業法・入契法改正案に参考人質疑/建設市場の構造転換期待、賃上げ対応できる環境に

建設業法と公共工事入札契約適正化法(入契法)の一括改正案を審議する21日の衆院国土交通委員会では、建設業関係者や学識者の参考人4氏が法改正への意見を述べた。建設産業専門団体連合会(建専連)会長の岩田正吾氏は、仕事量の繁閑に左右される不安定な請負価格を背景に先を見据えた賃上げができない業界事情を説明。法改正で「標準労務費」が勧告される方向となり「(適正な賃金を)支払わなければ担い手も入ってこない。支払うための制度ができつつある。早期の実現をお願いしたい」と要望した。=1面参照
新たなルールの実効性を持たせる観点で、民間工事でも適正な制度運用が担保されるチェック体制や民間発注者の理解によるサプライチェーン(供給網)全体のマインド転換への働き掛け、優良企業を評価し「質の競争」を促進するような建設Gメンによる現場指導を求めた。
東京大学工学系研究科社会基盤学専攻教授の堀田昌英氏は、法改正を「建設市場のルールに関する大きな構造転換」と評する。特に日本は欧米諸国に比べ「賃金下支えの仕組みが脆弱(ぜいじゃく)だった」と指摘。標準労務費の設定で「下から積み上がっていく」価格決定構造に転換されるとともに、競争上の制約から生産性向上のインセンティブが生まれるとした。
全建総連書記長の勝野圭司氏は、建設業者に労働者の処遇確保の努力義務を課すなど「業法の体系の中で労働政策や社会政策を図り、建設業の健全な発展を目指す具体的施策が盛り込まれた」と期待を示した。「実効性が確保されなければ十分な効果は得られない」とも指摘し、早期に相当程度の職種を対象に標準労務費を設定するよう求めた。
上智大学法学部教授の楠茂樹氏は「建設業法の趣旨に沿った、時宜にかなった改正」と評価。「著しく低い労務費」などによる見積もり・契約の禁止規定が、独禁法の不当廉売規制と異なる点として「労務環境の軽視につながる廉売、共倒れ的な廉売を防ぐことが狙いだ」と解説した。

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