小林製薬「紅麹サプリ」健康被害原因いまだ特定できず…大阪・関西万博への参加はどうなる?

謝罪会見で言葉を述べる小林製薬の小林章浩社長(左から2人目)/(C)共同通信社

【企業深層研究】小林製薬(上)

小林製薬は注目された2024年12月期の第1四半期(1~3月期)決算を今月10日に発表した。

製品回収などの費用として特損38億円を計上したが、売上高は前年同期比9%増の364億円、最終利益も特損が響き72%減となったが9億円の利益を確保した。

「小林製薬強し」の感を同業他社や投資家に与えた。大半の投資家は赤字転落を予想していたからだ。

しかし、「紅麹」を含むサプリメントの健康被害は小林製薬が問題を公表してから5人が死亡し、5月8日時点で入院した人は延べ273人、厚生労働省によると健康被害を相談した人は11万7000人。

健康被害について「原因特定までには相応の時間を要する」とし、健康被害者への支払いは暫定的な対応としている。

健康食品は売り上げの1割弱だが、2倍の販売実績のあるオーラルケア用品にも影響が及び、漢方薬や主力のトイレ用品「ブルーレット」の売り上げが鈍化すれば経営への打撃はさらに大きくなる。

厚労省によると、製品原料から青カビに由来する化合物、プベルル酸が検出されたほか、複数の未想定の物質が見つかっていて、被害原因はいまだ特定できていない。長期化が予想される。

「今後の業績への見極めは困難」とし、24年12月期(通期)の連結業績予想は取り下げた。

当初の24年12月期の決算予想は、売上高1856億円(前期比7.0%増)、営業利益263億円(2.0%増)、経常利益275億円(0.6%増)、当期利益205億円(0.8%増)だったが、この数字が日の目を見ることはあるまい。アナリストは「従来の常識からいって、赤字転落しても誰も驚かない」と言っている。

製薬業界の関係者は「医薬品&日用品でいろいろチャレンジする会社。良い製品もあれば、そうでないものもある」。功罪相半ばする会社と見ているようだ。

■万博イベント参加は辞退したが…

紅麹問題は大阪・関西万博に影響を及ぼしている。

「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げる大阪・関西万博。3月には「健康」をテーマにした大阪府・市のパビリオンの展示概要が公表された。

小林製薬は府・市のパビリオンの大口協賛企業で出展を予定してきた。同社はスーパープレミアムパートナー(10億円以上の協賛金)に次ぐカテゴリーのプレミアムパートナー(協賛金は5億~10億円未満)となっている。3月25日に公表されたパビリオン展示概要を見ると、「ミライのヘルスケア」という展示に他社と参加することになっていた。

4月24日、小林製薬は万博イベントの参加を辞退した。ヘルスケア部門の部長が講演を行う予定だった。外部からは、健康被害を出している会社が参加することについて、「断固、ノー」と指弾されていた。

万博への参加については「社内外で協議されておらず、今後の対応は何も決まっていない」(広報部)としている。言葉はやや厳しくなるがボロボロになるまで万博協会は金づるの小林製薬を離さないということなのか?

それとも小林製薬はどんな批判も屁のかっぱの社風なのだろうか。検証してみることにする。=つづく

(有森隆/経済ジャーナリスト)

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