トップTに並んだ古江彩佳は自滅したが…今季6勝N・コルダは絶対に倒せない「怪物」ではない(羽川豊の視点 Weekly Watch)

古江彩佳(C)共同通信社

【羽川豊の視点 Weekly Watch】

N・コルダ(25)が今季6勝目を挙げた米女子ツアー「みずほアメリカズ・オープン」。大会ホステスプロの古江彩佳(23)は最終日に見せ場をつくりました。最終組のコルダとハナ・グリーンがスコアを伸ばせずにいた前半、6番のバーディーで通算12アンダーとし、トップタイに並んだのです。しかし、14番、15番でスコアを大きく崩し、優勝争いから脱落しました。

古江はシンガポールで行われたHSBC世界選手権でも、2打リードの単独首位からスタートした最終日に75と崩れて8位に終わりました。

国内ツアーで8勝している古江は米女子ツアーのルーキーだった2年前にはスコティッシュ女子オープンも制し、勝ち方は知っています。それでも最終日にトップに立つと普段通りのスイングができなくなる。ドライバーをフェアウエーに置いた12番(376ヤード・パー4)の第2打はピンまで99ヤード。そのショットをグリーン左奥に外してボギーとしましたが、明らかにスイングが硬かった。

ミスを誘ったのは、同ツアーの選手層の厚さを肌で感じ、ライバルたちの強さ、凄さを目の当たりにしてきたからでしょう。国内と同じようなプレーをしていては勝てないことはわかっている。「絶対にピンに寄せなければ……」という思いが、筋肉の動きを妨げる。そうなると、トッププロでも100ヤード以内のショットがピンに絡まない。ゴルフがメンタルのスポーツといわれるゆえんです。

古江の身長は153センチ。コルダは178センチです。コースによってはドライバー飛距離が30ヤード以上も違うことはざらです。今回、予選ラウンドを一緒に回り、コルダとの飛距離差を改めて実感したことでしょう。

しかし、ゴルフはコンタクトスポーツではありません。相手が大きく、いくら遠くへ飛ばしても、グリーンを狙うショットやパットの精度を上げれば勝負になります。ただし、技術レベルを上げても、勝負どころで練習のような正確なボールが打てるかどうかは、メンタルの強さに起因します。

「ハーフ(終了)まではよかったんですけど、最後までがんばり切れなかった」と言った古江は、それを痛感したのではないか。

国内男子ツアーも188センチと大柄の幡地隆寛(30)が関西オープンで初優勝しました。310ヤード以上の飛距離が勝利に結びつかず、伸び悩んでいました。昨年のダンロップフェニックスでB・ケプカと回り、刺激を受けたことで練習量が増え、3月のニュージーランド・オープンに優勝。海外での勝利が大きな自信になったことでしょう。

若い選手が壁に苦しみ、それを越えて大きくなっていく。先輩としてうれしい限りです。

(羽川豊/プロゴルファー)

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