【西川和久の不定期コラム】Core Ultra 5搭載ミニPCは、Stable Diffusionのお試しにちょうどいい♪「GMKtec NucBox K9」

by 西川 和久

GMKtec NucBox K9

GMKtecはCore Ultra 5 125Hを搭載したミニPC「NucBox K9」を販売開始した。編集部から実機が送られてきたので試用レポートをお届けしたい。本連載でCore Ultraは初ということもあり、楽しみながらの試用記となった。

Core Ultra 5 125H/32GB/1TB搭載のハイパワーミニPC!

前回は、GMKtecの中で最下位モデルとも言えるIntel N97を搭載したミニPCをご紹介したが、今度は逆にCore Ultra搭載のハイエンドなミニPCとなる。

プロセッサはMeteor LakeのCore Ultra 5 125H。4P+8E/14コア18スレッド、最大クロック4.5GHz。キャッシュ18MB、ベースパワー28Wといったスペック。Core Ultraシリーズは本連載初登場だ。

従来のプロセッサと一番の違いは、NPUを搭載し、AIソフトウェア・フレームワークとして、OpenVINO、WindowsML、ONNX RTなどに対応すること。今後AI関連がいろいろなところで使われ出すので、この有無はジワジワと効いてきそうだ。プロセッサ以外の主な仕様は以下の通り。

メモリは16GB DDR5-5600×2(SO-DIMM)の計32GB。最大96GBまで対応する。ストレージはM.2 2280 SSDで1TB。もう1つM.2スロットがあるので増設可能だ。OSはWindows 11 Pro。23H2だったので、この範囲でWindows Updateを適用し評価した。

グラフィックスはプロセッサ内蔵Intel Arc graphics(7コア)。外部出力用として、DisplayPort、HDMI 2.0、Type-Cを備えている。後述するベンチマークテストから分かるように、これまでのiGPU(Intel Iris Xe Graphics)とは一味違った性能だ。

ネットワークは2.5GbE×2、Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2。そのほかのインターフェイスは、Thunderbolt 4×1、USB 3.1×4、3.5mmジャック。2.5GbE×2に加えThunderbolt 4×1はポイントが高い。各実測だが、サイズ約125×125×47mm(幅×奥行き×高さ)、重量529g。

手元に届いたのは32GB/1TB。これで価格は約13万2千円。ベアボーンだと約10万5千円、32GB/2TBだと約14万円。せめてベアボーンは10万円を切ってほしかった。最近ご紹介しているミニPCとしては少し高いものの、Core Ultraは初物ということもあり、仕方ないところか。

前面。電源ボタン、3.5mmジャック、Thunderbolt 4、USB 3.1×2
背面は電源入力、2.5GbE×2、DisplayPort、HDMI 2.0、USB 3.1×2、ロックポート
裏面とiPhone 13 Pro。このクラスのミニPCとしは一般的だろうか
付属品。ACアダプタ(サイズ約145×65×30mm、重量105g、出力19V/6.32A/120.08W)、HDMIケーブル、マウンタ用金具

筐体は実測で約125×125×47mm、529g。このクラスのミニPCとしは一般的で大き過ぎず小さ過ぎず、普通な感じだ。色もシルバーでシンプル。ACアダプタは専用で大きめだが105gなので合わせて持ち運べないこともない。

前面は電源ボタン、3.5mmジャック、Thunderbolt 4、USB 3.1×2。背面に電源入力、2.5GbE×2、DisplayPort、HDMI 2.0、USB 3.1×2、ロックポートを配置。裏は四隅にゴム足と、手前にマウンタ用のネジ穴などがある。

付属品はACアダプタ(サイズ約145×65×30mm、重量105g、出力19V/6.32A/120.08W)、HDMIケーブル、マウンタ用金具。ACアダプタが少し大きいのは仕方ないところか。

Thunderbolt 4があるのでいつものキーボード付きモバイルモニターにはType-Cケーブル1本で接続できる。BIOSは起動時[ESC]キーと少し変わっているので要注意。

BIOS / Main。起動時[ESC]キーで入れる
BIOS / Advanced画面
重量は実測で529g
いつものキーボード付きモバイルモニターへ接続。Thunderbolt 4があるので1本で接続可能

内部へのアクセスは裏のゴム足の下にネジが……と思ったところなく(笑)、単に天板が爪で引っかかっているだけなので、気を付けて外せばOKだった。内部にさらにもう1枚板があるのでネジを外す。同じく爪で引っかかっているため注意深く作業する(ファンがケーブルで本体側と繋がっている)。これでM.2 SSDとSO-DIMMメモリの交換などが可能となる。

天板が爪で止まっているだけなので外す
さらにパネルがあり、四隅のネジと爪をうまく外せばM.2 SSDとSO-DIMMが現れる。ファンが本体側にケーブルで繋がっているため要注意

ノイズや発熱はクラス相当というところ。あるにはあるものの、激熱くなったり、うるかったりすることはない。

ただ筐体に触れると振動がちょっと気になった。内部の写真を見ると、小さいファンと、それを止めているプラスチックのプレートが共振している感じだろうか。ただ触れない限り気が付かないので、気にするほどではないだろう。

iGPUがIntel Arc graphicsとなりパワーアップ!

初期起動直後は、Windows 11 Pro標準のまま。構成が構成なだけにまったくストレスを感じず操作可能だ。やはり前回扱ったN97搭載ミニPCとは格が違うといったところ。

1TB M.2 SSDは「Mason Semi SSD」。メーカー該当サイトがなく、たまたまAmazonで同じらしいものを発見。PCIe Gen4.0×4/NVMe 読取り最大 7,000MB/sとあり、CrystalDiskMarkのスコアと同じだ。C:ドライブのみの1パーティションで約953GBが割り当てられ空き899GB。

2.5GbEはRealtek Gaming 2.5GbEが2つ、Wi-FiはIntel Wi-Fi AX6 A201 160MHz、BluetoothもIntel製だ。デバイスマネージャーには加えてNeural processors / Intel AI Boostの文字が見える。

初期起動時のデスクトップ。Windows 11 Pro標準
デバイスマネージャー/主要なデバイス。1TB M.2 SSDは「Mason Semi SSD」。2.5GbEはRealtek Gaming 2.5GbEが2つ、Wi-FiはIntel Wi-Fi AX6 A201 160MHz、BluetoothもIntel製
ストレージのパーティション。C:ドライブのみの1パーティションで約953GBが割り当てられている

ベンチマークテストは、PCMark 10、PCMark 8、3DMark、Cinebench R23、CrystalDiskMarkを使用した。NPUが効かないベンチマークテストなので、ある意味、プロセッサ性能がすべて分かるわけではないものの、これはこれでと言うところ。

つい最近、Core i9-12900HK搭載のMinisforum「NAB9」をご紹介したが比較して、CPU関連は正直大差ない。ただ弱いとされていたiGPUがIntel Iris Xe GraphicsからIntel Arc graphicsとなり、特にPCMark 10 / Digital Content Creationや3DMarkのスコアがグンと伸びているのが印象的だ。

OpenVINOを使ってのStable Diffusion AUTOMATIC1111ベンチマークしてみた!

以前からCore Ultraシリーズ搭載のPCが手元に届いたら試したかったのが、Stable Diffusionの生成AI画像速度チェック。冒頭に書いたように、OpenVINOに対応しているため、少し前にIntel Arc A770で行なった環境と同じでいけるはずだ。

手順は以下の通り。

Windows版Git
Miniconda (Miniconda3 Windows 64-bit)

これらをインストールした後、

  <code>  (base) C:\&gt; conda create -n a1111 python=3.10.6  <br/>  (base) C:\&gt; conda activate a1111  <br/>  (a1111) C:\&gt;  <br/>  ※環境名はお好みで  <br/>  </code>

適当なフォルダでgit cloneして、そのフォルダに移動。以下を実行すればAUTOMATIC1111 OpenVINO対応版が起動する。

  <code>  git clone https://github.com/openvinotoolkit/stable-diffusion-webui.git  <br/>  webui-user.bat  <br/>  「Script」で「Accelerate with OpenVINO」を選択。「Select a device」で「GPU」を選択  <br/>  </code>

そしていつもの“512×768:神里綾華ベンチマーク”の結果がこの画面キャプチャとなる。

512×768:神里綾華ベンチマークの実行結果。変換後は1枚25秒。タスクマネージャーを見る限り、NPUは動いていない

初めの1回だけ変換する時間がかかり1分27秒だが、2回目は25秒。=10回だと250秒。先のサイトを参照すると、GeForce GTX 1660 SUPER並みの生成速度だ。Arc A770は50秒だったので、5倍時間がかかることになる。ただし、参考までにCPUだと約3分15秒。つまり、NPUが動作せずGPUだけでも十分効果が出ていると言えるだろう。

遅いのは遅いのだが、SD 1.5の画像を25秒/20 Stepsで作れるなら、“お試し”としては十分許容範囲だろう(LCMやTurbo Modelを使うとStepsが10以下になるので約半分の時間で処理できる)。それがdGPUなしのミニPCで動くのだから、これはちょっとした事件と言えるのではないだろうか!? もっと上位のSKUではどうなるかが気になるところではある。

ただOpenVINOで動いているものの、NPUで作動していないのが残念。いろいろ検索してみたが有効な情報は見つからなかった。同社はデモでSD 1.5を見せてることもあり、AUTOMATIC1111のscriptなり、何か情報を出して欲しいところ。


以上のようにGMKtec「NucBox K9」は、Core Ultra 5 125H/32GB/1TBを搭載したミニPCだ。ベンチマークテストの結果からも分かるように、そのパワーはなかなか。2.5GbE×2、Wi-Fi 6、Thunderbolt 4とインターフェイスも十分。加えてSD 1.5の生成AI画像が25秒とお試し程度なら十分使えるレベルだ。

欠点らしい欠点もなく、10万円超えてもいいので、これから末長く使っていきたいミニPCを探しているユーザーにお勧めできる1台と言えよう。

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