漢代貴族の間で人気の布地、中国の研究チームが再現に成功

漢代貴族の間で人気の布地、中国の研究チームが再現に成功

湖南省博物院で完成した印花敷彩紗直裾絲綿袍を引き渡す、南京雲錦研究所文物修復部の楊冀元(よう・きげん)主任(右から2人目)。(資料写真、長沙=新華社配信)

 【新華社長沙5月22日】中国湖南省長沙市の湖南省博物院は18日、長沙市の馬王堆(ばおうたい)漢墓から出土した「印花敷彩紗直裾絲綿袍」(いんかふさいしゃちょくきょしめんほう)のレプリカが完成したと明らかにした。江蘇省南京市の南京雲錦研究所と協同で取り組み、2年余りの時間を費やしたという。

 印花敷彩紗直裾絲綿袍は前漢の長沙国で丞相(じょうしょう)を務めた利蒼(り・そう)の妻、辛追(しん・つい)が生前特に愛した衣服の一つで、現存する中で世界最古の印花(型染め)と彩色が融合した絹織物とされる。

漢代貴族の間で人気の布地、中国の研究チームが再現に成功

レプリカを原品の上に置き大きさを比較する、南京雲錦研究所文物修復部の楊冀元(よう・きげん)主任とそのチーム。(資料写真、長沙=新華社配信)

 馬王堆漢墓・所蔵品研究展示センターの喩燕姣(ゆ・えんこう)主任は、印花敷彩紗が漢代の貴族の間で人気の織物だった可能性を指摘。印花と彩色を組み合わせた技術を用いた絹織物が見つかったのは国内で初めてで、文献に記載されていた「画衣」「画文」を裏付けるとともに、漢代の印花、彩色加工技術の高さを示しており、古代中国の塗料・型染め分野の傑作でもあると説明した。

 レプリカ制作の責任者を務めた南京雲錦研究所文物修復部の楊冀元(よう・きげん)主任は、前漢時代の制作工程が考証できないため顕微鏡による目視と史料に基づいて推測するしかなかったと述べた。楊氏は2019年にチームを指揮して、重さ49グラムの素紗単衣(すしゃたんい)1点のレプリカ作りに成功していた。

漢代貴族の間で人気の布地、中国の研究チームが再現に成功

印花敷彩紗直裾絲綿袍のレプリカ。(資料写真、長沙=新華社配信)

 楊氏はまた「印花敷彩紗絲綿袍の模造は素紗単衣より難しい。素紗上に施す印花の工程で、計7層の色彩図柄を描かなければならない上、各層の模様が極めて細かく、非常に神経を使わなければならないからだ」と説明した。楊氏のチームは、市販されている使用可能な鉱物顔料を全て手に入れ、にかわと鉱物顔料の配合の試行錯誤を繰り返した。ついに適切な濃度の顔料を生み出すと、各色を重ね合わせた状態でも原品と概ね一致させることに成功した。

 レプリカの模様全体をより原品に近づけるために、楊氏とチームは新たに色を調製し特別なぼかしの層を追加した。楊氏によると「ぼかしによってレプリカの見た目が原品の95%まで近づいた」という。

漢代貴族の間で人気の布地、中国の研究チームが再現に成功

湖南省博物院所蔵の印花敷彩紗直裾絲綿袍。(資料写真、長沙=新華社配信)

 楊氏とチームは現在までに直裾素紗単衣や朱紅菱文羅絲錦袍(しゅこうひしもんらしきんほう)、黄褐絹地「長寿繡」(ちょうじゅしゅう、当時の刺繡の模様の一つ)枕、羽毛貼花絹(うもうてんかけん)、曲裾素紗単衣など、馬王堆漢墓から出土した絹織物のレプリカを完成させてきた。現在は「長寿繡」絲綿袍の模造品の制作に取り組んでおり、年末には完成する見込みだという。(記者/張玉潔)

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