行った住宅土地統計調査では、県内の住宅1戸当たりの延べ床面積の平均は124平方メートル(全国平均92平方メートル)で全国6位。県によると、珠洲市が平均200平方メートルを超えるなど、奥能登は広い家が目立つ。

 さらに、プレハブの宿泊施設を設置するより、民家を手直しして活用する方がコストが小さい。古民家の保全が能登の景観保護につながる点も決め手となった。当面は宿泊施設として利用し、復興が進み、観光客や移住者を呼び込む時期がくれば、民泊や移住者用の住まいとして提供することも視野に入れる。

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