中国の研究チーム、視線追跡機能を備えたコンタクトレンズ開発

中国の研究チーム、視線追跡機能を備えたコンタクトレンズ開発

17日、視線追跡機能を備えたコンタクトレンズの実物。(南京=新華社配信/王芸琳)

 【新華社南京5月22日】中国江蘇省の南京大学はこのほど、同大学と南京航空航天大学、江蘇省人民医院の共同チームが視線追跡機能を備えたコンタクトレンズを開発したと発表した。研究成果は国際的な学術誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載され、リハビリや障害者支援、医学診療、心理学研究などの分野での応用が期待されている。

 南京大学現代工学・応用科学学院光電スマートセンシング実験室は17日、開発したレンズを公開。論文の筆頭著者を務めた同大2020級博士コース在籍の朱衡天(しゅ・こうてん)氏は、「開発したレンズは市販のコンタクトレンズと同じ素材を使用している」と説明。レンズに用いられている医療用シリコーンゴムは厚さ約100マイクロメートルで、その上には金色のコイル4個が均等に配置されていると述べた。

中国の研究チーム、視線追跡機能を備えたコンタクトレンズ開発

17日、顕微鏡で高周波機器の微細構造を検査する南京大学2020級博士コース在籍中の朱衡天(しゅ・こうてん)氏。(南京=新華社配信/王芸琳)

 論文の責任著者を務めた南京大学の徐飛(じょ・ひ)教授は、「4個のコイルは高周波機器で、眼球の動きを感知する重要な役割を担っている」とした上で、「高周波機器は日常生活でよく使われており、エントランスカードやバスカードにも搭載されている」と述べた。

 徐氏によると、開発したレンズは無線高周波装置と共に使用し、「バスのカードリーダーと同様、装置がレンズに高周波信号を送信し、眼球が動くと、レンズから反射して戻ってくる信号の周波数と強度に変化が表れる。情報データを分析することで、眼球の動きの軌跡を把握できる」と語った。

中国の研究チーム、視線追跡機能を備えたコンタクトレンズ開発

17日、視線追跡機能を備えたコンタクトレンズの実物。(南京=新華社配信/王芸琳)

 朱氏によると、研究チームは72時間の細胞毒性試験と1週間に及ぶウサギの生体眼試験を実施し、レンズの安全性と生体適合性を検証。現在も継続的に技術改良を行い、ヒューマンコンピューターインタラクション(HCI)のシンクロ率を高めているという。

 徐氏は、視線追跡が「HCI分野における重要技術」であるとした上で、開発したレンズにはリハビリや障害者支援、医学診療、心理学研究などの分野における幅広い応用シーンが期待されると語った。(記者/陳席元)

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