〝ラーメン組長〟を射殺した「大物ヒットマン」逮捕へ 背景に複雑な人間模様

兵庫県警本庁舎

昨年4月、神戸市長田区のラーメン店「中華そば 龍の髭」店主だった特定抗争指定暴力団山口組弘道会系の余嶋学組長(57=当時)が射殺された事件で、兵庫県警は殺害に関与した疑いがあるとして、指定暴力団「絆会」幹部の金沢成樹こと金成行被告(55)を近く逮捕する方針を固めた。金被告はすでに長野、茨城両県の発砲事件で起訴されている。

捜査関係者によると、潜伏先から押収した拳銃を鑑定したところ、発射した際に銃弾につく線条痕が神戸の事件現場の銃弾と一致したという。

余嶋組長は牛テールスープで評判のラーメン店主だったのと同時に「六代目山口組系三代目弘道会傘下『湊興業』組長」でもあった。

元暴力団関係者は「余嶋組長は組員を持たない1人組長で、暴力団をやめてラーメン店に専念したかったそうです。しかし、1人組長がやめた場合、組が1つなくなることになるので、上からはやめさせてもらえないケースが多い。そのため組に籍を残しながら、好きなラーメンで稼いで、上納金をめていたようです」と語る。

なぜその〝ラーメン組長〟が狙われたのか。

そもそも金被告は絆会のナンバー2である若頭。その若頭自ら2020年、長野県宮田村の飲食店駐車場で絆会幹部に発砲し、重傷を負わせたとして殺人未遂容疑で指名手配されていた。長野県警などが今年2月に仙台市内で逮捕。金被告は殺人未遂などの罪で起訴された。

「金被告は自分が組長だった竹内組を子分に跡目を継がせ、自分は絆会若頭となりました。ところが、その竹内組が絆会を脱退し山口組に加わることになったんです。金被告はその子分に絆会への残留を促したが、断られ、銃撃に至ったといわれています。自らの子分だったのでヒットマンを使わずに、けじめとして自ら撃ったということです」(同)

その後、重要指名手配に指定され逃亡。22年1月に茨城県水戸市の水戸市の山口組系事務所で組幹部を射殺した。今年4月に殺人などの容疑で逮捕、5月21日に起訴された。

「長野の銃撃で捕まったら数十年、刑務所に入ることになります。だったら逃亡しながら、組のためにヒットマンになったということかもしれません。第2、第3のターゲットを狙っていたという話です。余嶋組長に関しては、神戸で唯一の山口組系組織でありながら、ガードが手薄で狙いやすいからだとみられています」と同関係者は指摘している。

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