【5月22日付編集日記】防災気象情報

 おしゃべりする木は、まんざら物語の中だけの話ではないようだ。葉などを虫に食べられたときに出る匂いが、言葉の役割を果たす。周囲の樹木は仲間が発した匂いを細胞に取り込み、虫の襲撃に備えるという

 ▼細胞内では数日間、匂いを記憶することができる。事前に備えていた木々は攻撃されると、強い抵抗力を素早く発揮する。少し残念なのは、匂いの伝わる範囲が数十センチほどと狭いこと(有村源一郎・西原昌宏「植物のたくらみ」ベレ出版)

 ▼迫り来る災害を知らせる防災気象情報が来月、見直される。大雨警報には土砂災害と浸水害の2種類があったり、同じ危険度の氾濫警戒と洪水警報の違いが分かりにくかったり。乱立する情報が住民の混乱を招くようでは元も子もない

 ▼専門家らは分かりやすさの中にも、予測精度の向上による有用な情報を盛り込もうと検討を重ねた。新たな情報は、避難の目安となる5段階の警戒レベルと災害の種別、注意報や警報などを併記する形となりそう

 ▼ただ、どんなに情報を練り上げても発信するだけでは、届くのは一部の受け手に限られる。より多くの住民の直感に訴え、備えや避難を促すものとできるかどうか。見直して終わりではない。

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