「鶴が恩返しにくるのもわかる」道路を渡るタンチョウ親子、心温まる姿に9万いいね

特別天然記念物のタンチョウの親子。北海道釧路町内の道路をゆったりと渡る姿を捉えた動画が、SNSで大きな反響を呼んでいます。

両親の後ろをついて歩く小さなヒナ。ブロックの段差を乗り越えるのをためらっているのを、親鳥が振り向いて見守っています。ヒナは勇気を出してジャンプ! 無事に追いつきました。

💬「ほのぼのした家族愛がうれしいですね」
💬「鶴が『恩返しにくる』イメージがわくのもすごくわかる」
💬「優しい世界がずっと守られますよう…ヒナちゃんかわいい」

多くのコメントを集め、約9万件の「いいね」が寄せられています。

この貴重な動画を撮影したのは、動物写真家としても知られる北海道釧路北陽高等学校の教諭・柳楽航平(なぎら・こうへい)さん。X(旧Twitter)の公式アカウント (@nagi0467 ) に5月17日、投稿しました。

同日早朝、出勤前の柳楽さんは釧路湿原を見ながらコーヒーを飲んだり野生動物の撮影をしたりしていました。その際、釧路町内でこのタンチョウの親子に出会い、持っていたスマホで撮影したのだそうです。

ブロックを乗り越えようとしているタンチョウのヒナ(柳楽航平さんがXに投稿した動画より) / Via x.com

北海道開発局 鶴居村役場 によると、タンチョウは一夫一婦で暮らす鳥で、一度つがいになると相手が死ぬまで関係が続くことが多いとされています。

また一般的に3月下旬~5月に産卵し、約1カ月後に卵がふ化するとされているため、撮影日を考えると3羽のタンチョウはオスとメスのつがいと、この春につがいの間に生まれたヒナだと考えてよさそうです。

ヒナの様子を気にするタンチョウの親(柳楽航平さんがXに投稿した動画より) / Via x.com

親鳥はブロックを乗り越えようとしているヒナを立ち止まってじっと見守り、無事に超えたことを確認するとゆったりとつがいの方に向かって歩いていきます。

自分の力でブロックを乗り越えたヒナは一生懸命親鳥について歩いていき、合流した3羽は仲良く歩き去っていったのでした。

歩き去っていく3羽のタンチョウ(柳楽航平さんがXに投稿した動画より) / Via x.com

「このような行動を見たのは今回が初めて」タンチョウの親子に驚いた撮影者

BuzzFeedでは、 撮影をした柳楽さんにお話を伺いました。

――ヒナがブロックを乗り越えるのを親鳥が待っている様子に愛情を感じました。普段、野生のタンチョウの親子を観察していて、こうした愛情あふれるシーンを目にすることはよくありますか?

道東に移住して8年目になりましたが、初めて見ました。夫婦で戯れるタンチョウやヒナを見かけることはありますが、このような行動を見たのは今回が初めてです。

――ご出身は島根県で、北海道に移住して教員となったとのことですが、道東のどんなところに魅力を感じていますか?

野生動物と人間生活の距離の近さや境界線の曖昧さ。ダイレクトに自然の恵みを感じられ、人間社会以外にも属しているのだと実感できます。

ものすごいポテンシャルを秘めながらも世間から注目されていないような素晴らしい場所がその辺りに転がっている場所だと思っています。

――動物写真を撮るようになったのはいつからで、何がきっかけでしたか?

北海道に移住してすぐに野付半島に行った時、げっそりとやせながらも必死に生きている エゾシカを見て魅了され、動物写真を撮り始めました。

――動物の撮影をする上で、どんなことに気をつけていますか?

野生動物の生息場所にお邪魔させていただいているという感覚で撮影すること。上から目線ではなく、同じ目線やローアングルから撮影すること。

動物そのものの珍しさではなく、誰でも見られるような動物の見たこともない瞬間を撮ろうと努力しています。

2022年1月2日に北海道鶴居村で撮影された「タンチョウの舞」(柳楽さんのXより) / Via x.com

「地域の方々や生徒に地元を好きになってほしい」という気持ちを原動力に、道東を中心に野生動物や自然の撮影をしている柳楽さん。

想いのこもった作品はX(@nagi0467 )やInstagram( @k_ng46 )に多数投稿されています。

タンチョウのイメージ写真(時事通信)

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