〈月収24万円〉新卒サラリーマン、〈月4万円〉の天引き額に落胆し、将来の年金額に意気消沈「40年近く働いて、年金はこれだけ?」

サラリーマンであれば、給与明細の天引き額をみてため息をついた経験が一度や二度はあるでしょう。天引き額のなかでも多いのが年金保険料。「そんなに天引きされるのだから……」と、将来もらえる年金額に期待は膨らみますが、実際はどうなのでしょうか。みていきましょう。

社会人1年目の衝撃、社会人2年目のさらなる衝撃

――初めてみた給与明細に衝撃を受けました

そんな新入社員の会話。給与明細を見て、その天引き額にショックを受けるのは、もはやサラリーマンになった際の恒例行事です。

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、大卒新入社員(男性)の平均給与は24万0,300円。手取り額は20万0,012円と20万円を少々上回ります。

【大卒新入社員の額面と手取り】

額面:24万円

手取り:20万0,012円

(内訳)

健康保険料:11,976円

厚生年金保険料:21,960円

雇用保険料:1,442円

所得税:4,910円

――4万円も天引きされている

そんな衝撃から1年ほど経った6月の給料日。再びショックを受けることに。この賃上げの流れのなかで、社会人2年目は1万円ほど給与アップして、月25万円になったとしましょう。手取り額は19万7,376円。

【大卒新入社員の額面と手取り】

額面:25万円

手取り:19万7,376円

(内訳)

健康保険料:13,000円

厚生年金保険料:23,790円

雇用保険料:1,500円

所得税:4,500円

住民税:9,833円

――んっ!? 1年目よりも手取り額が少ない

給与明細をじっくり眺めると、そこで新たなに住民税が天引きされていることに気付きます。住民税は前年の所得を基に税額が決まり翌年に課税。2年目の6月の給与から天引きされるようになります。そのため「社会人1年目よりも手取りがダウン!」ということもしばしば。

「5万円天引きされたくらいでショックを受けていたら、サラリーマン、やっていけないぞ」と先輩サラリーマンのアドバイス。

●20代後半で「額面:月収29万円」になると、「手取り:月22万8,168円」と6万円ほど天引き。

●30代前半で「額面:月収35万円」になると、「手取り:月27万3,593円」と7万~8万円ほど天引き。

●30代後半で「額面:月収41万円」になると、「手取り:月31万8,650円」と9万円ほど天引き。

●40代前半で「額面:月収47万円」になると、「手取り:月35万8,556円」と11万円ほど天引き。

40歳からは介護保険も天引きされるように。ここでは月2,820円ほど引かれるようになります。そして50代後半で、サラリーマンとして給与はピークに。「額面:月収58万円」になると、「手取り:月43万3,082円」と、14万~15万円ほど天引きされます。

給与がアップするごとに天引き額もじわりじわりと増えていき、その分、ため息も増えていく……それがサラリーマンの宿命です。

天引きされる年金保険料「総額2,000万円超え」…もらえる年金額は?

――給与からこんなに引かれて、納得がいきません!

――でも、将来もらう年金のためにも、仕方がないよ

――天引きされた分、きちんともらえるんでしょうか?

そんな新入社員と先輩社員のやりとり。実際、どれくらい年金保険料を払い、どれくらいの年金がもらえるのでしょうか。

大学卒業→就職から60歳定年まで平均給与をもらい続けたとしたら、年金保険料はザっと計算して約2,370万円。まさにチリも積もれば山となる、スゴイ額です。では大卒サラリーマンが60歳で現役引退→65歳から年金生活に入るとしましょう。いったい年金はいくらもらえるのでしょうか。こちらも単純計算、老齢厚生年金は月13.2万円で、併給の老齢基礎年金と合わせると月20万円ほどになります。

――えっ、40年近くも頑張って働いても、たったそれしかもらえないの?

厚生年金受給者の平均受給額は月14万円、65歳の男性に限ると月17万円程度。平均よりも随分と高い予想であるものの、新入社員はすっかり意気消沈。

もし119ヵ月、およそ10年、年金をもらうことができれば、払った年金保険料よりも多くの年金を手にできるということになります。ただこれは額面での話。老齢年金は課税対象で、実際の手取り額は額面の85~90%になります。月20万円であれば17万~18万円ほどになる計算です。仮に月17万円だとしたら、139ヵ月。65歳から年金を受け取り始め12年弱、77歳になったころ「払った年金保険料分、元がとれた!」と歓喜するかも。

あくまでも現在の給与や保険料に基づくシミュレーションではありますが、そもそも日本の年金制度は賦課方式。現役世代の給与から天引きされた年金保険料でいまの高齢者の生活を支え、やがていまの現役世代が高齢者になったときには、そのときの現役世代に支えてもらうという仕組みです。そのため、天引きされる年金保険料と年金受給額を比べて、損得を考えるのは少々ナンセンス。しかし、そう考えないと、給与から色々と天引きされる額にため息しかでないサラリーマン人生、やっていられないのかもしれません。

[参考資料]

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』

日本年金機構『国民年金保険料』

日本年金機構『厚生年金保険料額表』

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