「つばさの党」の異様さの正体は…迷惑系YouTuberとは違う「何か問題でも?」なオラオラ意識か

つばさの党幹事長・根本良輔容疑者(右)と代表・黒川敦彦容疑者(C)日刊ゲンダイ

政治団体「つばさの党」の代表・黒川敦彦容疑者(45)を含む3名が5月17日、警視庁に逮捕された。容疑は4月28日に投開票された衆議院東京15区の補欠選挙の選挙期間中の同月16日に、他陣営の運動を妨害した公職選挙法違反の疑い(選挙の自由妨害)。その様子は3容疑者らがYouTubeやSNSで拡散させていたため、逮捕前から多くの人々の注目を浴びることとなった。

拡散された動画を見ると、同党の幹部が他の陣営の街頭演説を大音量で妨害したり、他の候補が乗る選挙カーに詰め寄るといった、およそ選挙運動とは思えない行動をしていたことが分かる。これらの行為に対しては、《つばさの党の行動は明らかに行きすぎ》といった過激さを指摘するものがSNSに続々と上がったほか、《カルト宗教くさいなぁ》といった得体の知れない「異様さ」を感じたとする声も上がっている。

同党の「異様さ」が生まれた背景には、いったい何があるのか? ITジャーナリストの井上トシユキ氏は、同党の気質を分析しつつ、こう語る。

「つばさの党の何とも言えない怪しさは、他陣営に『凸撃』する様子を自慢げにネットにアップするといった、あたかも善行を実践しているかのようにアピールする『カルト宗教っぽさ』、もしくは『Qアノン的なもの』から来ていると分析します。同党の動画を見てみると、迷惑系YouTuberが漂わせている『気恥ずかしさ』が全く感じられません。迷惑系YouTuberの言動には、どこか『こんなに恥ずかしいことが出来る自分はカッコイイ』という、恥ずかしさを前提とした感情が漂っているものですが、つばさの党の動画にはそれが皆無で、むしろ『何か問題でも?』といった雰囲気が強いのが特徴です。恐らく、本人たちにとっては善行なのでしょう。そして、この意識こそが、同党のカルトっぽさの正体と言ってよいのでは」

■過去のカルト的な選挙運動とは共通性なし

カルト的な選挙運動と言えば、1990年の衆議院選挙に出馬したオウム真理教の候補者が思い出されるが、井上氏はオウム真理教の選挙運動との共通性は見いだせないという。

「オウムの政治団体たる真理党の選挙運動は麻原彰晃や象の被り物といった『内輪ネタ』に終始しており、実に内向きなものでした。一方、つばさの党は選挙妨害という実に攻撃的なものであり、“外弁慶”極まりないものですから、全く違うと言ってよいでしょう」(井上氏)

つばさの党の攻撃性は、他に類を見ないと指摘する井上氏。ただ、奇抜な選挙運動を展開する候補者はこれまでも絶えなかった。その最たる例と言えそうなのが毎回多数の泡沫候補が立候補することで有名な東京都知事選だが、その公示日は6月20日。となると、同党に共鳴した人物の出馬を誘発する可能性はあったりするのだろうか。

「これまでにも選挙妨害の様子がYouTubeなどで拡散されたこともありましたが、それは、つばさの党ほど執拗なものではありませんでした。それでも、ネット世論はそれを許容しませんでした。つばさの党はさらに酷いところからして、同党を支持する動きは今回の騒ぎを最後に消滅するのでは。都知事選の公示まで持たないかもしれません」(同)

つばさの党の収入は、2022年分の政治資金収支報告書によれば、前年からの繰越金を含め3079万円。うち5割以上の1730万円が寄付で、黒川容疑者が幹事長を務めていた旧NHK党からが891万円にのぼる。残りは個人による寄付で、5万円以下が個人寄付の4割を占める。

今回の3人逮捕で、支持者や支援者はどれほど離れていくのだろうか。

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