返礼品「松阪牛」取りやめ 四日市市、ふるさと納税で

【記者会見する森市長=四日市市役所で】

 【四日市】三重県四日市市の森智広市長は21日の定例記者会見で、ふるさと納税の返礼品である「松阪牛」の提供を取りやめると発表した。「松阪牛」に関する報道後に当該返礼品を提供する事業者から提供を辞退したいとの申し出があり、15日には松阪市の竹上真人市長から森市長に生産区域の声が伝えられたことで、市は「自治体間の対立」と報じられることは生産者や自治体にとって好ましくないと判断し、21日付でポータルサイトへの掲載をやめた。

 市は、ふるさと納税による9億円を超える赤字を解消すべく取り組む中で、市内で黒毛和牛に種付けをし、子牛を生産して、最終的にブランド牛の生産区域に移して肥育し出荷するまで一貫生産している事業者から「妊娠期間も含め全生産期間の2分の1以上を市内で飼養している(同事業者の)松阪牛を市の返礼品として提供できないか」との相談があり、国や県に確認したところ、「ふるさと納税の返礼品の地場産品基準に該当する」との回答を得たため、昨年11月22日にポータルサイトに掲載した。

 市によると、事業者には「ふるさと納税で苦戦する市を応援したいのと、松阪牛などのブランド牛は、子牛の生産地域で子牛を生産している生産者と、それらを導入してブランド牛の区域内で肥育する生産者との協業作業で成り立っているが、スポットライトはブランド牛の肥育地域に当たりがちであり、子牛の生産地域である同市から返礼品として提供することで子牛の生産地にもスポットライトが当たり、松阪牛のPRの一助にもなれば良い」との思いがあったが、報道後に「誤ったことはしていないが、松阪牛の区域内の市町がネガティブな思いを抱かれるのであれば、市町間での対立は本意ではないので、提供を辞退したい」との申し出があったという。

 森市長は「子牛を生産している事業者あっての松阪牛であり、最終品の出荷地だけでなく、一つの重要な工程を担っていると誇りに思っている。市が返礼品として提供してきた松阪牛は松阪牛個体識別システムに登録されている松阪牛であるのは間違いないが、令和5年度の寄附全体、3億1824万円(9353件)のうち、松阪牛の返礼品は60万円(33件)。松阪牛を提供したから寄付額が3.7倍になったわけではなく、やめてもふるさと納税全体が揺らぐわけではない」と強調。

 その上で「四日市は工業都市のイメージが強いが、多種多様な産業があり、畜産業もれっきとした地場産業。今後も地場産業という定義を広く捉えて事業者を応援していきたいし、どんどん返礼品として取り上げていきたい」と語った。

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